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01.神霊出生の章
No.002「タカミムスヒ」
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古事記で天之御中主神に次いで誕生したのが、高御産巣日神である。
日本書紀では、天御中主尊に次いで誕生したのが、高皇産霊尊とされる。
また、造化三神や別天つ神の一柱とされている。
(No.001「アメノミナカヌシ」を参照)
古事記には「みな独神と成り坐して、身を隠したまふ」と書かれている。
みな、というのは天之御中主神や神産巣日神を含む神々のことを指し、独神というのは男女の区別のない神のことである。
また「身を隠した」というのが、隠遁生活を送ったという意味なのか、それとも、ぼんやりとして実体を持っていないという意味なのか。
しかしアメノミナカヌシと違い、息子や娘が今後の物語に絡んできたり、いろいろな場面で口を挟んできたりしている。
日本書紀の第七段の一書第一では、天岩窟に入ってしまった天照大神を出させるための作戦を神々たちが相談した場面で、名前だけ登場している。
「時に高皇産霊の息思兼神といふ者有り」
知恵の神である思兼神が、高皇産霊尊の息子であるという。
また、同書の第九段本文にも登場する。
「天照大神の子正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊、高皇産霊尊の女栲幡千千姫を娶きたまひて、天津彦彦火瓊瓊杵尊を生れます。故、皇祖高皇産霊尊、特に憐愛を鍾めて、崇て養したまふ」
天照大神の孫である瓊瓊杵尊のことを、母方の祖父として大変可愛がったという。
第二十三代・顕宗天皇三年二月一日の条にも、名前のみ記されている箇所がある。
使いとして任那に向かうよう命を受けた阿閉臣事代が、そこで人に取り憑いていた月の神にこう言われたそうだ。
「わが祖高皇産霊尊は、天地をお造りになった功がある。田地をわが月の神に奉れ。求めのままに献上すれば、慶福が得られるだろう」(『全現代語訳 日本書紀』宇治谷孟)
ここからもわかるように、天地を形づくった創造神的な偉大な神として、古くから皇室の祭祀において重要視された。
名前の「産霊」は生産・生成を意味し、ものを生み出す力を神格化したものとされる。
だが、神としての性格があまりにも抽象的なためか、民間において祀っている神社はそう多くはない。
また、タカミムスヒが単独で祀られることは少なく、カミムスヒが一緒に神社へ祀られていることが多い。
独神と記されてはいるが、男性的と考えられているタカミムスヒとは対照的に、カミムスヒは女性的な性格を持つとされる。
古事記には別名として、突然「高木神」という名前が出てくる。
天若日子という神が、矢を雉めがけて放つと、この矢は雉の胸を貫通して天上まで届いた。
その先にいたのが天照大神と高木神だったという。
わざわざ本文中に「是の高木神は、高御産巣日神の別名ぞ」と話の途中で説明が入っている。
この高木神は、このあと、ニニギの天孫降臨にも大きく関わってくる。
日本書紀での同様の活動は、別名ではなく、高皇産霊尊が担っている。
このほかにもタカミムスヒは、オオクニヌシへ統治権を譲るよう圧力をかけたり、神武東征において霊剣フツミタマを神武天皇に授けたり、道案内役に八咫烏を派遣したりと、要所要所で頻繁に登場する神である。
日本書紀では、天御中主尊に次いで誕生したのが、高皇産霊尊とされる。
また、造化三神や別天つ神の一柱とされている。
(No.001「アメノミナカヌシ」を参照)
古事記には「みな独神と成り坐して、身を隠したまふ」と書かれている。
みな、というのは天之御中主神や神産巣日神を含む神々のことを指し、独神というのは男女の区別のない神のことである。
また「身を隠した」というのが、隠遁生活を送ったという意味なのか、それとも、ぼんやりとして実体を持っていないという意味なのか。
しかしアメノミナカヌシと違い、息子や娘が今後の物語に絡んできたり、いろいろな場面で口を挟んできたりしている。
日本書紀の第七段の一書第一では、天岩窟に入ってしまった天照大神を出させるための作戦を神々たちが相談した場面で、名前だけ登場している。
「時に高皇産霊の息思兼神といふ者有り」
知恵の神である思兼神が、高皇産霊尊の息子であるという。
また、同書の第九段本文にも登場する。
「天照大神の子正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊、高皇産霊尊の女栲幡千千姫を娶きたまひて、天津彦彦火瓊瓊杵尊を生れます。故、皇祖高皇産霊尊、特に憐愛を鍾めて、崇て養したまふ」
天照大神の孫である瓊瓊杵尊のことを、母方の祖父として大変可愛がったという。
第二十三代・顕宗天皇三年二月一日の条にも、名前のみ記されている箇所がある。
使いとして任那に向かうよう命を受けた阿閉臣事代が、そこで人に取り憑いていた月の神にこう言われたそうだ。
「わが祖高皇産霊尊は、天地をお造りになった功がある。田地をわが月の神に奉れ。求めのままに献上すれば、慶福が得られるだろう」(『全現代語訳 日本書紀』宇治谷孟)
ここからもわかるように、天地を形づくった創造神的な偉大な神として、古くから皇室の祭祀において重要視された。
名前の「産霊」は生産・生成を意味し、ものを生み出す力を神格化したものとされる。
だが、神としての性格があまりにも抽象的なためか、民間において祀っている神社はそう多くはない。
また、タカミムスヒが単独で祀られることは少なく、カミムスヒが一緒に神社へ祀られていることが多い。
独神と記されてはいるが、男性的と考えられているタカミムスヒとは対照的に、カミムスヒは女性的な性格を持つとされる。
古事記には別名として、突然「高木神」という名前が出てくる。
天若日子という神が、矢を雉めがけて放つと、この矢は雉の胸を貫通して天上まで届いた。
その先にいたのが天照大神と高木神だったという。
わざわざ本文中に「是の高木神は、高御産巣日神の別名ぞ」と話の途中で説明が入っている。
この高木神は、このあと、ニニギの天孫降臨にも大きく関わってくる。
日本書紀での同様の活動は、別名ではなく、高皇産霊尊が担っている。
このほかにもタカミムスヒは、オオクニヌシへ統治権を譲るよう圧力をかけたり、神武東征において霊剣フツミタマを神武天皇に授けたり、道案内役に八咫烏を派遣したりと、要所要所で頻繁に登場する神である。
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