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不調のきざし。

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秋也side・・・





秋也「・・・そういえば千冬が通ってる病院ってどこ?」

千冬「びょ・・・いんは・・・・・・」





俺の問いにスムーズに答えなくなった千冬。

どうしたのかと思って助手席を見た。





千冬「・・・ZZZ。」

秋也「あー・・・寝ちゃった?」





すぅすぅと規則正しい寝息が耳に入る。





秋也「よっぽど疲れてんだな。真っ直ぐ家に送り届けるのがいいのか、少し遠回りするのがいいのか悩むとこだな。」




車内の時計は22時半。

順調に車を走らせたらあと10分ほどで千冬のマンションに着くだろう。




秋也「・・・23時ならいいか?」




もう少し一緒にいたくて、少し遠回りすることにした俺。

かわいい寝顔を時々見て、幸せな気持ちに浸った。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






秋也「千冬?・・・千冬?」





23時にマンションに車を寄せた俺は千冬を起こした。

肩を揺さぶり、声をかける。





秋也「千冬、着いたよ?」

千冬「んー・・・。」

秋也「ほら起きて。明日も仕事だろ?」

千冬「んー・・・はっ・・・すみませんっ・・・!」





目が覚めた千冬は慌てて自分の荷物を持った。

車のドアを開けて降りる。




がちゃ・・・





千冬「ありがとうございました。すみません、寝てしまって・・・。」

秋也「かわいい寝顔をどうもありがとう。じゃあ・・・おやすみ。」

千冬「おやすみ・・・なさい。」




そう言って車のドアを閉めた千冬。

走らせ始めた車のミラーを使って後方を見ると、いつまでも手を振る姿が見えた。



秋也「律儀に手なんか振って・・・。」




早く家に帰って欲しい反面、見送られて嬉しかった。




秋也「あー・・・めっちゃ好きになってる・・・。」




30歳を回ってこんなに人を好きになるなんて、自分でも驚きだ。

簡単な言葉で言うと『運命の人』ってとこだろうけど、その言葉ほど難しいものはない。




秋也「早くデートしたい・・・。」




そんな願望を胸にしまいながら、俺は帰路についた。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







千冬side・・・






翌日・・・





千冬「あー・・・疲れがたまってきてる・・・。」



目が覚めた瞬間からだるい体。

今までの経験から考えて、そろそろ悲鳴をあげそうだ。





千冬「あとちょっとだから・・・もっと効率よく仕事をしないと・・。」




出社の支度をしながら見た時計の時刻は午前5時。

ため息をつきながら、私は家を出た。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






千冬「おはようございます・・・。」




会社についたのは午前5時45分。

所長がデスクで寝てるのが見えた。




千冬(帰ってないんだー・・・。)




起こすべきが・・・起こさないべきか悩みながら、私は自分の席に座る。

昨日の作業の続きを・・・始めた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






会社で昨夜の仕事の続きをしていると、休んでた人たちが遅刻気味に出社してきた。




「ほんとごめんっ!」

「風邪とはいえ急に休んでごめん・・・!」




二人は私と所長に謝り倒してくれた。




所長「いいのよ、なんとか回ったし。」




私が出社してすぐに目を覚ました所長。

大変だったけど笑顔で二人を出迎えた。





千冬「そうですよー。私も急に休むときありますし。そのときはお願いしますねー。」




数日は覚悟していた早出に残業。

意外と早くに通常運転に戻れて、私はほっとした。




所長「千冬ちゃん、どうする?この何日かの早出と残業の代わりに・・・今日は昼までにして、明日休みにする?」

千冬「え・・・いいんですか?」

所長「疲れがたまると大変でしょ?」





所長を含めて、職場の人は私の病気を知ってる。

知った上で雇ってくれ、体調まで気遣ってくれ・・・感謝しかないのだ。




千冬「じゃあ・・・お言葉に甘えて・・・。」

所長「うん。」

千冬「朝のうちに私の受け持ち回りますね。他は・・・指名じゃないですし。」




手帳を広げながら言った。



所長「昨日と一昨日でだいぶ回ったしね。しぱらくは時間に余裕ができそうよ。」

千冬「ですね。じゃあ・・・ありがとうございます。」





私は午前中に仕事を終わらせれるように調整を始めた。




千冬(・・・助かった。昼から病院に行って、診てもらおう。)




もともと飲んでる薬があるから市販の薬は飲めない。

体調が悪いときは病院に行くしかない。




私は車に荷物を積み込み、仕事に出発した。















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