12 / 16
ナイショ。
しおりを挟む
「あぁ?」
「こっ・・こんな人数が一気に消えたら怪しまれるぞ!?それこそ行方不明届なんか出たらデコ助が動く・・!!」
「・・・。」
俺は明らかに『命乞い』をしてる会長の前へ行き、その胸倉を掴み上げた。
「・・・馬鹿か。どんなに探されようが見つからなければ問題ねぇんだよ。」
「はっ・・・?それってどういう・・・」
「抜いた中身は海外で捌く。残った外身は溶鉱炉で溶かす。骨も残らねーから見つかりやしねぇんだよ。」
「溶かっ・・・!?!?」
「残党どもが徒党を組もうと企もうが・・・その人間がいなけりゃそもそも組めやしねぇよなぁ・・?」
「----っ!!」
「こいつも連れてけ。」
部下に後始末を任せた後、俺の『命令』をきっちり聞いてまっすぐ立ってる彩のもとに向かう。
そしてそっと抱きしめた。
「?・・・もう目を開けていい?」
「あー・・・もうちょっと待て。先に外に出るから。」
俺は彩の両手首を解放し、その体を姫抱きにして抱え上げた。
そのまま外に出て、エレベーターを使って地上に降りる。
「もういいー?」
「あぁ、いいぞ。」
彩は目を擦りながらゆっくり瞼を開けた。
そして辺りを見回したあと、俺をじっと見たのだ。
「ここどこ?」
「んー・・・家から30分くらいのとこだな。」
「買い物行ける?」
「もちろん。どこ行く?」
「手芸やさん!」
聞き耳を立ててるときから聞こえていた単語だ。
「なんで『手芸』?」
「生地見たいの!生地!」
「?・・・お前、縫物なんかできないだろ?」
絵を描くこと以外は超絶不器用だったはずだ。
「ミシンじゃないもん。絵に使うの!」
「絵?」
「お買い物っ!」
「はいはい。」
俺は彩を車に乗せ、とりあえず手芸用品を売ってる店に向かった。
店の駐車場で服を着替え、銃を撃った時に移る独特の匂いを消す。
(とりあえず消臭スプレーで誤魔化すか。)
頭からつま先までスプレーをふりかけ、彩と一緒に店内に入った。
「何の生地買うんだ?」
生地には種類がある。
簡単な分け方なら麻や絹、木綿、デニムや革なんかが俺の知るところだ。
「うーん・・うす絹かなぁ・・・。」
「うす絹?」
「あと染料と・・・とりあえず赤でやってみたい。」
「?・・・よくわかんないけど・・・。」
俺は店員に声をかけ、彩が言ったものをお願いした。
レジで会計をし、それらを車に乗せていく。
「あ!ゆうちゃん、お金あとで返すね?」
金のことをすっかり忘れていたのか、助手席に座りながらそう言った彩。
「あぁ、いらないから気にするな。」
「そうなの?でもお父さんに言ったらきっと返してくれると思うから返すね。」
「・・・。」
おじさんが絡んでくると返金してくるに違いない。
こういうところは奢られてくれないのが彩の難しいところでもあった。
「わかったよ。じゃあいつでもいいから。」
「はーい。」
「ところでこれ、何に使うんだ?絵って言ってたけど・・・これに絵を描くのか?」
「それはナイショ。」
「ナイショ・・・・。」
喋らないってことはきっと彩の中でまだ実験段階のものってことだろう。
想像通りにできたときは嬉しそうに報告しに来てくれるのだから、それを待つことにするしかなかった。
「家まで送ろうか?それともうちに泊まる?」
彩は俺と付き合うことになってからうちで泊まることがある。
それはおじさんももちろん承認済みで、連絡だけは必ず入れることになってるのだ。
そして基本、おじさんが夜勤の日はうちで泊まる。
「帰るっ。」
「オーケー。」
一旦うちに車を止め、荷物を持って彩を家まで送り届けた。
彩はやりたことがあるようで、俺との別れを惜しむことなくスタスタと家に帰って行ってしまった。
「・・・まぁ、いっか。」
甘えるときはとことん甘えてくる彩。
自分のやりたいことに夢中になってる姿も好きだし、俺で蕩けてる姿もいい。
どれも大事にしたい『彩』なのだ。
「しかしあの布と染料は何に使うんだ?」
そう不思議に思いながら、俺も家に帰ったのだった。
ーーーーー
「うーん・・・上手く染めれない。」
ゆうちゃんと別れて家に帰ってきた私、彩は画室で一人作業に励んでいた。
東郷のおじさんに頼まれた絵の材料を作ってるんだけど、なかなか上手くできないのだ。
「確かアートフラワーってうす絹の生地に染料で染めるんだよね?筆で描くようにして染めたら上手くいくかな?」
いろいろ思いながら作ってるのは『桜の花びら』だ。
あの壁に思いついたのは春夏秋冬の景色。
左から、春は桜の木、夏は向日葵、秋は紅葉、冬は雪の枯木を想像した私は、桜の花びらを作ることにしたのだ。
「あの壁はつるつるしてたから絵具は難しい。一枚ずつ作って貼り付けたら立体的にもなる。」
そう思って材料を考えたのだ。
できれば本物がいいけど、それはいつか朽ちるもの。
それだと『絵』として成立しないから、私の手で植物を再現させたらいいと思ったのだ。
「あ・・・いい感じに染まったかも?これを乾かして・・・っと。」
新聞紙を敷いてその上に花びらたちを並べていく。
そしてしばらく乾燥させたあと、私はその生地の表面に薄くレジンを塗っていった。
「もう太陽が出てないから、UVライトで固めたいけど・・・あ、クッキングシートを敷けばくっつかない?」
私はキッチンからクッキングシートを取ってきて適当な大きさに切った。
その上に花びらを並べて、硬化させていく。
「うーん・・・薄いから1分もあればいいかな?」
大体の時間を測り、取り出してみると花びらの表面だけが見事にコーティングされていたのだ。
「やったぁ。あとはバリを削って・・・。」
生地からはみ出ていたレジンをヤスリで削り、形を整えていく。
すると光沢を持ったきれいな桜の花びらが出来上がったのだ。
「これをつるつるな場所に貼るには・・・」
辺りを見回して見つけたのはプラスチックの板。
表面を触るとつるつるしていて、ちょうどよさそうだった。
「ボンドと接着剤、どっちがいいかな?」
両方取り出して貼ってみる。
するとボンドはしばらく押さえてないとずるずる落ちてきてしまうけど、接着剤はすぐにくっついてくれることがわかった。
やり直しがきかないけど、たくさん貼るなら接着剤がよさそうだ。
「あとはたくさんの花びらと、木の部分かな?あ、緑も少し欲しいから葉っぱも作らないと。」
私は私の想像通りの作品に仕上げるため、夜を徹して花びらを作り続けたのだった。
「こっ・・こんな人数が一気に消えたら怪しまれるぞ!?それこそ行方不明届なんか出たらデコ助が動く・・!!」
「・・・。」
俺は明らかに『命乞い』をしてる会長の前へ行き、その胸倉を掴み上げた。
「・・・馬鹿か。どんなに探されようが見つからなければ問題ねぇんだよ。」
「はっ・・・?それってどういう・・・」
「抜いた中身は海外で捌く。残った外身は溶鉱炉で溶かす。骨も残らねーから見つかりやしねぇんだよ。」
「溶かっ・・・!?!?」
「残党どもが徒党を組もうと企もうが・・・その人間がいなけりゃそもそも組めやしねぇよなぁ・・?」
「----っ!!」
「こいつも連れてけ。」
部下に後始末を任せた後、俺の『命令』をきっちり聞いてまっすぐ立ってる彩のもとに向かう。
そしてそっと抱きしめた。
「?・・・もう目を開けていい?」
「あー・・・もうちょっと待て。先に外に出るから。」
俺は彩の両手首を解放し、その体を姫抱きにして抱え上げた。
そのまま外に出て、エレベーターを使って地上に降りる。
「もういいー?」
「あぁ、いいぞ。」
彩は目を擦りながらゆっくり瞼を開けた。
そして辺りを見回したあと、俺をじっと見たのだ。
「ここどこ?」
「んー・・・家から30分くらいのとこだな。」
「買い物行ける?」
「もちろん。どこ行く?」
「手芸やさん!」
聞き耳を立ててるときから聞こえていた単語だ。
「なんで『手芸』?」
「生地見たいの!生地!」
「?・・・お前、縫物なんかできないだろ?」
絵を描くこと以外は超絶不器用だったはずだ。
「ミシンじゃないもん。絵に使うの!」
「絵?」
「お買い物っ!」
「はいはい。」
俺は彩を車に乗せ、とりあえず手芸用品を売ってる店に向かった。
店の駐車場で服を着替え、銃を撃った時に移る独特の匂いを消す。
(とりあえず消臭スプレーで誤魔化すか。)
頭からつま先までスプレーをふりかけ、彩と一緒に店内に入った。
「何の生地買うんだ?」
生地には種類がある。
簡単な分け方なら麻や絹、木綿、デニムや革なんかが俺の知るところだ。
「うーん・・うす絹かなぁ・・・。」
「うす絹?」
「あと染料と・・・とりあえず赤でやってみたい。」
「?・・・よくわかんないけど・・・。」
俺は店員に声をかけ、彩が言ったものをお願いした。
レジで会計をし、それらを車に乗せていく。
「あ!ゆうちゃん、お金あとで返すね?」
金のことをすっかり忘れていたのか、助手席に座りながらそう言った彩。
「あぁ、いらないから気にするな。」
「そうなの?でもお父さんに言ったらきっと返してくれると思うから返すね。」
「・・・。」
おじさんが絡んでくると返金してくるに違いない。
こういうところは奢られてくれないのが彩の難しいところでもあった。
「わかったよ。じゃあいつでもいいから。」
「はーい。」
「ところでこれ、何に使うんだ?絵って言ってたけど・・・これに絵を描くのか?」
「それはナイショ。」
「ナイショ・・・・。」
喋らないってことはきっと彩の中でまだ実験段階のものってことだろう。
想像通りにできたときは嬉しそうに報告しに来てくれるのだから、それを待つことにするしかなかった。
「家まで送ろうか?それともうちに泊まる?」
彩は俺と付き合うことになってからうちで泊まることがある。
それはおじさんももちろん承認済みで、連絡だけは必ず入れることになってるのだ。
そして基本、おじさんが夜勤の日はうちで泊まる。
「帰るっ。」
「オーケー。」
一旦うちに車を止め、荷物を持って彩を家まで送り届けた。
彩はやりたことがあるようで、俺との別れを惜しむことなくスタスタと家に帰って行ってしまった。
「・・・まぁ、いっか。」
甘えるときはとことん甘えてくる彩。
自分のやりたいことに夢中になってる姿も好きだし、俺で蕩けてる姿もいい。
どれも大事にしたい『彩』なのだ。
「しかしあの布と染料は何に使うんだ?」
そう不思議に思いながら、俺も家に帰ったのだった。
ーーーーー
「うーん・・・上手く染めれない。」
ゆうちゃんと別れて家に帰ってきた私、彩は画室で一人作業に励んでいた。
東郷のおじさんに頼まれた絵の材料を作ってるんだけど、なかなか上手くできないのだ。
「確かアートフラワーってうす絹の生地に染料で染めるんだよね?筆で描くようにして染めたら上手くいくかな?」
いろいろ思いながら作ってるのは『桜の花びら』だ。
あの壁に思いついたのは春夏秋冬の景色。
左から、春は桜の木、夏は向日葵、秋は紅葉、冬は雪の枯木を想像した私は、桜の花びらを作ることにしたのだ。
「あの壁はつるつるしてたから絵具は難しい。一枚ずつ作って貼り付けたら立体的にもなる。」
そう思って材料を考えたのだ。
できれば本物がいいけど、それはいつか朽ちるもの。
それだと『絵』として成立しないから、私の手で植物を再現させたらいいと思ったのだ。
「あ・・・いい感じに染まったかも?これを乾かして・・・っと。」
新聞紙を敷いてその上に花びらたちを並べていく。
そしてしばらく乾燥させたあと、私はその生地の表面に薄くレジンを塗っていった。
「もう太陽が出てないから、UVライトで固めたいけど・・・あ、クッキングシートを敷けばくっつかない?」
私はキッチンからクッキングシートを取ってきて適当な大きさに切った。
その上に花びらを並べて、硬化させていく。
「うーん・・・薄いから1分もあればいいかな?」
大体の時間を測り、取り出してみると花びらの表面だけが見事にコーティングされていたのだ。
「やったぁ。あとはバリを削って・・・。」
生地からはみ出ていたレジンをヤスリで削り、形を整えていく。
すると光沢を持ったきれいな桜の花びらが出来上がったのだ。
「これをつるつるな場所に貼るには・・・」
辺りを見回して見つけたのはプラスチックの板。
表面を触るとつるつるしていて、ちょうどよさそうだった。
「ボンドと接着剤、どっちがいいかな?」
両方取り出して貼ってみる。
するとボンドはしばらく押さえてないとずるずる落ちてきてしまうけど、接着剤はすぐにくっついてくれることがわかった。
やり直しがきかないけど、たくさん貼るなら接着剤がよさそうだ。
「あとはたくさんの花びらと、木の部分かな?あ、緑も少し欲しいから葉っぱも作らないと。」
私は私の想像通りの作品に仕上げるため、夜を徹して花びらを作り続けたのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
162
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる