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ーーーーー
(おなか・・おもたい・・・・)
昼過ぎに目を覚ました私、柚香はベッドから起き上がった。
私の真横で寝てる茶々を一撫でし、部屋にあるトイレに向かう。
久々すぎる生理の感覚に、なかなか憂鬱になる。
(茶々がいてくれたからだいぶマシな気もするけど・・・)
まだまだ寝込む予感を感じながらトイレを済ませ、またベッドに戻る。
そしてまた茶々を抱きしめながら、私はぼーっと考え事を始めた。
それは昨日、那智さんのところで聞いた圭一さんの言葉だ。
(親子展開の服・・・早く描きたいな・・・。)
圭一さんに『親子コーデ』の話を聞いてから、私の頭の中にはたくさんのデザインが想像されていた。
ちょっとしたものならバッグチャームなんかもアリだし、髪が長い母子コーデだったらシュシュなんかもいいのだ。
「ダッフルとか絶対かわいい・・・でも重いのは小さい子は大変だよねぇ・・。」
子供用の服を考えるなら、安全面を配慮しなければならない。
重たすぎて転んでしまったり、成長を阻害するようなもの作れないのだ。
「軽い素材なら大丈夫かな?少し雨が降っても大丈夫な生地を選んで・・・・」
茶々の両手を背後から掴み、マッサージしながら考えてると、ガチャっ・・と、扉が開く音が聞こえた。
「お?起きてたのか?調子は?」
「圭一さん・・・大丈夫だよ・・・。」
「うん、大丈夫じゃないな。藤沼が来てスープ作っていったんだけど・・・飲めそう?」
そう言って圭一さんはトレイにスープカップを乗せて、持ってきてくれていた。
体を起こすと私の隣に腰かけ、ベッド横にあるテーブルの上にそのトレイを置いた。
「まだ熱いと思うから少し冷ましてからな?」
「・・・うん。」
用意されていたスープはクリームスープだった。
一口飲めば体が温まるスープの一つだ。
「・・・へへ。」
藤沼さんの優しさに嬉しく思いながら、私はそのスープカップを手に取り、一口、口に運んだ。
ほろっと崩れる野菜たちが、藤沼さんが時間をかけて作ってくれたことを証明してくれている。
「おいしい・・・・」
「よかったな。今日もごろごろしてるだろ?」
「うん・・・まだ無理・・・」
「だろうな。顔色悪いし・・・。でも暇だろ?何かいるものある?」
「・・・。」
圭一さんはいつもこうやっていろいろ聞いてくれる。
前に茉里奈さんに見せてた顔は、私には見せずにいつも優しくしてくれるのだ。
(いつか何かお返ししたいところだけど・・・私に何ができるんだろう・・・。)
そんなことを考えながらスープカップを持ったまま俯いてると、圭一さんが私の顔を覗き込んできた。
「どした?」
「うっ・・ううん・・・?なんでもない・・・。」
「?・・・タワマンの部屋から『らくがき帳』取ってこようか?」
「あ・・・」
私はデザインを『らくがき帳』に描き溜めていってる。
安くていっぱい描けるらくがき帳を重宝してるのだ。
「うん・・・お願いしてもいい・・・?」
「もちろん。いい子で寝てろよ?」
「・・・ふふ、はーい。」
「ちょっと行ってくる。・・・あ、家の奴らもちょっといないから一人になるけど・・・大丈夫か?」
「平気だよ。茶々もいるし・・・。」
夜には誰かが戻ってくるだろうと思い、私は茶々を撫でた。
「まぁ、のこのことこの家に来る奴はいないだろうし。できるだけ早く戻ってくるから。」
圭一さんは私の頭を一撫でし、私のらくがき帳を取りにタワマンに向かって行った。
この家にいるのは私と茶々だけになってしまい、なんだか寂しい気持ちになってきてしまう。
「・・・ずっと一人でいることに慣れてたはずなのに・・・。」
健太と同棲していたときは、一日のほとんどを一人で過ごしていたことを思い出した。
朝早くから出ていく健太を見送り、夜7時くらいに帰ってくる健太を出迎える。
その間の時間はずっと一人で仕事をしたり家事をしたりして過ごしていたのだ。
「家に誰かがいるって・・・すごく安心できることだったんだ・・・。」
賑やかなこのお家に慣れてしまった私は、もう一人で過ごすことなんてできない。
この家に帰ってくる人たちも、きっと同じことを思ってると思い、私はベッドに横になった。
「元気になったら・・・みんなにいっぱいご飯作ろ・・・」
温かいご飯は特別だ。
自分の為に用意してもらえる出来立てのご飯なのだから。
「んー・・・・」
私は茶々を抱きしめ、夢の世界に旅立っていったのだった。
ーーーーー
その数十分後。
物音がしたような気がして目が覚めた私は、ゆっくり体を起こした。
(誰か帰ってきた?でもさっき寝てからまだそんなに時間は経ってないし・・・。)
時計を見ても数十分ほどしか時間は経ってない。
茶々は隣で寝てるし、まだ誰かが戻ってくるとは思えなかったのだ。
(泥棒・・・なわけないよね・・?ここ、ヤクザの家だし・・・)
気のせいかと思いながら隣で寝てる茶々を撫でたとき、また『カタン・・・』と物音が聞こえてきたのだ。
(やっぱり誰かいる・・・?)
気になった私はスマホを取り、圭一さんにメールを打った。
『物音がするんだけど・・・誰か帰ってきてそうな感じってある・・・?』
するとすぐに返事が飛んできたのだ。
『いや、無い。今日は夜まで戻る予定じゃない。・・・茶々丸じゃないか?』
『茶々は私の隣で寝てるのよ・・・。見に行ってみる。』
そう返事を打ち、私はベッドから出た。
『待て!すぐ戻るから部屋から出るな!』という圭一さんからの返事に気が付かないまま・・・。
(もし泥棒だったら茶々を守らないと・・・・)
まだ夢の中にいる茶々は幸せそうに眠ってる。
できれば起こさないように対処したいところだけど、泥棒なんて初体験すぎてどうしたらいいのかわからないのだ。
(も・・もしかしたら家の誰かかもしれないし・・・!?一平さんとか・・藤沼さんとか・・・!)
忘れものがあって取りに帰ってきたかもしれない。
そんな甘い考えを持ちながら、私は音をたてないようにしてドアノブに手をかけた。
ゆっくりゆっくりノブを回し、そーっと・・そーっと・・・・扉を開けてみる。
(!!・・・誰かいる。)
扉の隙間から見えたのは男の人姿だ。
この家で見たことない人で、尚且つ出入りしてる人でもない。
つまり、私の全く知らない人なのだ。
(ほんとに泥棒・・?でも歩く動きに迷いがない気がする・・・)
右左に顔は振るものの、長い廊下を迷うしぐさも見せずにまっすぐ歩いてきていた。
なんだか『知った』感がある気がしながら見てると、その男の人が私の部屋の扉を見たのだ。
「!!・・・そこにいるのは誰だ!?」
(おなか・・おもたい・・・・)
昼過ぎに目を覚ました私、柚香はベッドから起き上がった。
私の真横で寝てる茶々を一撫でし、部屋にあるトイレに向かう。
久々すぎる生理の感覚に、なかなか憂鬱になる。
(茶々がいてくれたからだいぶマシな気もするけど・・・)
まだまだ寝込む予感を感じながらトイレを済ませ、またベッドに戻る。
そしてまた茶々を抱きしめながら、私はぼーっと考え事を始めた。
それは昨日、那智さんのところで聞いた圭一さんの言葉だ。
(親子展開の服・・・早く描きたいな・・・。)
圭一さんに『親子コーデ』の話を聞いてから、私の頭の中にはたくさんのデザインが想像されていた。
ちょっとしたものならバッグチャームなんかもアリだし、髪が長い母子コーデだったらシュシュなんかもいいのだ。
「ダッフルとか絶対かわいい・・・でも重いのは小さい子は大変だよねぇ・・。」
子供用の服を考えるなら、安全面を配慮しなければならない。
重たすぎて転んでしまったり、成長を阻害するようなもの作れないのだ。
「軽い素材なら大丈夫かな?少し雨が降っても大丈夫な生地を選んで・・・・」
茶々の両手を背後から掴み、マッサージしながら考えてると、ガチャっ・・と、扉が開く音が聞こえた。
「お?起きてたのか?調子は?」
「圭一さん・・・大丈夫だよ・・・。」
「うん、大丈夫じゃないな。藤沼が来てスープ作っていったんだけど・・・飲めそう?」
そう言って圭一さんはトレイにスープカップを乗せて、持ってきてくれていた。
体を起こすと私の隣に腰かけ、ベッド横にあるテーブルの上にそのトレイを置いた。
「まだ熱いと思うから少し冷ましてからな?」
「・・・うん。」
用意されていたスープはクリームスープだった。
一口飲めば体が温まるスープの一つだ。
「・・・へへ。」
藤沼さんの優しさに嬉しく思いながら、私はそのスープカップを手に取り、一口、口に運んだ。
ほろっと崩れる野菜たちが、藤沼さんが時間をかけて作ってくれたことを証明してくれている。
「おいしい・・・・」
「よかったな。今日もごろごろしてるだろ?」
「うん・・・まだ無理・・・」
「だろうな。顔色悪いし・・・。でも暇だろ?何かいるものある?」
「・・・。」
圭一さんはいつもこうやっていろいろ聞いてくれる。
前に茉里奈さんに見せてた顔は、私には見せずにいつも優しくしてくれるのだ。
(いつか何かお返ししたいところだけど・・・私に何ができるんだろう・・・。)
そんなことを考えながらスープカップを持ったまま俯いてると、圭一さんが私の顔を覗き込んできた。
「どした?」
「うっ・・ううん・・・?なんでもない・・・。」
「?・・・タワマンの部屋から『らくがき帳』取ってこようか?」
「あ・・・」
私はデザインを『らくがき帳』に描き溜めていってる。
安くていっぱい描けるらくがき帳を重宝してるのだ。
「うん・・・お願いしてもいい・・・?」
「もちろん。いい子で寝てろよ?」
「・・・ふふ、はーい。」
「ちょっと行ってくる。・・・あ、家の奴らもちょっといないから一人になるけど・・・大丈夫か?」
「平気だよ。茶々もいるし・・・。」
夜には誰かが戻ってくるだろうと思い、私は茶々を撫でた。
「まぁ、のこのことこの家に来る奴はいないだろうし。できるだけ早く戻ってくるから。」
圭一さんは私の頭を一撫でし、私のらくがき帳を取りにタワマンに向かって行った。
この家にいるのは私と茶々だけになってしまい、なんだか寂しい気持ちになってきてしまう。
「・・・ずっと一人でいることに慣れてたはずなのに・・・。」
健太と同棲していたときは、一日のほとんどを一人で過ごしていたことを思い出した。
朝早くから出ていく健太を見送り、夜7時くらいに帰ってくる健太を出迎える。
その間の時間はずっと一人で仕事をしたり家事をしたりして過ごしていたのだ。
「家に誰かがいるって・・・すごく安心できることだったんだ・・・。」
賑やかなこのお家に慣れてしまった私は、もう一人で過ごすことなんてできない。
この家に帰ってくる人たちも、きっと同じことを思ってると思い、私はベッドに横になった。
「元気になったら・・・みんなにいっぱいご飯作ろ・・・」
温かいご飯は特別だ。
自分の為に用意してもらえる出来立てのご飯なのだから。
「んー・・・・」
私は茶々を抱きしめ、夢の世界に旅立っていったのだった。
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その数十分後。
物音がしたような気がして目が覚めた私は、ゆっくり体を起こした。
(誰か帰ってきた?でもさっき寝てからまだそんなに時間は経ってないし・・・。)
時計を見ても数十分ほどしか時間は経ってない。
茶々は隣で寝てるし、まだ誰かが戻ってくるとは思えなかったのだ。
(泥棒・・・なわけないよね・・?ここ、ヤクザの家だし・・・)
気のせいかと思いながら隣で寝てる茶々を撫でたとき、また『カタン・・・』と物音が聞こえてきたのだ。
(やっぱり誰かいる・・・?)
気になった私はスマホを取り、圭一さんにメールを打った。
『物音がするんだけど・・・誰か帰ってきてそうな感じってある・・・?』
するとすぐに返事が飛んできたのだ。
『いや、無い。今日は夜まで戻る予定じゃない。・・・茶々丸じゃないか?』
『茶々は私の隣で寝てるのよ・・・。見に行ってみる。』
そう返事を打ち、私はベッドから出た。
『待て!すぐ戻るから部屋から出るな!』という圭一さんからの返事に気が付かないまま・・・。
(もし泥棒だったら茶々を守らないと・・・・)
まだ夢の中にいる茶々は幸せそうに眠ってる。
できれば起こさないように対処したいところだけど、泥棒なんて初体験すぎてどうしたらいいのかわからないのだ。
(も・・もしかしたら家の誰かかもしれないし・・・!?一平さんとか・・藤沼さんとか・・・!)
忘れものがあって取りに帰ってきたかもしれない。
そんな甘い考えを持ちながら、私は音をたてないようにしてドアノブに手をかけた。
ゆっくりゆっくりノブを回し、そーっと・・そーっと・・・・扉を開けてみる。
(!!・・・誰かいる。)
扉の隙間から見えたのは男の人姿だ。
この家で見たことない人で、尚且つ出入りしてる人でもない。
つまり、私の全く知らない人なのだ。
(ほんとに泥棒・・?でも歩く動きに迷いがない気がする・・・)
右左に顔は振るものの、長い廊下を迷うしぐさも見せずにまっすぐ歩いてきていた。
なんだか『知った』感がある気がしながら見てると、その男の人が私の部屋の扉を見たのだ。
「!!・・・そこにいるのは誰だ!?」
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