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すれ違う日々。
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ーーーーー
「んー・・・・。」
布団の中でもそもそ動き始めたちとせ。
頭を撫でると目を開けて、朧げに俺を見てる。
「よ・・うへい・・さん?」
「そうだよ?寝ぼけてるちとせもかわいい・・。」
俺の腕の中で目を擦りながら、ちとせは俺の肩に自分の顔を摺り寄せてきた。
まるで猫みたいなしぐさに、その小さな体をぎゅっと抱きしめる。
「・・・えへ、陽平さんにぎゅってしてもらうと・・安心する。」
寝ぼけたまま、ふにゃっと笑ったちとせ。
そんな笑顔を初めて見た俺は、この笑顔を守りたいと思った。
いつまでも俺の隣でこうやって笑っててほしいと、自然に思ったのだ。
(なんか・・・ちとせが俺の隣でずっと笑ってる未来が見えた・・気がする・・。)
そんな白昼夢を一瞬見たあと、ちとせの体を抱きしめなおした。
今の未来図を・・・消さないと決めながら。
「?・・・陽平さん?」
「なんでもない。もうじき夜になるけどどうする?晩御飯、どっかに食べにいってから送ろうか?」
「え・・私、どれくらい寝てた・・?」
「ん?1時間くらい寝てたから・・・今は夕方6時だよ?」
そんなに長い時間眠らなかったちとせ。
部屋の時計は夕方の6時を少し回っていたのだ。
「もう6時!?」
「え?うん。」
「『1時間しか寝てない』って・・・え、もっと寝てたんじゃないの?私・・。」
「え?3時過ぎくらいに家に帰ってきたでしょ?4時過ぎくらいまでリビングでずっとキスしてて・・・」
俺は時間の流れをざっと説明した。
早くちとせを食べたくて、あまり甘やかせられなかったことを後悔してることも交えながら・・・。
「ごめんな?ちとせの経験を聞いてから、あんまり無理もさせたくなかったし・・・。慣れてきたらもっと甘やかすから・・・。」
そう言ってちとせの頭に口づけを落としていくと、ちとせは赤い顔をして両手で隠していた。
「これ以上・・・っ!?」
「うん。全然足りない。」
「!?!?」
「ちゃんと気持ちよくするから・・・また俺を受け入れて・・?」
真っ赤な顔をしてるちとせに、俺が脱がせた服を渡す。
ちとせは俺に背中を向けてその服を着始めたけど。細くくびれた腰が視界に入り、その腰を手で掴んでみた。
「ひぁっ!?」
「ほっそ・・・ちゃんと食べてる?」
前にバーベキューしたとき、ちとせは『お金を貯めてる』と言っていた。
自分のお店を持つために貯めてるらしいけど・・・あまりの細さに節約の仕方を間違ってるんじゃないかと心配になる。
「食べてる食べてるっ・・!」
「ほんと?」
「ほんとほんとっ・・!」
「ならいいけど・・・。」
ちとせが着替え終わるくらいのタイミングを見計らって俺も服を着た。
リビングに降りて少しゆっくりしてから、俺とちとせは家を出ることにした。
「ちとせ、食べたいものある?」
車に乗った後、エンジンをかけて聞いた。
「うーん・・・。」
「ないなら俺がいつも行くとこでもいい?煮魚が美味いとこなんだけど・・。」
老夫婦二人で経営してる和食の店が近くにある。
量が多くて安いのも魅力なんだけど、煮魚がめちゃくちゃ美味いのだ。
「おいしい煮魚!食べてみたい!」
「おっけ、カレイが美味いんだけどキンメダイも美味いし、銀鱈も美味いしー・・・」
俺はいつも行く定食屋に向かって車を走らせた。
数分で着いた定食屋で俺はキンメダイの煮つけを、ちとせはカレイの煮つけを食べ、そのあとちとせを送っていった。
「今日はいろいろ・・・ありがとう。あと、ごめんね?迷惑かけちゃって・・・。」
ちとせのアパートの前で車を止めると、ちとせは車から降りながらそう言った。
「迷惑なわけないだろ?ちとせの不安なとこ知れてよかったし、ちとせのかわいい姿もいっぱいみれたし?」
俺の言葉にちとせの顔が赤く染まっていった。
「~~~っ!?恥ずかしぃ・・・。」
「またデートしような。寒暖差激しいし、風邪ひかないようにな?」
「ありがと。陽平さんも風邪引かないようにね?」
「俺は風邪ひかないから大丈夫。じゃあ・・・またな。」
「また・・ね。」
車から降りたちとせはドアを閉めた。
窓を開けて手を振ると、嬉しそうに笑いながらちとせも手を振ってくれてる。
「ルルーシュに遊びに行くから。」
「ふふ、待ってる。」
そう言った後、俺は車のアクセルを踏んだ。
ルームミラーで遠くなっていくちとせは、いつまでも手を振ってる。
「早く部屋に入らないと、ほんとに風邪ひくぞ・・・。」
次からちとせの部屋の中まで送り届けようと思いながら、次のデートを楽しみに俺は角を曲がっていった。
でも翌日から俺の仕事が忙しくなり、ろくに会えない日々が過ぎていった。
ちとせもカフェ開業に向けて勉強が忙しいらしく、お互い時間がなかなか合わない中でほんの少しの時間だけ会う日々が過ぎていったのだ。
1か月、2か月と時間は過ぎて行ってしまい、11月に入ったある日、ちとせがうちの消防署に足を運んできた。
今日はちとせ待望の・・・『防火管理者』の資格講習の日なのだ。
「陽平さん、教えてくれてありがとう。あと申し込みも・・。」
受付で受講料を支払いながら言った。
ちとせが来ることを知っていた俺は、受付でちとせを待っていたのだ。
「ううん?ちとせは忙しかったし。どうせうちで申し込みの受付するから。」
会える時間が少ない中で伝えた『防火管理者』の資格講習の日程。
ちとせが希望する『乙種』は一日で取得できる比較的安易なもので、うちの消防署では今日と明日の二日間開催される予定だ。
ちとせは今日の日程を希望していて、俺が申し込みを済ませておいた。
「あ、陽平さん、講習終わったあとってまだ仕事?」
「うん。出動がなければいるよ?」
「じゃあ終わったらちょっと寄らせてもらうね?話したいことあるから・・。」
「え?なんの話?」
そう聞いたとき、ちとせがスマホの画面を見た。
「あ・・!もう行かないと・・!じゃああとで!いなかったら夜に電話するから!」
そう言ってちとせは受講会場のある2階に駆け上がっていってしまった。
(話って・・・なんだ?)
「んー・・・・。」
布団の中でもそもそ動き始めたちとせ。
頭を撫でると目を開けて、朧げに俺を見てる。
「よ・・うへい・・さん?」
「そうだよ?寝ぼけてるちとせもかわいい・・。」
俺の腕の中で目を擦りながら、ちとせは俺の肩に自分の顔を摺り寄せてきた。
まるで猫みたいなしぐさに、その小さな体をぎゅっと抱きしめる。
「・・・えへ、陽平さんにぎゅってしてもらうと・・安心する。」
寝ぼけたまま、ふにゃっと笑ったちとせ。
そんな笑顔を初めて見た俺は、この笑顔を守りたいと思った。
いつまでも俺の隣でこうやって笑っててほしいと、自然に思ったのだ。
(なんか・・・ちとせが俺の隣でずっと笑ってる未来が見えた・・気がする・・。)
そんな白昼夢を一瞬見たあと、ちとせの体を抱きしめなおした。
今の未来図を・・・消さないと決めながら。
「?・・・陽平さん?」
「なんでもない。もうじき夜になるけどどうする?晩御飯、どっかに食べにいってから送ろうか?」
「え・・私、どれくらい寝てた・・?」
「ん?1時間くらい寝てたから・・・今は夕方6時だよ?」
そんなに長い時間眠らなかったちとせ。
部屋の時計は夕方の6時を少し回っていたのだ。
「もう6時!?」
「え?うん。」
「『1時間しか寝てない』って・・・え、もっと寝てたんじゃないの?私・・。」
「え?3時過ぎくらいに家に帰ってきたでしょ?4時過ぎくらいまでリビングでずっとキスしてて・・・」
俺は時間の流れをざっと説明した。
早くちとせを食べたくて、あまり甘やかせられなかったことを後悔してることも交えながら・・・。
「ごめんな?ちとせの経験を聞いてから、あんまり無理もさせたくなかったし・・・。慣れてきたらもっと甘やかすから・・・。」
そう言ってちとせの頭に口づけを落としていくと、ちとせは赤い顔をして両手で隠していた。
「これ以上・・・っ!?」
「うん。全然足りない。」
「!?!?」
「ちゃんと気持ちよくするから・・・また俺を受け入れて・・?」
真っ赤な顔をしてるちとせに、俺が脱がせた服を渡す。
ちとせは俺に背中を向けてその服を着始めたけど。細くくびれた腰が視界に入り、その腰を手で掴んでみた。
「ひぁっ!?」
「ほっそ・・・ちゃんと食べてる?」
前にバーベキューしたとき、ちとせは『お金を貯めてる』と言っていた。
自分のお店を持つために貯めてるらしいけど・・・あまりの細さに節約の仕方を間違ってるんじゃないかと心配になる。
「食べてる食べてるっ・・!」
「ほんと?」
「ほんとほんとっ・・!」
「ならいいけど・・・。」
ちとせが着替え終わるくらいのタイミングを見計らって俺も服を着た。
リビングに降りて少しゆっくりしてから、俺とちとせは家を出ることにした。
「ちとせ、食べたいものある?」
車に乗った後、エンジンをかけて聞いた。
「うーん・・・。」
「ないなら俺がいつも行くとこでもいい?煮魚が美味いとこなんだけど・・。」
老夫婦二人で経営してる和食の店が近くにある。
量が多くて安いのも魅力なんだけど、煮魚がめちゃくちゃ美味いのだ。
「おいしい煮魚!食べてみたい!」
「おっけ、カレイが美味いんだけどキンメダイも美味いし、銀鱈も美味いしー・・・」
俺はいつも行く定食屋に向かって車を走らせた。
数分で着いた定食屋で俺はキンメダイの煮つけを、ちとせはカレイの煮つけを食べ、そのあとちとせを送っていった。
「今日はいろいろ・・・ありがとう。あと、ごめんね?迷惑かけちゃって・・・。」
ちとせのアパートの前で車を止めると、ちとせは車から降りながらそう言った。
「迷惑なわけないだろ?ちとせの不安なとこ知れてよかったし、ちとせのかわいい姿もいっぱいみれたし?」
俺の言葉にちとせの顔が赤く染まっていった。
「~~~っ!?恥ずかしぃ・・・。」
「またデートしような。寒暖差激しいし、風邪ひかないようにな?」
「ありがと。陽平さんも風邪引かないようにね?」
「俺は風邪ひかないから大丈夫。じゃあ・・・またな。」
「また・・ね。」
車から降りたちとせはドアを閉めた。
窓を開けて手を振ると、嬉しそうに笑いながらちとせも手を振ってくれてる。
「ルルーシュに遊びに行くから。」
「ふふ、待ってる。」
そう言った後、俺は車のアクセルを踏んだ。
ルームミラーで遠くなっていくちとせは、いつまでも手を振ってる。
「早く部屋に入らないと、ほんとに風邪ひくぞ・・・。」
次からちとせの部屋の中まで送り届けようと思いながら、次のデートを楽しみに俺は角を曲がっていった。
でも翌日から俺の仕事が忙しくなり、ろくに会えない日々が過ぎていった。
ちとせもカフェ開業に向けて勉強が忙しいらしく、お互い時間がなかなか合わない中でほんの少しの時間だけ会う日々が過ぎていったのだ。
1か月、2か月と時間は過ぎて行ってしまい、11月に入ったある日、ちとせがうちの消防署に足を運んできた。
今日はちとせ待望の・・・『防火管理者』の資格講習の日なのだ。
「陽平さん、教えてくれてありがとう。あと申し込みも・・。」
受付で受講料を支払いながら言った。
ちとせが来ることを知っていた俺は、受付でちとせを待っていたのだ。
「ううん?ちとせは忙しかったし。どうせうちで申し込みの受付するから。」
会える時間が少ない中で伝えた『防火管理者』の資格講習の日程。
ちとせが希望する『乙種』は一日で取得できる比較的安易なもので、うちの消防署では今日と明日の二日間開催される予定だ。
ちとせは今日の日程を希望していて、俺が申し込みを済ませておいた。
「あ、陽平さん、講習終わったあとってまだ仕事?」
「うん。出動がなければいるよ?」
「じゃあ終わったらちょっと寄らせてもらうね?話したいことあるから・・。」
「え?なんの話?」
そう聞いたとき、ちとせがスマホの画面を見た。
「あ・・!もう行かないと・・!じゃああとで!いなかったら夜に電話するから!」
そう言ってちとせは受講会場のある2階に駆け上がっていってしまった。
(話って・・・なんだ?)
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