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大事な妹。

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家に帰ってきた俺たちはリビングに布団を敷いた。


鈴を寝かせて、挟み込むように俺と恭吾が横になる。




翔平「温かくなって目が覚めるといいんだけど。」

恭吾「湯たんぽ出す?」



恭吾が言った時、父さんが湯たんぽを鈴の足元に入れた。



お父さん「これでよし。熱に気を付けるんだよ?たぶん上がるから。」

翔平「うん、わかってる。」




人肌で布団を温め、足元には湯たんぽ。

鈴の体温が上がるのに、そう時間はかからなかった。




翔平「だいぶ温まってきたけど・・・。」

恭吾「これはヤバイな。」




鈴の体が小刻みに震えだした。




鈴「・・・寒い。」

翔平「寒い?」

恭吾「熱が出るな。」




身を縮める鈴。

背中を擦りながら温めるけど、カタカタと震えは治まらない。



翔平「上がってきた。恭吾、体温計取れる?」



鈴のおでこに手をあてると熱いことがわかった。



恭吾「はいよ。」



恭吾は手を伸ばして体温計を取った。

その体温計を鈴の服の下から滑り込ませる。



翔平「鈴?ちょっと冷たいからな?」

鈴「んんっ・・・!」



冷たさに驚いたのか、体がびくっと跳ねた。

脇に挟んだ体温計の表示窓の数字がぐんぐん増えていく。




ピピッ・・・



翔平「・・・39度。」

恭吾「これ以上は上がってほしくないな。」




俺と恭吾は交代で鈴の様子を見た。

一晩中・・・。






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翌日・・・。





鈴「うぁ・・・。」




目が覚めた私、鈴は頭痛に襲われていた。

頭を動かすと痛む。

体も重い。




鈴「・・・痛い。」

翔平「頭痛か?」




真横でした声に驚き、私は顔をぶんっと振って声がしたほうを見た。




鈴「痛っ・・・!」

翔平「頭いたいのにそんな勢いで動かすからじゃん。熱、計るからな。」



翔平お兄ちゃんは体温計を私の服の下から滑り込ませてきた。

重すぎて動かない体。

されるがままだ。



鈴「うー・・・。」

恭吾「気持ち悪いか?」



真後ろで聞こえた声。

二度目だからもう驚かない。



鈴「恭吾・・お兄ちゃん・・・。」

恭吾「吐きそう?」

鈴「ごめ・・んなさ・・い。帰る・・・。」




重たい体をなんとか起こそうと身をよじる。




翔平「鈴の家はここだろ?」

恭吾「俺らのこと、嫌い?」

鈴「そんなことっ・・・」


翔平「突然の生活環境の変化なんだからついていけないよな?」

恭吾「ゆっくりでいいんだよ。俺たちは鈴を全力で守るから。」

翔平「だから頼ってくれ。鈴を突き放すようなことは絶対にない。」

恭吾「会えなかった15年、たっぷり可愛がってやるから。」






二人が私をそっと抱き締めてくれた。

その手は温かく、私を心から安心させてくれる。





鈴「ふぇ・・・うー・・・」




溢れてくる涙が止まらない。



翔平「よしよし。辛かったな。寂しかったな。」

鈴「お母さんに・・・っ・・会いたかった・・・うー・・。」

恭吾「うん。俺らが母さんの代わりをするから。な?」

鈴「お母さんー・・・おかあさんー・・・。」



私はそのまま眠ってしまい、次に目が覚めたのは夕方だった。








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夕方・・・




恭吾「鈴?起きて?」

鈴「ぅあ?」




肩を叩かれ、目が覚めた。

家の中が薄暗く、夕方なことがわかった。



鈴「あれ、私・・・寝ちゃって?」

恭吾「うん。どう?頭痛は。」



私のおでこにそっと手をあてた恭吾お兄ちゃん。



恭吾「んー・・・まだ熱はあるな。」

鈴「ごめんなさい・・・。」

恭吾「?・・・謝んなくていい。昨日はごめんな?・・元気になるまで側にいたいんだけど仕事なんだよ。1時間くらい1人でいることになるんだけど・・・。」

鈴「・・・お留守番?」




恭吾お兄ちゃんは私の頭を撫でながら言う。



恭吾「1時間したら翔平が帰ってくるから、寝ときな?」

鈴「はい・・・。」




そのまま恭吾お兄ちゃんは家を出ていき、私はリビングに取り残された。

体を起こして、キッチンに向かう。



鈴「喉が渇いたけど・・・勝手に飲んでいいのかな・・・。」



冷蔵庫を開けると、いろんな種類の飲み物が入ってる。




鈴「・・・やめとこ。」




ふらふらしながらも布団戻った。



鈴「・・・リビングで寝てるって変だよね。」



布団を畳んで隅っこに置き、私は2階の部屋に入った。

冷たい布団に潜り込んで、自分の体温を使って温める。



鈴「寒い・・・。でも・・・眠い・・・。」



少し温かくなったところで私はうとうとしだす。


浅い眠りを繰り返してると、玄関の開く音が聞こえた。


ガチャ・・・



翔平「ただいまー。鈴ー?」

鈴(翔平お兄ちゃん・・・。)



翔平お兄ちゃんが帰ってきたことは分かったけど、眠たさで上手く頭が働かなかった。

うとうとしてる間に翔平お兄ちゃんの声が1階で響く。



翔平「鈴!?どこだ!?」










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