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高校入学。

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それから一カ月か経って、鈴は高校に入学した。

入学式は自宅で。

パソコン上で行われた。




恭吾「・・・出席ってクリックするだけ?」

鈴「うん。この時間にクリックするんだってー。」


だいぶ砕けた話し方になった鈴。

ときどきよそよそしくもなるけど、笑顔を振りまいてくれる妹がかわいくて仕方なかった。




翔平「教科書ってこれ?」



鈴の机の横に置いてあった本を翔平が手に取った。



鈴「うん。結構簡単だったんだけど・・・1年生だからかな?」

翔平「ふーん?」



翔平はぱらぱらと教科書をめくった。




翔平「・・・は!?なんだよこの問題・・・。」




鈴の入学式の手順を側で見ていたかったのに、翔平があまりにもうるさかった。



恭吾「うっさいな、翔平。」

翔平「いや、だってこの問題おかしくない?」



そう言って見せてきた問題。



『宇宙の年齢はいくつでしょう。』




恭吾「・・・・は!?」



翔平がうるさい理由がわかった。




翔平「な・・なぁ、鈴?」

鈴「なぁに?」

翔平「う・・宇宙の年齢って・・・?」




翔平が恐る恐る質問をすると、鈴はパソコンの画面を見たまま答えだした。



鈴「んー・・今のとこ138億年前って言われてるけど実は年齢不詳。宇宙は膨張し続けてるから逆算って方法もあるんだけど・・・不確かなことも多くて・・・。だからーーーーーで、----でーーーーーかな?」

翔平「この問題、答えってあるのかよ・・・。」

恭吾「俺が知るかよ・・・。」




父さんの『教科書を見せてもらえばいい』って言ってた意味がよく分かった。

俺らは医療系に強いけど、鈴は別の分野に強いんだ。





呆然と鈴を見ていると、鈴のケータイが鳴った。



♪~・・・



鈴「あ・・・できた。」

翔平「そんな着メロあったか?」

鈴「曲の一部を切り取って繋げたんだよ?」

恭吾「そんなことできたのか・・・。え、『できた』っていうのは?」



鈴はケータイを俺たちに見せてくれた。



恭吾「・・・アプリ?」

鈴「うん。パソコンからアプリを作ってケータイに飛ばしたの。ちゃんとできてたらいいんだけど・・・。」

そう言ってアプリを立ち上げる。



翔平「これは・・・。」

恭吾「かあさんの情報開示システム?」

鈴「うん。ちゃんと指定された日付と時間に開けれるように作ってみた。」


そう言って鈴は『明日の10時』に指定してあるメールをタップした。



鈴「あー・・・開いちゃった。なにがダメなんだろう。」




ぶつぶつ言いながらノートに何か書きだした鈴。



翔平「これは・・・かあさん以上かもな。」

恭吾「だな・・・。」



鈴の将来を恐ろしく思いながら俺たちはそっと部屋を出た。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーー







また何日か経ち、私、鈴は朝から家の掃除をしていた。

今日は受ける授業がなく、掃除や洗濯をしたけど・・・

すぐに終わってしまった。



鈴「なにしよう・・・。」



特にしたいこともなく、私はリビングのソファーに座っていた。




鈴「あっ、前に見たタイピンの値段を調べに行こうっ。」



そう思い付き、私は鞄を手に取って家をでた。







ーーーーーーーーーーーーーーーーー









鈴「えーと・・お兄ちゃんたちの病院を出て・・・歩いて・・・あっ、ここだ。」




前に見つけた雑貨屋さん。

私はお店のドアを開けて入った。



カランカラン・・・



店主「いらっしゃい。・・・あぁ、キミは・・・。」

鈴「?」

店主「倒れたあと、元気になったんだね。よかった。」



『倒れたあと』・・・って、私がここで倒れたことを知ってる?

もしかして・・・



鈴「あの・・私を・・助けてくれました・・?」

店主「救急車が来るまで一緒にいたのは私だよ。」



お髭を蓄えたおじいさんがカウンターから出てきてくれた。




鈴「!!・・・お礼が遅くなってすみませんっ。」




深々と頭を下げると、おじいさんは笑いながら私の肩を叩いた。




店主「いいんじゃよ。無事ならそれで。・・・今日は?お店を見にきてくれたのかな?」

鈴「あの・・マネキンさんがつけてるネクタイのタイピンが気になって・・・。」

店主「あぁ、あれか。あれは売り物じゃないよ?」

鈴「えぇ!?そんな・・・。」



ガックリと肩を落とす私に、おじいさんは続けて言う。




店主「あれは手作りだから値段はつけてないんじゃよ。」

鈴「手作り・・?」

店主「まぁ、土台は買ってきたものじゃが、装飾を私がやったんじゃよ。売れるようなものじゃない。」

鈴「・・・作ることができる?」




私はマネキンさんのつけてるタイピンを見つめた。




店主「・・・なぜあのタイピンを?」







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