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タイピン。
しおりを挟む翌日・・・
朝、目が覚めた私は、布団をかぶって寝るのを忘れたらしく、体が重たかった。
どう考えても風邪をひいたようだ。
鈴「しまった・・・。なんで布団かぶらなかったんだろう・・・。」
やってしまったことを後悔しながらリビングに向かう。
廊下とリビングのドアをガチャ・・と開けると、誰の姿もなかった。
鈴「あれ?今日はみんな朝からいるんじゃなかったの?」
そう思ってると、ダイニングテーブルにメモが置いてあるのが見えた。
鈴「メモ・・?」
手に取って見ると、お兄ちゃんたちからだった。
『夜中に急患。夕方に帰る。翔平・恭吾。』
『明け方に急患。今日はもう戻れない。お父さん』
鈴「・・・お医者さんって忙しい。」
自分一人の朝ご飯を準備して、食べた。
部屋の掃除もして、朝の勉強を早々に終わらせる。
と、お昼前には何もすることがなくなってしまった。
鈴「・・・おじいさんのとこいってみようかな。」
体は重たいままだけど、昨日のことも気になる。
すぐに帰ってくる予定にして、私は雑貨屋さんに向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
カランカラン・・・
鈴「こんにちはー・・・。」
ドアを開けて中に入ると、おじいさんがカウンターに座っていた。
店主「いらっしゃい、鈴ちゃん。」
鈴「こんにちはっ。」
店主「昨日の話の続きなんじゃが・・・。」
鈴「うんうんっ。」
私はカウンターの前に置いてあった椅子に座った。
おじいさんは奥にある棚から小さい箱を取って来て、私に見せてくれた。
店主「これ、タイピンの土台じゃよ。」
鈴「土台・・・?」
おじいさんは箱の蓋を開けた。
中にはシルバーのタイピンがいくつか入ってる。
鈴「わぁ・・・。」
なんの装飾もされてないシンプルなタイピン。
店主「鈴ちゃん、よかったら自分で飾りをつけるかい?」
鈴「わ・・私が?」
おじいさんは小さい宝石のようなものもいくつか見せてくれた。
店主「これをつけるんじゃが・・・つければつけた分だけ値段が上がってしまうんじゃが・・・。どうじゃ?」
鈴「・・・します!やらせてください!」
考えるまでもなかった。
店主「この飾りの金額はここに書いてあるよ。参考にするといい。だいたい・・・3~4個ぐらいつけたらきれいじゃよ。」
鈴「3~4個・・・一個の値段とタイピンの値段を合わせて・・・一つ3000円。三ついるから1万円かー。」
店主「高校生にはちょっと厳しいかな?」
鈴「お金貯めてくるんで待っててもらえますか?」
私のお願いに、おじいさんは快く答えてくれた。
店主「いいよ。いつまでも待ってる。」
鈴「ありがとうっ。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
自分自身の体が風邪気味ということを思い出して、私はお店を出る。
鈴「お金貯めたら来ますからーっ。」
おじいさん「はいよ。」
お店を出た私は家に向かって歩き始めた。
おじいさんのお店ではさほど感じなかった体の重みは、外に出た途端感じるようになった。
鈴「おじいさんとこは・・テンション上がってたからかな・・・重い・・・。」
足取りがどんどんゆっくりになっていく。
それでも家まで頑張って歩こうとゆっくりでも一歩一歩前に進んでいた。
直哉「・・・大丈夫?」
鈴「え・・・?」
よっぽどふらつきながら歩いてたんだろうか・・・後ろから声をかけてきた人がいた。
直哉「ずいぶんしんどそうだけど・・・?」
鈴「大・・丈夫です・・・。」
気を持ち直して歩き始めるけどしっかりした足取りとまではいかなかった。
直哉「俺、救命士してるんだけど、よかったら近くの病院調べようか?」
鈴「いえ・・だいじょ・・・っ。」
『大丈夫』って言おうとしたとき、膝に力が入らなくなってその場に座り込んでしまった。
鈴「はぁ・・はぁ・・・。」
直哉「熱かな?・・・って、あれ?きみ、翔平んとこの・・?」
鈴「翔平・・お兄ちゃん・・・?」
直哉「あー・・連れてったほうがいいか。ちょっとごめんよー。」
その人は私を抱え上げて歩き始めた。
鈴「う・・・はぁ・・・」
直哉「しんどい?大丈夫だからなー。」
私はお兄ちゃんたちのいる病院に届けられてしまった。
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