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言えない言葉。
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ーーーーー
翌日。
目を覚ました私は体が少し軽くなってるのを感じていた。
(やっぱり知恵熱だったのかな・・・。)
そう思って体を起こそうとした時、おでこの上に何かが乗ってることに気がついた。
手を伸ばして触ってみると、タオルのような布が置かれていたのだ。
「あれ・・?こんなの置いた・・・?」
覚えのない布に首を傾けながら体を起こすと、私のベッドの側にカーマインさんの姿があったのだ。
すぐ近くにトープさんとセラドンさんの姿もある。
「ひゃあ・・・っ!?」
驚いた私の声を聞いた3人は順番に目を開けていった。
私は一番近くにいたカーマインさんと目が合ってしまう。
「マオ・・・どうだ?調子・・・」
「へっ・・?」
「熱・・・」
カーマインさんは手を伸ばし、私のおでこに触れてきた。
「~~~~っ!?」
ぺたぺたと首や頬も触られ、驚いた私は思わず固まってしまう。
「だいぶ下がったな。でももうちょっと寝とけ。何か食いたいものあるか?」
「???」
なぜこんな状況になってるのかわからずに、私の目が泳いでいく。
「あっ・・あのっ・・・」
「うん?」
「どうしてカーマインさんたちが家に・・・?」
布団で顔を半分隠しながら聞くと、カーマインさんたちは昨日のことを教えてくれた。
熱が高すぎて広場でうずくまっていた私を家まで連れてきてくれたことと、そのまま看病してくれたことを。
「すっ・・すみません・・・。」
「いや?気にするな。もうその布、必要なさそうだな。」
「え?・・・あ、もしかしてこれ・・・カーマインさんたちが・・・?」
そう聞くと二人は笑っていた。
私の頭を一晩中・・・冷やし続けていてくれたようだ。
「あ・・ありがとうございます・・・。」
「熱が下がったみたいでよかったよ。・・・あ、子供たちも心配してたけど・・マオの調子が良くなったら伝えるって言ってあるからゆっくり休みな。」
「何から何まですみません・・。」
私はその言葉に甘え、完全に体が回復するまで休むことにした。
寝れるだけ寝て、ゆったりした時間を過ごしていく。
食料に関してはカーマインさんとトープさんがあれやこれやと用意してくれ、食べれそうなものを口にしていた。
「ところで・・・セラドンさんは?いつも3人一緒なのに姿を見てないような・・・。」
私の熱が下がってから二日経ったとき、彼の姿が無いことに疑問をもった私がトープさんに聞いた。
カーマインさんは町に行ったようで姿が無い。
「あー・・ちょっとこの家の周りにある植物のとこに行ったんだけど・・・まだ戻ってきてないんだよ。」
「へ?」
「もういい加減に戻って来ると思うんだけど・・・マオはこの家の周りの植物が姿を変えてること知ってた?」
「姿を変えてって・・・・え?」
そう言った瞬間、家の外からセラドンさんの声が聞こえてきた。
「カーマインーっ!トープーっ!聞いて来たよー!」
「おっと、噂をすればなんとやら。セラドンが戻って来たみたいだ。」
トープさんは家の外に出ていった。
その後ろをついていくようにして私も外に出る。
するとたくさん葉っぱをつけたセラドンさんが家の外に立っていたのだ。
「わぁっ!?」
「セラドン・・またそんなにくっつけて・・・」
呆れるようにしてため息をつくトープさん。
これがいつもの光景のような言いぶりに、少し同情してしまいそうにる。
「聞いて聞いてっ!聞いて来たよ!この植物たち・・『マオを守るために家を囲ってる』んだって!!」
その言葉を聞いて私は言葉を失った。
(え・・・私?私を・・守るためって・・・どうして・・・)
意味が分からずにセラドンさんを見てると、トープさんが後ろ手に頭をかきながら申し訳なさそうに口を開いた。
「あー・・・マオ。カーマインが戻ってきたら・・・ちょっと話を聞いてくれるか?」
「?・・・話?」
「うん。ちょっと・・マオにとってはいい話ではないかもしれないけど・・・聞いて欲しい。」
申し訳なさそうな顔をしながらも真剣に私の目を見てくるトープさん。
『話を聞いて欲しい』と言われて断れるほどのメンタルは持ち合わせてなく、私は頷くことしかできなかった。
「・・・わかりました。」
「ありがとう。」
トープさんはセラドンさんについていた葉を落としていき、私もそれを手伝っていった。
全部の葉が取れたところで二人に家の中に入ってもらい、お茶をいれていく。
すると少ししてからカーマインさんが戻ってきたのだ。
「あれ?セラドン、お前何かわかったのか?」
戻ってきたカーマインさんは服を着替えていた。
黒っぽいロングマントに紺のブーツ。
白い手袋をしていて、腰元に剣のようなものも見える。
「え・・カーマインさん、どうしたんですか?」
お城の物置部屋で見たカーマインさんの姿だ。
あの時のことが思い出されるけど、なぜ今この格好をしてるのか疑問だった。
「あー・・・悪い、マオ。」
「?」
「お前が熱出してる時に一人・・女のような奴がいた記憶って・・あるか?」
「え?」
カーマインさんの言葉を聞いて、私は自分の記憶を手繰り寄せた。
「えっと・・・あ、髪の長い女の人がいたような・・・?」
ぼやっとした記憶の中にある人だ。
カーマインさんに言われない限り思い出すこともなかっただろう。
「そいつ、『アザレア』っていうんだけど、マオを城に・・って話になってるんだ。」
「はい・・!?」
「どこから話せばいいのかわからないんだけど・・・」
カーマインさんは話が上手くまとまってないながらに少しずつ話し始めた。
その内容は、『王子は二人いること』『私と今川先生のどちらか一方がこの国に呼ばれたこと』『呼ばれたのは私の可能性が高いこと』などだ。
「・・・つまり、私がこの世界に呼ばれたかもしれないってことを第一王子の人が考えてるってことなんですよね?裏付けも若干進んでいて。そしてその人は私と話をしたがってる・・・と。」
「・・・そういうことになる。」
この町に来るまでの距離や時間を考えたら断りたいところだけど、『王子』に呼ばれてるなら応えないといけないことだろう。
カーマインさんがわざわざ制服を身に纏ってここに来てる意味も考えたら、『受ける』一択の話を持ってきてることになる。
「うーん・・・でも今川先生・・キララさんがお勤めしてるんですよね?なら・・・」
『私は必要ない』
そう言おうとした時、カーマインさんとトープさんの表情が曇ったのがわかった。
「・・マローの話だとキララは砂漠化したところに緑を生やしたらしい。でもアザレアの話を聞くとおかしなところがいくつかあるんだ。」
「おかしなところ?」
「あぁ。」
文献によると異世界から召喚された『聖女』と呼ばれる人はその土地に存在するだけで自然を豊かにすることができるはず。
なのに今川先生は干ばつした土地にいくら滞在していてもなんの改善もされなかったらしいのだ。
「え?でも砂漠化したところに緑が生えたんですよね?最初の頃もちゃんとできてたって・・・」
「それなんだけど・・『マオ』が関係してるんじゃないかと思って・・・」
「・・・私!?」
「それを確認するためにも一度城に戻って欲しいんだ。勝手なことを言ってることはわかってる。マオの要望はできるだけ叶えるから・・・頼む。」
そう言ってカーマインさんは深く頭を下げ始めた。
「ちょ・・!頭なんて下げないでください・・・!」
下げられた頭を戻させようと肩を押したとき、トープさんとセラドンさんもカーマインさんの隣に立って頭を下げ始めてしまった。
「俺からも頼む。」
「僕も・・・!」
「ちょ・・・!?」
下げられた3人の頭を上げさせることなんてできなく、私は深いため息を漏らすことしかできなかった。
「はぁー・・・わかりました、わかりましたよっ!」
「!!」
「要は私が呼ばれたんじゃないってことが証明されたらいいんですよね?そしたらもうこんなこと言いませんよね?」
どうも一昨日から3人に疑われていたようで、私は身の潔白?を証明するほかないようだった。
巻き込まれた上に自由に過ごさせてもらえないとか・・・拉致監禁みたいに思えてくる。
(巻き込まれる私も悪いんだろうけど・・もう放っておいてくれていいのに。)
とにかく『自分の自由』を確保するために私は今一度お城に向かうことに決めたのだった。
翌日。
目を覚ました私は体が少し軽くなってるのを感じていた。
(やっぱり知恵熱だったのかな・・・。)
そう思って体を起こそうとした時、おでこの上に何かが乗ってることに気がついた。
手を伸ばして触ってみると、タオルのような布が置かれていたのだ。
「あれ・・?こんなの置いた・・・?」
覚えのない布に首を傾けながら体を起こすと、私のベッドの側にカーマインさんの姿があったのだ。
すぐ近くにトープさんとセラドンさんの姿もある。
「ひゃあ・・・っ!?」
驚いた私の声を聞いた3人は順番に目を開けていった。
私は一番近くにいたカーマインさんと目が合ってしまう。
「マオ・・・どうだ?調子・・・」
「へっ・・?」
「熱・・・」
カーマインさんは手を伸ばし、私のおでこに触れてきた。
「~~~~っ!?」
ぺたぺたと首や頬も触られ、驚いた私は思わず固まってしまう。
「だいぶ下がったな。でももうちょっと寝とけ。何か食いたいものあるか?」
「???」
なぜこんな状況になってるのかわからずに、私の目が泳いでいく。
「あっ・・あのっ・・・」
「うん?」
「どうしてカーマインさんたちが家に・・・?」
布団で顔を半分隠しながら聞くと、カーマインさんたちは昨日のことを教えてくれた。
熱が高すぎて広場でうずくまっていた私を家まで連れてきてくれたことと、そのまま看病してくれたことを。
「すっ・・すみません・・・。」
「いや?気にするな。もうその布、必要なさそうだな。」
「え?・・・あ、もしかしてこれ・・・カーマインさんたちが・・・?」
そう聞くと二人は笑っていた。
私の頭を一晩中・・・冷やし続けていてくれたようだ。
「あ・・ありがとうございます・・・。」
「熱が下がったみたいでよかったよ。・・・あ、子供たちも心配してたけど・・マオの調子が良くなったら伝えるって言ってあるからゆっくり休みな。」
「何から何まですみません・・。」
私はその言葉に甘え、完全に体が回復するまで休むことにした。
寝れるだけ寝て、ゆったりした時間を過ごしていく。
食料に関してはカーマインさんとトープさんがあれやこれやと用意してくれ、食べれそうなものを口にしていた。
「ところで・・・セラドンさんは?いつも3人一緒なのに姿を見てないような・・・。」
私の熱が下がってから二日経ったとき、彼の姿が無いことに疑問をもった私がトープさんに聞いた。
カーマインさんは町に行ったようで姿が無い。
「あー・・ちょっとこの家の周りにある植物のとこに行ったんだけど・・・まだ戻ってきてないんだよ。」
「へ?」
「もういい加減に戻って来ると思うんだけど・・・マオはこの家の周りの植物が姿を変えてること知ってた?」
「姿を変えてって・・・・え?」
そう言った瞬間、家の外からセラドンさんの声が聞こえてきた。
「カーマインーっ!トープーっ!聞いて来たよー!」
「おっと、噂をすればなんとやら。セラドンが戻って来たみたいだ。」
トープさんは家の外に出ていった。
その後ろをついていくようにして私も外に出る。
するとたくさん葉っぱをつけたセラドンさんが家の外に立っていたのだ。
「わぁっ!?」
「セラドン・・またそんなにくっつけて・・・」
呆れるようにしてため息をつくトープさん。
これがいつもの光景のような言いぶりに、少し同情してしまいそうにる。
「聞いて聞いてっ!聞いて来たよ!この植物たち・・『マオを守るために家を囲ってる』んだって!!」
その言葉を聞いて私は言葉を失った。
(え・・・私?私を・・守るためって・・・どうして・・・)
意味が分からずにセラドンさんを見てると、トープさんが後ろ手に頭をかきながら申し訳なさそうに口を開いた。
「あー・・・マオ。カーマインが戻ってきたら・・・ちょっと話を聞いてくれるか?」
「?・・・話?」
「うん。ちょっと・・マオにとってはいい話ではないかもしれないけど・・・聞いて欲しい。」
申し訳なさそうな顔をしながらも真剣に私の目を見てくるトープさん。
『話を聞いて欲しい』と言われて断れるほどのメンタルは持ち合わせてなく、私は頷くことしかできなかった。
「・・・わかりました。」
「ありがとう。」
トープさんはセラドンさんについていた葉を落としていき、私もそれを手伝っていった。
全部の葉が取れたところで二人に家の中に入ってもらい、お茶をいれていく。
すると少ししてからカーマインさんが戻ってきたのだ。
「あれ?セラドン、お前何かわかったのか?」
戻ってきたカーマインさんは服を着替えていた。
黒っぽいロングマントに紺のブーツ。
白い手袋をしていて、腰元に剣のようなものも見える。
「え・・カーマインさん、どうしたんですか?」
お城の物置部屋で見たカーマインさんの姿だ。
あの時のことが思い出されるけど、なぜ今この格好をしてるのか疑問だった。
「あー・・・悪い、マオ。」
「?」
「お前が熱出してる時に一人・・女のような奴がいた記憶って・・あるか?」
「え?」
カーマインさんの言葉を聞いて、私は自分の記憶を手繰り寄せた。
「えっと・・・あ、髪の長い女の人がいたような・・・?」
ぼやっとした記憶の中にある人だ。
カーマインさんに言われない限り思い出すこともなかっただろう。
「そいつ、『アザレア』っていうんだけど、マオを城に・・って話になってるんだ。」
「はい・・!?」
「どこから話せばいいのかわからないんだけど・・・」
カーマインさんは話が上手くまとまってないながらに少しずつ話し始めた。
その内容は、『王子は二人いること』『私と今川先生のどちらか一方がこの国に呼ばれたこと』『呼ばれたのは私の可能性が高いこと』などだ。
「・・・つまり、私がこの世界に呼ばれたかもしれないってことを第一王子の人が考えてるってことなんですよね?裏付けも若干進んでいて。そしてその人は私と話をしたがってる・・・と。」
「・・・そういうことになる。」
この町に来るまでの距離や時間を考えたら断りたいところだけど、『王子』に呼ばれてるなら応えないといけないことだろう。
カーマインさんがわざわざ制服を身に纏ってここに来てる意味も考えたら、『受ける』一択の話を持ってきてることになる。
「うーん・・・でも今川先生・・キララさんがお勤めしてるんですよね?なら・・・」
『私は必要ない』
そう言おうとした時、カーマインさんとトープさんの表情が曇ったのがわかった。
「・・マローの話だとキララは砂漠化したところに緑を生やしたらしい。でもアザレアの話を聞くとおかしなところがいくつかあるんだ。」
「おかしなところ?」
「あぁ。」
文献によると異世界から召喚された『聖女』と呼ばれる人はその土地に存在するだけで自然を豊かにすることができるはず。
なのに今川先生は干ばつした土地にいくら滞在していてもなんの改善もされなかったらしいのだ。
「え?でも砂漠化したところに緑が生えたんですよね?最初の頃もちゃんとできてたって・・・」
「それなんだけど・・『マオ』が関係してるんじゃないかと思って・・・」
「・・・私!?」
「それを確認するためにも一度城に戻って欲しいんだ。勝手なことを言ってることはわかってる。マオの要望はできるだけ叶えるから・・・頼む。」
そう言ってカーマインさんは深く頭を下げ始めた。
「ちょ・・!頭なんて下げないでください・・・!」
下げられた頭を戻させようと肩を押したとき、トープさんとセラドンさんもカーマインさんの隣に立って頭を下げ始めてしまった。
「俺からも頼む。」
「僕も・・・!」
「ちょ・・・!?」
下げられた3人の頭を上げさせることなんてできなく、私は深いため息を漏らすことしかできなかった。
「はぁー・・・わかりました、わかりましたよっ!」
「!!」
「要は私が呼ばれたんじゃないってことが証明されたらいいんですよね?そしたらもうこんなこと言いませんよね?」
どうも一昨日から3人に疑われていたようで、私は身の潔白?を証明するほかないようだった。
巻き込まれた上に自由に過ごさせてもらえないとか・・・拉致監禁みたいに思えてくる。
(巻き込まれる私も悪いんだろうけど・・もう放っておいてくれていいのに。)
とにかく『自分の自由』を確保するために私は今一度お城に向かうことに決めたのだった。
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