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第10話

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「と、とくに深い意味はない。一緒に働いている奴が悩みを抱えていたら、話を聞くのが責任者として当たり前のことだ」
「親方ひょっとして……」

親方が荒い息づかいになり綺麗な顔が乱れる。心の不安な思いを隠しながらも最もらしい口実をひねり出してきた。

だがアルベルトは眉をしかめるように曇らせ、疑惑にくるまれた顔をして、すぐ隣にいる親方を事細かに見ながら言う。

「な、なんだ!?言いたいことがあるならはっきり言え!」
「……僕と娘さんを結婚させたいんですか?」
「はぁ……?」

アルベルトは何を考えているのか?親方の悩みが頭の中でグルグルと回っています。感情を抑えていたのだが、どうにも耐え忍ぶことができなくなり噛みつくように怒声を発する。

王子の言葉に親方は間抜けづらに変化して、考えを巡らせながら目の前の男は、外見ほど頭は良くないと理解した。

しばし沈黙が続いて、なんだが息苦しい雰囲気になったところでアルベルトが切り出す。


「親方そうでしょう?僕を娘さんに紹介したいんですよね?」
「そ、そうだ!その通りだ。前からいい男だと思っていたから娘の相手にどうかと思っていたのだ。しかしバレてしまったな……お前は鋭い!勘がいいな」
「やっぱりそうでしたか」

分かっていますよ?アルベルトはそのような顔つきで念を押してくる。親方は好都合だとお馬鹿さんに話を合わせます。親方はとても真剣な顔をして嘘をついた。

王子は自分の顔や見た目に自信を持っている。彼の容姿が群を抜いて美しいのは事実だが、少々うぬぼれが強いところもある。

「娘さんが僕のことを好きになってるんですよね?だから親心で僕達の仲を取り持ってこんな話を……」
「いや、うちの娘はお前のことは全く知らないぞ?」
「えっ……!?……じゃあ娘さんは僕と火遊びしたいという事ですね?」
「だからな、娘はお前のことを好きでもないし結婚も考えてない!そもそもボーイフレンドがいる」
「親方は僕を騙したんですか?」
「は?」
「思わせぶりな態度で僕の純粋な心を弄んだ!」

性格だと言ってしまえば、それまでだけどお互いに一度も会ったこともない相手に、親方のお嬢さんが結婚を望んでいるなんて発想は普通は出てこないもの。どこまでも痴呆のような男に、親方もいい加減にくぎを刺す。

こいつは何を言っているのだ……?親方はただ呆れるより外なかったのである。

「まあいいだろう。とにかく今日は家に来い!」
「ちょっと待って……恥ずかしいですから、おろしてください」

親方は高い身長と腕力を活かして高々とアルベルトを持ち上げる。ほとんどお姫様抱っこの状態。無理があると気づいているようで王子は頬を赤らめ、もじもじとしている。逆に親方の顔は幸せ気分で天にも昇る心地です。

この日、親方からアドバイスをされて、クローディアと向き合う覚悟を心に決めた。同僚達も協力してくれると言う。王子は廃人から一歩前進し、青白い顔が少々赤みを帯びていた。
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