婚約者の王子が結婚している幼馴染を妊娠させる。婚約破棄になって別れたけど助けて! と泣きついてきた。

佐藤 美奈

文字の大きさ
11 / 19

第11話

しおりを挟む
「クローディアは好きな人がいるのかい?」 
「え、なんで?」
「最近は気持ちが浮かれてるからね。今は出会ったばかりで僕よりも相手のほうが魅力的に感じているかもしれない」
「アルベルト?」
「この苦しい生活では、男のことが好きになって夢中になるのは仕方ないことだと思う。だけど改めて落ち着いて考えてほしい」

夕食を済ませて気を抜いていたところで、アルベルトからの不意打ちにクローディアは少しばかり冷静さを失った。急にあせったような顔色になって、彼の言葉通りに落ち着いていることも出来ない。

まさか浮気がバレた?頭の鈍い彼がこんなに早く気がつくなんて予想外だった。知られるはずがないのにどうしてわかったのかと、顔色から血の気が失せて唇がこわばる。

「今、相手の男と別れてくれたら今回のことは水に流す」
「ちょっと気持ちの整理がつくまで待って」
「わかった。でも数日間だけだよ」

浮気相手と関係が無くなれば過去のことは一切罪を問わない。アルベルトは普段と違い真剣な顔つきで言う。クローディアも、相手と別れるのが正しい判断だと理解している。


話を聞けば男との出会いのきっかけは、ある日夕食の食材を買いに行った時に声をかけられたそう。いわゆるナンパというやつだ。

貧しい暮らしでやつれた顔をしていたが、彼女の目鼻立ちのきりっとした美しい顔は寂れた田舎で場違いなほど輝いていた。瞬く間に男の心をかき乱す。

「この瞬間、僕は激しい恋に落ちた」
「は?」
「素敵なお嬢さん、僕と付き合ってください」
「結構です!」

一目惚れした男は、さっそくクローディアに告白するが、冷たい態度で首を左右にふり逃げられてしまう。あまりにもぞんざいに扱いましたがそれには理由がある。

現在暮らしている大きく質素な村はそれなりに人口も多いので、男性から言い寄られたことは数えきれないほど何度もありました。

最初は嬉しかったのですが、大して好きでもない他人で、しかも見てくれが悪い男に話しかけられてもムッとして苛立ちを感じ始めます。

断ってもかなりしつこく食い下がってくる男もいた。つけ狙われて不意に迫ってきた男もいる。彼女は気が強いので、いきなり体を触られ反射的に頬を叩いたことも数回じゃ足りない。

「待ってくれ!」
「なに?」
「少しだけ君の時間を僕にくれないか。これでどうだい?」
「え……?くれるの?」
「もちろんさ。これは君と話す権利の代金だからね」
「ラッキー!あんたなかなか良い奴ね。気が利くわ」
「そうかい?君のような綺麗な女性に褒められて僕は幸せ者だな」

ところがその男はこれまでと違いました。クローディアにゴミを見るような目で見られて振り払われ、男が追いかけるまでは今までと同じ。

しかし、その男はなんと金貨を数枚渡してきます。それによく見ると驚くほどいい男です。柔らかい感じの華やかな横顔は、これまで見てきた男の中でも上位を誇るルックスの良さで、更に紳士的な態度も好感が持てました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

遊び人の令嬢が目を付けたのは、私の真面目な婚約者でした

おいどん
恋愛
子爵家の令嬢エリーネと伯爵家の次男のノルトが婚約を結んだのは、半年前だった。 真面目で優秀なノルトに相応しい婚約者であろうとするものの、エリーネには自信がなかった。 ある日、遊び人と噂の令嬢べルティーナとノルトが共にいるところを見てしまう。 「真面目クンは壁さえ破っちゃえばこっちのもんだからね〜」 「きっと、彼女の美しさに嫉妬しているのだわ…」 「…今度は、ちゃんと言葉にするから」

冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

【完結】精神的に弱い幼馴染を優先する婚約者を捨てたら、彼の兄と結婚することになりました

当麻リコ
恋愛
侯爵令嬢アメリアの婚約者であるミュスカーは、幼馴染みであるリリィばかりを優先する。 リリィは繊細だから僕が支えてあげないといけないのだと、誇らしそうに。 結婚を間近に控え、アメリアは不安だった。 指輪選びや衣装決めにはじまり、結婚に関する大事な話し合いの全てにおいて、ミュスカーはリリィの呼び出しに応じて行ってしまう。 そんな彼を見続けて、とうとうアメリアは彼との結婚生活を諦めた。 けれど正式に婚約の解消を求めてミュスカーの父親に相談すると、少し時間をくれと言って保留にされてしまう。 仕方なく保留を承知した一ヵ月後、国外視察で家を空けていたミュスカーの兄、アーロンが帰ってきてアメリアにこう告げた。 「必ず幸せにすると約束する。どうか俺と結婚して欲しい」 ずっと好きで、けれど他に好きな女性がいるからと諦めていたアーロンからの告白に、アメリアは戸惑いながらも頷くことしか出来なかった。

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

【完結】婚約者と養い親に不要といわれたので、幼馴染の側近と国を出ます

衿乃 光希(キャラ文芸大賞短編で参加中)
恋愛
卒業パーティーの最中、婚約者から突然婚約破棄を告げられたシェリーヌ。 婚約者の心を留めておけないような娘はいらないと、養父からも不要と言われる。 シェリーヌは16年過ごした国を出る。 生まれた時からの側近アランと一緒に・・・。 第18回恋愛小説大賞エントリーしましたので、第2部を執筆中です。 第2部祖国から手紙が届き、養父の体調がすぐれないことを知らされる。迷いながらも一時戻ってきたシェリーヌ。見舞った翌日、養父は天に召された。葬儀後、貴族の死去が相次いでいるという不穏な噂を耳にする。恋愛小説大賞は51位で終了しました。皆さま、投票ありがとうございました。

ジェリー・ベケットは愛を信じられない

砂臥 環
恋愛
ベケット子爵家の娘ジェリーは、父が再婚してから離れに追いやられた。 母をとても愛し大切にしていた父の裏切りを知り、ジェリーは愛を信じられなくなっていた。 それを察し、まだ子供ながらに『君を守る』と誓い、『信じてほしい』と様々な努力してくれた婚約者モーガンも、学園に入ると段々とジェリーを避けらるようになっていく。 しかも、義妹マドリンが入学すると彼女と仲良くするようになってしまった。 だが、一番辛い時に支え、努力してくれる彼を信じようと決めたジェリーは、なにも言えず、なにも聞けずにいた。 学園でジェリーは優秀だったが『氷の姫君』というふたつ名を付けられる程、他人と一線を引いており、誰にも悩みは吐露できなかった。 そんな時、仕事上のパートナーを探す男子生徒、ウォーレンと親しくなる。 ※世界観はゆるゆる ※ざまぁはちょっぴり ※他サイトにも掲載

フッてくれてありがとう

nanahi
恋愛
「子どもができたんだ」 ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。 「誰の」 私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。 でも私は知っている。 大学生時代の元カノだ。 「じゃあ。元気で」 彼からは謝罪の一言さえなかった。 下を向き、私はひたすら涙を流した。 それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。 過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──

【完結】あなただけがスペアではなくなったから~ある王太子の婚約破棄騒動の顛末~

春風由実
恋愛
「兄上がやらかした──」  その第二王子殿下のお言葉を聞いて、私はもう彼とは過ごせないことを悟りました。  これまで私たちは共にスペアとして学び、そして共にあり続ける未来を描いてきましたけれど。  それは今日で終わり。  彼だけがスペアではなくなってしまったから。 ※短編です。完結まで作成済み。 ※実験的に一話を短くまとめサクサクと気楽に読めるようにしてみました。逆に読みにくかったら申し訳ない。 ※おまけの別視点話は普通の長さです。

処理中です...