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第6話
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「でも……」
「言い訳は後で聞きます!それよりも今はローサちゃんです!」
さらに父が自己弁護をするために口を開こうとした時だった。母は甲高い声を天井の上まで響き渡らせる。そして数ヶ月前に結婚した娘の名前を叫んだ。
「ローサがどうしたんだ?」
強烈な言葉を浴びせられて心理的な圧迫感を覚えた父は、自信をなくし心がひるんでしまう。だがローサという娘の名前が耳に入り込んで意識せずに尋ねていた。
「お父様、今日ローサから手紙が届いたのです」
「これは……ローサが助けを求めているということか?」
ローサに何があったんだ?そう言った父にクレアは、いきなり早口に喋り出して手紙を渡した。手紙を受け取って一通り目を通すと、戸惑いの表情を浮かべている。
差出人の名前が書かれていないので、父は本当にローサが寄こした手紙なのか分からなくて、再び真剣な口調で問いかけた。
「間違いなくローサが書いた字です」
「そうよ!だからあなたの情婦のことは今はどうでもいいの!ですがローサちゃんを助けた後で覚悟してくださいね?」
「分かった……」
だが、ローサの字なのは火を見るよりも明らかであるとクレアは主張する。ローサの部屋に行き机の引き出しからノートを取り出して、後で筆跡を確かめたのだ。
続いて夫人も切々と訴えかけるような目で、感情を爆発させる姿を見せる。夫の不倫問題にも頭を悩まされるが、今は娘のほうが何倍も心配する気持ちの方がずっと強い。
ローサを救い出した後で、ゆっくり話し合いましょうね?妥協いたしませんよ?夫人はそう念押しすると公爵家の主は消えそうな声で返事をした。
「うおおぉおおおぉぉおおおおおっっ!」
父はローサの見覚えのある筆跡のメモと、手紙を交互に見比べながら文字の検証を行った後、力を振り絞って動物が吠えるような凄まじい絶叫を放った。
「お父様?」
「あなた?」
突然この人は何を騒いでいるの?やかましい声を立てる父に、美しい母と娘は少しの間、どうしたものかという感じで顔を見合わせている。
「頼りない男の家に嫁がせてしまったようだな……。ローサを助けに行くぞ!」
伯爵家の分際で娘に不当な仕打ちを行うなど、公爵家の血と誇りが許さない。その怒りは自然とローサの結婚相手のリチャードに向けられた。
腹の底に湧いた怒りと興奮が収まらない様子で、正当な理由がない場合は、伯爵家を永遠に葬り去ると判断したのである。
相手の家に嫁いだ大切な娘が、粗末な扱いを受けている。そのまま放置しておくことに耐えられなくて、再び声を張り上げた父はローサの命を救うべく行動を開始した。
「言い訳は後で聞きます!それよりも今はローサちゃんです!」
さらに父が自己弁護をするために口を開こうとした時だった。母は甲高い声を天井の上まで響き渡らせる。そして数ヶ月前に結婚した娘の名前を叫んだ。
「ローサがどうしたんだ?」
強烈な言葉を浴びせられて心理的な圧迫感を覚えた父は、自信をなくし心がひるんでしまう。だがローサという娘の名前が耳に入り込んで意識せずに尋ねていた。
「お父様、今日ローサから手紙が届いたのです」
「これは……ローサが助けを求めているということか?」
ローサに何があったんだ?そう言った父にクレアは、いきなり早口に喋り出して手紙を渡した。手紙を受け取って一通り目を通すと、戸惑いの表情を浮かべている。
差出人の名前が書かれていないので、父は本当にローサが寄こした手紙なのか分からなくて、再び真剣な口調で問いかけた。
「間違いなくローサが書いた字です」
「そうよ!だからあなたの情婦のことは今はどうでもいいの!ですがローサちゃんを助けた後で覚悟してくださいね?」
「分かった……」
だが、ローサの字なのは火を見るよりも明らかであるとクレアは主張する。ローサの部屋に行き机の引き出しからノートを取り出して、後で筆跡を確かめたのだ。
続いて夫人も切々と訴えかけるような目で、感情を爆発させる姿を見せる。夫の不倫問題にも頭を悩まされるが、今は娘のほうが何倍も心配する気持ちの方がずっと強い。
ローサを救い出した後で、ゆっくり話し合いましょうね?妥協いたしませんよ?夫人はそう念押しすると公爵家の主は消えそうな声で返事をした。
「うおおぉおおおぉぉおおおおおっっ!」
父はローサの見覚えのある筆跡のメモと、手紙を交互に見比べながら文字の検証を行った後、力を振り絞って動物が吠えるような凄まじい絶叫を放った。
「お父様?」
「あなた?」
突然この人は何を騒いでいるの?やかましい声を立てる父に、美しい母と娘は少しの間、どうしたものかという感じで顔を見合わせている。
「頼りない男の家に嫁がせてしまったようだな……。ローサを助けに行くぞ!」
伯爵家の分際で娘に不当な仕打ちを行うなど、公爵家の血と誇りが許さない。その怒りは自然とローサの結婚相手のリチャードに向けられた。
腹の底に湧いた怒りと興奮が収まらない様子で、正当な理由がない場合は、伯爵家を永遠に葬り去ると判断したのである。
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