25 / 32
25話
しおりを挟む
「クラウド?お前は何を言ってるんだ……僕とアイリスがナタリアを殺した……?」
ラウルは唐突過ぎるクラウドの言葉に脳内は完全に混乱していた。気持ちが錯綜して頭の中の収拾がつかないような気配を見せている。知性が感じられない間抜けな顔で、えっ?という感じである。
「――クラウド様、私とラウル様がナタリアを殺した犯人だとおっしゃいましたが、この世に現にナタリアは生きているではありませんか?」
しばらくの間、アイリスはラウルの動向を見守っていたが、ラウルの様子をうかがうと唖然として棒立ちになって気の抜けた阿呆面のまま停止している。頼りない感じのラウルに、アイリスはこのまま黙っていても埒があかないと思って仕方なく口を開いた。
アイリスは人に褒められたものではない腹黒い性格を隠していますが、すらっとして可愛さと美しさの両方を兼ね備えている上に聡明で完璧な女性と言っても差し支えない。少なくともラウルと比較するなんて失礼なほど彼女は頭が良い。
自分たちがナタリアの命を奪ったのならナタリアは息が止まって生きていない。だが真正面に座っているナタリアは気落ちした状態で元気はなさそうですが、息をして生命活動を維持しているのは明らかだという。
「そ、そうだ!ア、アイリスの言う通りだな。ナタリアが辛そうなのは否めないが少しだけ動いているぞ。ということは間違いなくナタリアは生きていると言うことだ!アイリス、ナタリアの心臓が動いているか確認してみてくれ!」
思考がフリーズ状態だったラウルの脳細胞が再起動した。どうやら故障はしてなかったらしい。しかしながら動き始めは脳内がカクカク左右にブレたらしく言葉を詰まらせていた。
ラウルはアイリスの意見に同調し、心地良さそうな思いで誇らしさを味わえた。さらにアイリスにナタリアの心臓の音を確かめるように言う。ラウルの言葉にはどこか命じるような強い響きがあり、ラウルは水を得た魚のように猛烈な勢いで叫んでいた。
「わかりました」
アイリスは言いつけどおりに動く。ナタリアもアイリスと同じ細身の体型だが豊かな胸をしている。アイリスは親友なので知っていたが、自分の胸と比べて落ち込んだ気分になった。アイリスの胸は驚くほど薄く板のような平べったい胸だった。アイリスは貧乳をはるかに超えるレベルの無乳という存在らしい……。
アイリスは羨望と嫉妬に満ちた複雑な感情でナタリアの胸に顔をうずめていく。目を閉じてナタリアの呼吸を感じる。静かで規則的な鼓動が耳に伝わってくる。
「ナタリアの胸に耳を当てて確認いたしましたが心臓は動いています。当然ですが呼吸も普通にしています」
「アイリス確認ご苦労さまでした……」
その様子を見とどけていたラウルは元気よくご苦労!と言おうとしたけれど、痛々しいほどションボリしているアイリスに同情せずにいられなくて、ご苦労さまと優しく労をねぎらう言葉をかけた。
「クラウドお前の言ってることは矛盾しているぞ!ナタリアは今この場に存在して生きている。これが幽霊だとでも言いたいのか?」
ナタリアが目の前で生きているのだから、誰の目にも明らかにクラウドの言ったことはおかしい。ラウルの勢いは更に増すが、クラウドの方は相変わらず態度を崩さずクールな表情のままだ。理屈としては明らかに矛盾しているのだが、クラウドは自分のほうが正しいことを確信していた。
「でも君たちに殺されてる場面の記憶がナタリアの頭に入ってるんだよ」
クラウドは謎めいた言葉を告げた。ラウルとアイリスに殺害された強烈な苦痛と恐怖の記憶が、脳に植えつけられたようにナタリアの記憶に残っているという。
ラウルとアイリスは背筋に冷たい戦慄が走ると不安そうな顔をして、気味悪さや恐怖感がどうしても拭いきれなかった。
ラウルは唐突過ぎるクラウドの言葉に脳内は完全に混乱していた。気持ちが錯綜して頭の中の収拾がつかないような気配を見せている。知性が感じられない間抜けな顔で、えっ?という感じである。
「――クラウド様、私とラウル様がナタリアを殺した犯人だとおっしゃいましたが、この世に現にナタリアは生きているではありませんか?」
しばらくの間、アイリスはラウルの動向を見守っていたが、ラウルの様子をうかがうと唖然として棒立ちになって気の抜けた阿呆面のまま停止している。頼りない感じのラウルに、アイリスはこのまま黙っていても埒があかないと思って仕方なく口を開いた。
アイリスは人に褒められたものではない腹黒い性格を隠していますが、すらっとして可愛さと美しさの両方を兼ね備えている上に聡明で完璧な女性と言っても差し支えない。少なくともラウルと比較するなんて失礼なほど彼女は頭が良い。
自分たちがナタリアの命を奪ったのならナタリアは息が止まって生きていない。だが真正面に座っているナタリアは気落ちした状態で元気はなさそうですが、息をして生命活動を維持しているのは明らかだという。
「そ、そうだ!ア、アイリスの言う通りだな。ナタリアが辛そうなのは否めないが少しだけ動いているぞ。ということは間違いなくナタリアは生きていると言うことだ!アイリス、ナタリアの心臓が動いているか確認してみてくれ!」
思考がフリーズ状態だったラウルの脳細胞が再起動した。どうやら故障はしてなかったらしい。しかしながら動き始めは脳内がカクカク左右にブレたらしく言葉を詰まらせていた。
ラウルはアイリスの意見に同調し、心地良さそうな思いで誇らしさを味わえた。さらにアイリスにナタリアの心臓の音を確かめるように言う。ラウルの言葉にはどこか命じるような強い響きがあり、ラウルは水を得た魚のように猛烈な勢いで叫んでいた。
「わかりました」
アイリスは言いつけどおりに動く。ナタリアもアイリスと同じ細身の体型だが豊かな胸をしている。アイリスは親友なので知っていたが、自分の胸と比べて落ち込んだ気分になった。アイリスの胸は驚くほど薄く板のような平べったい胸だった。アイリスは貧乳をはるかに超えるレベルの無乳という存在らしい……。
アイリスは羨望と嫉妬に満ちた複雑な感情でナタリアの胸に顔をうずめていく。目を閉じてナタリアの呼吸を感じる。静かで規則的な鼓動が耳に伝わってくる。
「ナタリアの胸に耳を当てて確認いたしましたが心臓は動いています。当然ですが呼吸も普通にしています」
「アイリス確認ご苦労さまでした……」
その様子を見とどけていたラウルは元気よくご苦労!と言おうとしたけれど、痛々しいほどションボリしているアイリスに同情せずにいられなくて、ご苦労さまと優しく労をねぎらう言葉をかけた。
「クラウドお前の言ってることは矛盾しているぞ!ナタリアは今この場に存在して生きている。これが幽霊だとでも言いたいのか?」
ナタリアが目の前で生きているのだから、誰の目にも明らかにクラウドの言ったことはおかしい。ラウルの勢いは更に増すが、クラウドの方は相変わらず態度を崩さずクールな表情のままだ。理屈としては明らかに矛盾しているのだが、クラウドは自分のほうが正しいことを確信していた。
「でも君たちに殺されてる場面の記憶がナタリアの頭に入ってるんだよ」
クラウドは謎めいた言葉を告げた。ラウルとアイリスに殺害された強烈な苦痛と恐怖の記憶が、脳に植えつけられたようにナタリアの記憶に残っているという。
ラウルとアイリスは背筋に冷たい戦慄が走ると不安そうな顔をして、気味悪さや恐怖感がどうしても拭いきれなかった。
応援ありがとうございます!
2
お気に入りに追加
1,382
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる