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27話
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「アイリス放せ!僕にクラウドを殴らせろ!」
「この手だけは何があろうと絶対に離しません!クラウド様には指一本も触れさせませんわ!」
クラウドを殴りたい一心で暴走するラウルの体をアイリスは抱きつくようにつかんだ。アイリスは自分が怪我を負う覚悟で体を張って止めた。ラウルは酒乱のように荒ぶって、アイリスの美しくつややかな栗色の長い髪の毛をつかみながら邪魔をするなという風に吐き出すような怒号を放った。
アイリスの綺麗に整えられた髪は乱れ放題で、美しく装飾された花の髪飾りや鮮やかに輝く蝶の形をした髪飾りが音をたてて床に落ちた。普通ならやめて!と救いを求めて悲鳴を上げるところだが、アイリスの顔は断固たる決意をにじませている。意地でもラウルを前に行かせないと、どんなことをしてでもクラウドを守り抜こうと心に決めていた。
「アイリスはクラウドと結婚したいようだが、こんな頭のおかしな奴はやめた方がいい。結婚してもさんざん苦労する結果になるぞ?」
アイリスの意外なしぶとさにラウルは根負けしたらしく、悔しそうな顔をして何か思い出したようで口を開く。先ほど耳打ちされた時に、クラウドとの仲を取り持つことを条件に親友同士のアイリスがナタリアを説得するというものだ。ラウルは協力することを約束してアイリスの頼み事を快く引き受けた。
しかしクラウドが正気とは思えないことを平気で言う危険人物とは思わなかった。自分とアイリスはナタリアを殺したなど信じられないしあってはならない事を言いだした。自分と比べていつも冷静で冴えた頭脳を持っているクラウドを羨ましく思いながらも嫉妬心を抱くほどだったのに、本性はこんな気違いじみた奴だったのかとショックを受けていた。
頭がイッちゃってる人間を君の大切な結婚相手に選んで良いのか?少なくとも毎日が激しい夫婦喧嘩で、アイリスは気苦労が絶えなく、悩み苦しみストレスを感じることは決まっている。あとはアイリスの精神がどれほど保てるかということになるが半年が限界だろう。最後にはアイリスが精神的に耐えられなくなって、短く不幸な結婚生活の末に離婚になるのは間違いない。ナタリアの親友にそんな辛く悲しい道はおすすめできないという思いだ。
「もちろんそんなことは百も承知しています。ですが私はクラウド様を心から愛してしまった……クラウド様が精神障害者でも問題ございません。クラウド様の頭の病気も最適な治療法を一緒に見つけます。私が王妃になって一生彼を支えてあげたいのです!」
アイリスはどんな苦労でも我が身に鞭打つ覚悟で、耐え抜くという殊勝な心掛けを持っているという。精神病のクラウドを回復するために積極的に取り組む姿勢をみせた。クラウドのことを大好きでたまらなくなって、愛情は生きている限り永遠に続くとアイリスは無限の愛があると話す。生涯最後まで真心を尽くしてクラウドの人生を支えて、クラウドのすべてを受け入れるという優しく理解するような顔で宣言した。
アイリスの本音を言えば、頭がおかしいクラウドは早々に殺してしまったほうがいいと考えている。王妃から女王になって国を支配してやろうというどす黒い欲望を抱いていた。国を乗っ取り貴族社交界の頂点に立って自分好みの環境を作り、男妾や側近に性的魅力にあふれた美男子たちを大勢はべらせて身の回りの世話は彼らにやってもらう。
アイリスが何か言いつけると性的魅力にあふれた美男子たちは、喜んでお引き受けいたします!と気持ちの良い笑顔で返してくれるように厳しく躾ける。そして厳格なルールによってアイリスを神聖な存在として神の如く崇拝するように指導していく。
「アイリス……君という女性はなんて綺麗な心を持ってるんだ……自分を疲労してもクラウドに永遠に消えない愛を誓うというのか……純粋無垢な君がそんな罰ゲームのような人生を歩んで言いわけがない……こんな素晴らしい女性がこの世に存在するというのか……あぁぁっ、うっうっ、あぅぅぅ……うわあああああん!!」
ラウルはアイリスの情熱に感激して自然と涙が流れていた。この世には目先きだけの優しい女性が何人いると思うというのか?数知れないだろう……だけど彼女だけは違う。真の愛情を持っている女性だ。ラウルは何やら切実にいきんでいる声を出し始めると突然泣き出した。
「あの、僕はアイリスと結婚するつもりは全くないよ」
クラウドは努めて冷静な表情を保ち平然とした声で言った。
「この手だけは何があろうと絶対に離しません!クラウド様には指一本も触れさせませんわ!」
クラウドを殴りたい一心で暴走するラウルの体をアイリスは抱きつくようにつかんだ。アイリスは自分が怪我を負う覚悟で体を張って止めた。ラウルは酒乱のように荒ぶって、アイリスの美しくつややかな栗色の長い髪の毛をつかみながら邪魔をするなという風に吐き出すような怒号を放った。
アイリスの綺麗に整えられた髪は乱れ放題で、美しく装飾された花の髪飾りや鮮やかに輝く蝶の形をした髪飾りが音をたてて床に落ちた。普通ならやめて!と救いを求めて悲鳴を上げるところだが、アイリスの顔は断固たる決意をにじませている。意地でもラウルを前に行かせないと、どんなことをしてでもクラウドを守り抜こうと心に決めていた。
「アイリスはクラウドと結婚したいようだが、こんな頭のおかしな奴はやめた方がいい。結婚してもさんざん苦労する結果になるぞ?」
アイリスの意外なしぶとさにラウルは根負けしたらしく、悔しそうな顔をして何か思い出したようで口を開く。先ほど耳打ちされた時に、クラウドとの仲を取り持つことを条件に親友同士のアイリスがナタリアを説得するというものだ。ラウルは協力することを約束してアイリスの頼み事を快く引き受けた。
しかしクラウドが正気とは思えないことを平気で言う危険人物とは思わなかった。自分とアイリスはナタリアを殺したなど信じられないしあってはならない事を言いだした。自分と比べていつも冷静で冴えた頭脳を持っているクラウドを羨ましく思いながらも嫉妬心を抱くほどだったのに、本性はこんな気違いじみた奴だったのかとショックを受けていた。
頭がイッちゃってる人間を君の大切な結婚相手に選んで良いのか?少なくとも毎日が激しい夫婦喧嘩で、アイリスは気苦労が絶えなく、悩み苦しみストレスを感じることは決まっている。あとはアイリスの精神がどれほど保てるかということになるが半年が限界だろう。最後にはアイリスが精神的に耐えられなくなって、短く不幸な結婚生活の末に離婚になるのは間違いない。ナタリアの親友にそんな辛く悲しい道はおすすめできないという思いだ。
「もちろんそんなことは百も承知しています。ですが私はクラウド様を心から愛してしまった……クラウド様が精神障害者でも問題ございません。クラウド様の頭の病気も最適な治療法を一緒に見つけます。私が王妃になって一生彼を支えてあげたいのです!」
アイリスはどんな苦労でも我が身に鞭打つ覚悟で、耐え抜くという殊勝な心掛けを持っているという。精神病のクラウドを回復するために積極的に取り組む姿勢をみせた。クラウドのことを大好きでたまらなくなって、愛情は生きている限り永遠に続くとアイリスは無限の愛があると話す。生涯最後まで真心を尽くしてクラウドの人生を支えて、クラウドのすべてを受け入れるという優しく理解するような顔で宣言した。
アイリスの本音を言えば、頭がおかしいクラウドは早々に殺してしまったほうがいいと考えている。王妃から女王になって国を支配してやろうというどす黒い欲望を抱いていた。国を乗っ取り貴族社交界の頂点に立って自分好みの環境を作り、男妾や側近に性的魅力にあふれた美男子たちを大勢はべらせて身の回りの世話は彼らにやってもらう。
アイリスが何か言いつけると性的魅力にあふれた美男子たちは、喜んでお引き受けいたします!と気持ちの良い笑顔で返してくれるように厳しく躾ける。そして厳格なルールによってアイリスを神聖な存在として神の如く崇拝するように指導していく。
「アイリス……君という女性はなんて綺麗な心を持ってるんだ……自分を疲労してもクラウドに永遠に消えない愛を誓うというのか……純粋無垢な君がそんな罰ゲームのような人生を歩んで言いわけがない……こんな素晴らしい女性がこの世に存在するというのか……あぁぁっ、うっうっ、あぅぅぅ……うわあああああん!!」
ラウルはアイリスの情熱に感激して自然と涙が流れていた。この世には目先きだけの優しい女性が何人いると思うというのか?数知れないだろう……だけど彼女だけは違う。真の愛情を持っている女性だ。ラウルは何やら切実にいきんでいる声を出し始めると突然泣き出した。
「あの、僕はアイリスと結婚するつもりは全くないよ」
クラウドは努めて冷静な表情を保ち平然とした声で言った。
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