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第3話
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夜会の会場である侯爵家のサロンに足を踏み入れた瞬間、私は自分の判断が愚かだったのか、痛感せずにはいられなかった。空気が、おかしいのだ。どこかひんやりと冷たく重く感じられた。その瞬間、集まっている貴族たちの視線が一斉に私に向けられ、その鋭さに胸が締め付けられるような感覚を覚えた。
視線はまるで柔らかな棘のように私を刺し、その中には好奇心、侮蔑、憐れみが混ざり合っていた。それらの視線が私に向けられるたびに、私は自分の誇りが静かに削られていくのを感じ、胸に重いものが残るようだった。
「まあ、いらっしゃったのね。イリア様」
聞こえてきた声に振り返ると、そこにいたのは、ふっくらとしたお腹を愛おしそうにさするロザミアと、その隣で庇うように立つエリックだった。
「……ええ」
「来てくれて嬉しいわ。あなたに、きちんと話しておかなければならないことがあるの」
ロザミアは、悲劇のヒロインのように、静かに涙を拭う仕草を見せた。その隣で、エリックは冷たく氷のような目で私を見下ろしている。かつて私に向けられていた甘く優しい眼差しは、もうどこにも見当たらなかった。
「皆さん、聞いてください!」
エリックが声を張り上げると、ざわついていた会場が静まり返る。全ての視線が、私と彼ら三人に集中した。
「本日、皆さんにお集まりいただいたのは、公爵令嬢イリア・フォン・クライストの罪を、白日の下に晒すためです!」
罪? 私の? 何を言っているのか理解できず、私はただ呆然と立ち尽くす。
「ご存知の通り、私はイリアとの婚約を破棄し、ロザミアを妻として迎えることを決意しました。その理由は、ただ一つ。このイリアが、私の愛するロザミアにした、あまりにも非道な仕打ちにあります!」
会場が一瞬にしてどよめいた。ロザミアが、涙をこぼしながら泣き崩れた。
「やめて、エリック様! イリア様は、悪くないの! 私が、私が至らなかったから……」
「ロザミア、君は優しすぎる! だが、真実を語らねばならないんだ!」
エリックは、まるで演技をしているかのように大げさな仕草でロザミアを抱きしめ、その後、冷たく再び私を指さした。その動作は、全てが計算されたかのように、周囲の視線を集めることになった。
「婚約破棄は、この女の浮気が原因だ! ロザミアは、悲しむ私に静かに寄り添い、温かい言葉をかけてくれた。この女は、私がロザミアを愛していると知るや、嫉妬に狂った! そして、妊娠している彼女の……この、お腹を蹴り上げたのです!」
―――は?
思考が完全に停止した。お腹を、蹴った? 私が? いつ、どこで? そんなことが、あるはずがない。婚約破棄を告げられてから、私は一度もロザミアに会っていない。彼女が私に触れるなんて考えられなかった。どうしてこんなことが起こったのか、全く理解できなかった。
「なんてことだ……」
「公爵令嬢ともあろう方が……!」
「人の皮を被った悪魔だわ!」
「こんな冷酷な行動、許されるはずがない!」
「その顔に隠された本性が見えた気がするわ!」
「まさか、イリア様がそんなことをするなんて……」
「あれほどの高貴な身分の方が……!」
周囲の貴族たちが次々と口を開き、私を罵り始めた。その目は、エリックとロザミアの言葉を一切疑うことなく、私を非難するものばかりだった。ああ、彼らは最初から、私を断罪するためにここに集まっていたのだと、私はようやく理解した。その瞬間、私は罠にはめられたことに気づき、胸の中に冷たい現実が広がっていった。
視線はまるで柔らかな棘のように私を刺し、その中には好奇心、侮蔑、憐れみが混ざり合っていた。それらの視線が私に向けられるたびに、私は自分の誇りが静かに削られていくのを感じ、胸に重いものが残るようだった。
「まあ、いらっしゃったのね。イリア様」
聞こえてきた声に振り返ると、そこにいたのは、ふっくらとしたお腹を愛おしそうにさするロザミアと、その隣で庇うように立つエリックだった。
「……ええ」
「来てくれて嬉しいわ。あなたに、きちんと話しておかなければならないことがあるの」
ロザミアは、悲劇のヒロインのように、静かに涙を拭う仕草を見せた。その隣で、エリックは冷たく氷のような目で私を見下ろしている。かつて私に向けられていた甘く優しい眼差しは、もうどこにも見当たらなかった。
「皆さん、聞いてください!」
エリックが声を張り上げると、ざわついていた会場が静まり返る。全ての視線が、私と彼ら三人に集中した。
「本日、皆さんにお集まりいただいたのは、公爵令嬢イリア・フォン・クライストの罪を、白日の下に晒すためです!」
罪? 私の? 何を言っているのか理解できず、私はただ呆然と立ち尽くす。
「ご存知の通り、私はイリアとの婚約を破棄し、ロザミアを妻として迎えることを決意しました。その理由は、ただ一つ。このイリアが、私の愛するロザミアにした、あまりにも非道な仕打ちにあります!」
会場が一瞬にしてどよめいた。ロザミアが、涙をこぼしながら泣き崩れた。
「やめて、エリック様! イリア様は、悪くないの! 私が、私が至らなかったから……」
「ロザミア、君は優しすぎる! だが、真実を語らねばならないんだ!」
エリックは、まるで演技をしているかのように大げさな仕草でロザミアを抱きしめ、その後、冷たく再び私を指さした。その動作は、全てが計算されたかのように、周囲の視線を集めることになった。
「婚約破棄は、この女の浮気が原因だ! ロザミアは、悲しむ私に静かに寄り添い、温かい言葉をかけてくれた。この女は、私がロザミアを愛していると知るや、嫉妬に狂った! そして、妊娠している彼女の……この、お腹を蹴り上げたのです!」
―――は?
思考が完全に停止した。お腹を、蹴った? 私が? いつ、どこで? そんなことが、あるはずがない。婚約破棄を告げられてから、私は一度もロザミアに会っていない。彼女が私に触れるなんて考えられなかった。どうしてこんなことが起こったのか、全く理解できなかった。
「なんてことだ……」
「公爵令嬢ともあろう方が……!」
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