妹に幼馴染の彼をとられて父に家を追放された「この家の真の当主は私です!」

佐藤 美奈

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26話 美しい顔を失った女たち

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ローラと継母は、法廷での騒動の後、病院へと運び込まれた。彼女たちが浴びた薬は、皮膚を溶解させる劇薬であり、二人の顔は見るも無残な姿へと変貌を遂げていた。激しい痛みと絶望に打ちひしがれる二人は、今やかつての美貌を完全に失って、醜い傷跡だけが残された顔を鏡に映し絶望の淵に立たされた。

「う、うわあああああああああああッ!!! 私の美しい顔が……! こんなの、嘘よ! 嘘だわ!」

ローラは、鏡に映る自分の醜い姿を見た瞬間、ショックで死にそうになって悲しげな断末魔のような悲鳴を上げた。かつて自慢だった美しい顔は、見る影もなく崩れて醜い傷跡だけが残っていた。彼女は、その現実を受け入れられず錯乱状態に陥った。美しい顔を失ったローラは、もう二度とかつての華やかな生活を送ることはできない。その絶望感は彼女の心を完全に打ち砕いた。

「もう、いやああああああああああっ!!! こんな…こんなのって……」

継母も自分の顔にびっくりして甲高い悲鳴をあげた。継母もまた、若い頃から美貌を武器に多くの男性を虜にしてきた。しかし、今の彼女の顔は見るに堪えないほど醜く、見る者の心を凍りつかせるほどだった。彼女は、鏡に映る自分の顔を前に心が再起不能に追い込まれる。美しい顔を失うことは、余命を宣告されるよりもショックだった。

継母は、震える手で自分の顔に触れ、現実を受け入れられずにいた。彼女は、初めて自分の犯した罪の大きさを実感した。ローラの愚かな復讐計画が失敗した結果、自分もまた取り返しのつかない傷を負ってしまったのだ。

特にローラは、自慢の美貌を失ったことで精神的に崩壊寸前だった。彼女は、かつてのように、美しい顔で男性たちを魅了することもできない。人前で顔を出すことは金輪際こんりんざいできないのだから。その絶望感は、彼女の心を完全に打ち砕いた。

「もう、何もかも終わり……私は、もう誰からも愛されない……」
「ローラ…ごめんね…私があの時、あなたを止めていれば……」
「この顔じゃ、生きるのが辛い…生きてる限り一生、私は苦しめられる……」
「私も、こんな無様で恥ずかしい顔では…二度と人に顔を晒すことはできないわ……」

ローラは、泣き叫んで自暴自棄になった。彼女の心は、絶望の毒に侵され心身ともに崩壊寸前で正気を保てなかった。彼女は、自分の醜い顔を憎んで鏡を叩き割った。この顔では、生きている限り永遠に自分自身が苦しめられることは確定している。

継母もまた、深い後悔に苛まれていた。もし、あの最初の時にローラを止められていれば、こんなことにはならなかったかもしれない。しかし、後悔しても何もかも遅かった。二人は、心だけでなく美しい顔まで醜く歪んでしまった。

二人は、醜い顔と後悔の念を抱えながら、孤独な生涯を送ることになるだろう。かつて、美貌と贅沢な暮らしを謳歌していた二人に残されたのは、自業自得の報いだけだった。彼女たちは、自らの愚かさのせいで未来を閉ざされ、絶望の中で過去を悔やみ続けることだろう。

ローラと継母は、いくら泣いても泣ききれない底知れぬ絶望と悲しみ味わう。すごい美人で有名な母と娘は、美しい顔を失って精神的な衝撃で生きる気力をなくしてしまった。

「お母様、人と顔を合わせなくても生きていけますよね……」
「そうね、ローラ…これからは、人と話すことも関わることもやめましょう……」

母と娘は互いに話し合って落としどころを見つける。美しい顔を失ったけど開き直って生きるのもあるだろう。人に会って話すことなど一切やめて、人と関わらないで人目を避けて生活すればいい。

それが正しい選択かは分からないが、他人に顔のことで何か言われて精神的ストレス苦痛を受けるくらいなら、人と関わらないほうが他の何よりも大切な自分自身が安らかに、平和な心で穏やかに日々を過ごすことができるだろう。
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