婚約したのに好きな人ができたと告白された「君の妹で僕の子を妊娠してる」彼に衝撃の罰が下される。

第37話

「テリー！」
「――アリスなのか！？」
「少し見なかっただけで愛する妻の顔を忘れちゃったの？」
「そ、そんなことはあり得ないよ！いつもアリスのことを考えていた……僕は本当に寂しかった……」

その日の夕方遅くになって、聞き覚えのある声がテリーの耳に飛びこんできた。半年ぶりにアリスの顔を見た時は、体に稲妻いなずまが走ったような衝撃的な気持ちだった。

最初は驚きすぎてテリーは言葉が出てこなかったけど、とにかく嬉しくて無上の喜びを感じながら二人は抱き合う。いつも早く帰ってきてくれと、泣きながら心を焼くように芯しんから惚ほれ抜いていた妻がやっと戻ってきてくれた。


「――大変だったね……」
「そうなのよ！私と駆け落ちした男は間抜け過ぎるわ。話しかけてきた親切そうな男に騙されて、お金を全部取られちゃったんだからっ！！」

その後しばらく、アリスの話を聞いた。テリーは特に熱心な顔で相槌あいづちを打ちながら、アリスの気持ちに寄り添っていた。アリスは男と駆け落ちして数日後には、話しかけてきた人の良さそうな男に騙されて、寝ている間に所持金をみんなまとめて奪われたそうだ。

「それからどうしたの？」
「お金がないから貧乏そうな家に住んでいたわ……私の大好きなお菓子が食べられなくて辛かった……」

テリーはアリスを労いたわるような優しい声で問い掛けていた。お金が無くなってしまったアリスと男は、格安料金で提供しているボロ屋に飛びついて住み始めたらしい。アリスは、眉間みけんに細い皺しわを寄せて真面目まじめな顔で一生懸命な目で語った。

アリスは家にいるだけで少しも働かなかったが、男が過酷な肉体労働をして日々を食いつないでいた。アリスは王宮にいるときには、好んで食べていた高級なお菓子が食べられなくて、とても辛かったと悲しそうな顔でつぶやくのです。

「……ひどい！……アリスに苦しい生活させるなんて信じられない……」
「そうでしょ！ほんとひどい男で呆れたわ……」
「僕はその男が許せないな!!!」

テリーは素早く同意しました。愛情が胸からあふれる可愛い過ぎる妻に、乞食こじきと隣あわせみたいな暮らしをさせて許せない！と顔が赤くなるほど怒っていました。

「だからねぇ～、私は貧乏生活に耐えられなくて……逃げてきたの」
「そうなんだね……でも帰るのにお金はあったの？」
「それなら大丈夫。あいつが寝ている間に昨日の給料をあるだけ全部とってきたからね」
「そうか、それは良かった。今日は疲れただろうからゆっくり体を休めてね」
「テリーありがとう」

アリスは、男が日雇いの解体工などで働いたきつい仕事の給料を少しも残さずに奪ってきたらしい。男が疲れて寝ている間に、全部とって逃げてきたと嬉しそうに話す。

テリーは、よく頑張ったねとアリスを褒めました。そしてアリスの体が一番大事なので、まずは疲労を回復してほしいからゆっくり静養してねと、優しい目で見つめながら心から同情する口調で涙を浮かべて言った。