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第38話
毎日のように二人は親しげに挨拶を交わし合っていたので、彼も自分のことが好きかもしれないという思いがソフィアの心の中にあった。仲良くなっていろんな話を聞いたりしたので、間違いなく嫌いじゃないことは確信している。
ソフィアはきっと両想いに違いないと信じて、それなりの勇気と覚悟を持って告白する決断をした。家の意向に沿って蝶よ花よと育てられた箱入り娘で純真無垢なお嬢様が、生まれて初めて自分の意志で一歩踏み出した瞬間だった。
(今日の放課後に手紙を渡そう)
その日ソフィアは朝から妙に弾んだ気持ちで胸をときめかせていた。学園に勤務する事務職員の男性に恋をして、思いきって自分の想いを告白する手紙を書いた。ソフィアは放課後に手紙を渡して次の日に返事を聞かせてほしいと考えていた。
その時、教室内にいる同級生たちの会話が聞こえてくる。
「え!?事務のお兄さんと付き合ってるの?」
「うん」
「あの格好いい人だよね?爽やかな笑顔で隠れファンが多い」
そう遠くないところにいたので自然に聞こえるが、ソフィアは聞き逃さないようにじっと真剣に聞き耳を立てていた。彼女たちはソフィアの気持ちなど知らないので、まったく遠慮することなく笑ったりして楽しくおしゃべりしていた。
「凄いじゃない!」
「さすが学園一の美少女!」
「でも秘密だから大きな声で言わないでね。彼に迷惑がかかるし……」
「わかってるよ」
親しい友人同士のようですが、付き合っていることは秘密にしていたらしく驚いて歓声を上げる。女子高であるうえに表向きには男女交際禁止という厳しい校則がある。学園の外でも同じで登校する時や下校する時に、他校の生徒や不良にナンパされても無視するようにと指導されている。
だからといって恋に好奇心旺盛な若い子に恋愛禁止のルールがおとなしく守れるはずはなく、実態は周りに内緒で付き合ってる子も普通にいた。本来なら生徒の模範となるべき教職員が生徒と交際してる事が発覚したら、大騒ぎになることは火を見るよりも明らかなことだ。
まず噂が本当なのかと他の教職員たちから厳しく詰め寄られ、認めれば悪を断罪するかのような総攻撃によって徹底的に叩かれる。その後は教職員に容赦のない処分が下されると予想される。過去に生徒と交際が公に知られた教職員は資格を剥奪され学園から追放処分を受けた。
(そんな……嘘でしょ?)
ソフィアは絶望的な気分にさせられるばかりで暗い顔でうつむいていた。彼女たちはソフィアとは対照的な明るい笑顔で、大いに盛り上がっているらしく賑やかな話し声は教師が入ってくるまで続いていた。
両想いだと思っていたのはソフィアだけでした。事務職員の彼には半年付き合っている彼女がいた。しかも学園で一番の美人と呼び声の高いシャーロットというクラスメイトだった。
誰もが一度は悲しい恋を経験するものだ。しかし、彼女のように純粋に人を想う気持ちは、とても美しく、大切に思える。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
この物語を、皆さまと共有できたことが何よりの幸せです。
またどこかの物語でお会いできますように。
ソフィアはきっと両想いに違いないと信じて、それなりの勇気と覚悟を持って告白する決断をした。家の意向に沿って蝶よ花よと育てられた箱入り娘で純真無垢なお嬢様が、生まれて初めて自分の意志で一歩踏み出した瞬間だった。
(今日の放課後に手紙を渡そう)
その日ソフィアは朝から妙に弾んだ気持ちで胸をときめかせていた。学園に勤務する事務職員の男性に恋をして、思いきって自分の想いを告白する手紙を書いた。ソフィアは放課後に手紙を渡して次の日に返事を聞かせてほしいと考えていた。
その時、教室内にいる同級生たちの会話が聞こえてくる。
「え!?事務のお兄さんと付き合ってるの?」
「うん」
「あの格好いい人だよね?爽やかな笑顔で隠れファンが多い」
そう遠くないところにいたので自然に聞こえるが、ソフィアは聞き逃さないようにじっと真剣に聞き耳を立てていた。彼女たちはソフィアの気持ちなど知らないので、まったく遠慮することなく笑ったりして楽しくおしゃべりしていた。
「凄いじゃない!」
「さすが学園一の美少女!」
「でも秘密だから大きな声で言わないでね。彼に迷惑がかかるし……」
「わかってるよ」
親しい友人同士のようですが、付き合っていることは秘密にしていたらしく驚いて歓声を上げる。女子高であるうえに表向きには男女交際禁止という厳しい校則がある。学園の外でも同じで登校する時や下校する時に、他校の生徒や不良にナンパされても無視するようにと指導されている。
だからといって恋に好奇心旺盛な若い子に恋愛禁止のルールがおとなしく守れるはずはなく、実態は周りに内緒で付き合ってる子も普通にいた。本来なら生徒の模範となるべき教職員が生徒と交際してる事が発覚したら、大騒ぎになることは火を見るよりも明らかなことだ。
まず噂が本当なのかと他の教職員たちから厳しく詰め寄られ、認めれば悪を断罪するかのような総攻撃によって徹底的に叩かれる。その後は教職員に容赦のない処分が下されると予想される。過去に生徒と交際が公に知られた教職員は資格を剥奪され学園から追放処分を受けた。
(そんな……嘘でしょ?)
ソフィアは絶望的な気分にさせられるばかりで暗い顔でうつむいていた。彼女たちはソフィアとは対照的な明るい笑顔で、大いに盛り上がっているらしく賑やかな話し声は教師が入ってくるまで続いていた。
両想いだと思っていたのはソフィアだけでした。事務職員の彼には半年付き合っている彼女がいた。しかも学園で一番の美人と呼び声の高いシャーロットというクラスメイトだった。
誰もが一度は悲しい恋を経験するものだ。しかし、彼女のように純粋に人を想う気持ちは、とても美しく、大切に思える。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
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またどこかの物語でお会いできますように。
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