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家族で写っている宝物の写真の変わりに、父と母と赤の他人のエマが顔を寄せ頬をくっつけ合って喜びいっぱいの笑顔を見せていた。

縁もゆかりもない平民の子供と公爵家の当主と夫人が、一緒に写っているなんてまずあり得ないこと。父と母がエマをただ受け入れているだけではなく、自分達の本当の子供みたいに可愛がっている事実が苦もなくイメージが浮かぶ。

「大丈夫ですか!」
「リディアお嬢様どうか気をしっかりお持ちくださいませ」
「休息を取られたほうがよろしいかと……」
「心配しないで」

突然めまいが生じて、一瞬クラっと頭が揺れる感覚を覚える。同時に足元がふらつき倒れそうになりましたが、メイドがとっさに身体を支えてくれました。

ただならないリディアの様子に、憂わしげな表情で不安そうな目つきになるメイド達。憔悴しきった顔のリディアに、一旦休憩に入り疲労を癒してほしいと説得します。

気にして悩むメイドにリディアは、不安がらせて悪いという風に返事をした。気丈に振る舞っていますが、それは強がりで強烈な頭痛は途切れることなく維持されリディアを苦しめる。

その瞬間、ふっと気が遠くなりそうな感じになってリディアは気を失う。


「私の中でかけがえのない物は全てあの子に取られたのね」

意識を取り戻すとベッドの上でした。リディアが学園で寮生活する前まで暮らしていた自分の部屋。この場所には大事に思っている物がたくさん詰まっている。

記憶では綺麗に整頓されていたはずの本や服が散らかし放題。その上、お菓子などの食べかすを所々に落としている。この部屋でエマは隠れてお菓子を食べることは日常茶飯事でした。

「家が乗っ取られている……このままではいけない。早く何とかしないと……」

そしてエマが自分の宝物のペンダントを持っていたわけだから、そういう事かと頭の中で霧が晴れていくように疑問が解けていく。ネックレスもこの部屋で見つけて奪ったのだろう。

幸いなことに、リディアが気絶する直前にエマは制裁されていた。家を害して堕落した生活をしていた悪魔と呼ぶのも生易しい子供。

完膚なきまでにお仕置きされ、滅ぼされたことを思い出して胸のつかえが取れる。ほのぼのとした心の安らぎに浸るリディアは、嬉しさが湧き上がり喜びの感情を抑えられなくて無邪気に微笑んだ。

「そうだわ、あの悪魔はもう成敗された」
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