王子に婚約破棄されて国を追放「魔法が使えない女は必要ない！」彼女の隠された能力と本来の姿がわかり誰もが泣き叫ぶ。

第1話

「クロエ・エルフェシウス！お前との婚約を破棄させてもらう！！」

ディオール帝国で帝立魔法学園の創立記念パーティーが開かれ、国を代表する多くの文化人や著名人が参加した。パーティーは滞とどこおりなく進められ、何も問題はないように思われた。しかし雰囲気が盛り上がっていた時に、ガブリエル王太子殿下が信じられないことを会場全体に響ひびき渡る大声で言った。

「ガブリエル殿下、突然どういうことでしょうか？」

クロエ公爵令嬢は分からないという表情で首を傾かしげる。その言葉が理解できるはずもなかった。何故なら、ほんの数週間前に両者は婚約内定していたのだ。

招待客の誰もが、なにか予想外の事態が進展していると感じて、落ち着きを失ってざわざわと騒ぎ始める。心は楽しい気分に満ちていて無邪気むじゃきな笑顔になっていたが、急に不安を抱いた顔に変わった。

「愛しくてたまらないアンジェリカを権力をふりかざし、さんざん弱い者いじめをしてきたことは全てわかっているぞ！申し開きはあるか？」
「全く心当たりがございません」

ガブリエルの隣には女性がいて、二人は恋人同士みたいにぴったり寄り添っている。幼馴染のアンジェリカ男爵令嬢が、目に涙を浮かべながら非難するような表情で睨んでいた。

クロエから日常的に、アンジェリカは何度も陰湿ないじめを受けるうち、情緒じょうちょ不安定な状態になったらしい。ガブリエルは筋の通らないことを強く主張するのである。

「うわあああああああああああん!!!」

アンジェリカは大げさな身振りで悲痛な声をふりしぼった。ガブリエルは彼女の体に腕をまわして優しくそっと抱き寄せて、しっかりと抱きしめたまま甘い言葉を耳元でささやいて安心させた。

「アンジェリカに涙を流させおって……本当にどこまでとぼける気だ！」
「私はアンジェリカさんと初めて会いましたよ？」
「黙れ！それならアンジェリカが嘘をついていると言うのか！！」

胸がいっぱいになるほど愛しているアンジェリカが、肩をふるわせて泣きじゃくっている。ガブリエルは怒りで胸が締め付けられて、腹立たしさを覚えて睨みつけたのです。

クロエがしらばっくれているとでも思ったのか、威嚇いかくするような顔で攻撃的な声を放った。それに対してクロエの声はあくまでも冷静さを保っていた。

ですが、アンジェリカのけたたましい泣き声で頭に血が上ったガブリエルは、感情にかたよった有無うむを言わさぬ口調で話にならない。最初から最後まで一貫いっかんしてアンジェリカを擁護ようごする立場を取り続けた。

その時、何か案を思いついた顔になったガブリエルは、唇くちびるに気持ち悪い笑いの影を見せて言う。

「お前がアンジェリカに嫌がらせを繰り返した正当な理由があるではないか？」