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第14話

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「――今から20年前は、この国は先のない暗い未来に悲観ひかんして、全ての国民が絶望の中にいました。国民は毎日生活に苦しんで、自分たちの運命に不安と恐怖を抱いて崩れていった」

エリザベスは絶望的な状況を受け入れながら、これまでのディオール帝国の悲しみの歴史を語り始めた。当時のエリザベスは、いつも底知れぬ辛さで暗い深刻げな表情を浮かべていた。

弱い国なので、アリのように全力であがいても意味がなくて何もできなかった。目の前で誰かが苦しんで傷ついていても助けることができなかった。とうに一滴いってきの涙もれ果ててしまっている。

エリザベスは国民を守れない無力な自分が、女王として情けなくて仕方がなくて心苦しい思いでした。日常的に外国人に侵害されていき、この国は救いようがない暗黒あんこくの中に沈んでしまったのである。

「その状況を見た神が可哀想かわいそうでならないと慈悲じひの心を感じて、私たちを助けてくれたのです。暗い海の底にも光がしたことに私は喜びで震えました」

だが、神はディオール帝国を見捨てなかった。奇跡きせきが起こって国民が次々と魔法が使えるようになったのです。そして弱者と強者は簡単にひっくり返る。エリザベスは少し笑顔になって明るい声で言った。

「お、お母様は神と話ができるのですか……!?」
「そんなすごいことはできません。ただ、神のおげを何度か受けたことはあります」

神が助けてくれた……。ガブリエルは母の言葉に激しく反応する。母は神と対話ができるのか?交信のような連絡を取り合うことができるのか?

エリザべスは興奮こうふんしてる息子を落ち着かせるように、目を見つめてゆっくり話した。いわゆる神からの啓示けいじを受けていた。とわいえ、神による一方的なものにすぎず、エリザベスのほうからは連絡は取れなかった。

「それなら、神に願えば魔法が使えるようになるのではないですか?そのことを今から国民に伝えて全員で天に向かって祈りましょう!」

ガブリエルは顔が活気にあふれている。だったらもういっそのこと、ディオール帝国の国民が皆揃みんなそろってやったほうがいいと話して、直ぐに大規模だいきぼな集会を開いて神に頼むべきだと強く主張した。

「たぶん、無理だと思います」
「え……?お母様、それはどうして……?」
「私も国に帰ってきてから、ずっと神に願っていますが何も返事がないのです」

息子の考えるような浅知恵あさぢえでは、とても無理だろうと思わず言ってしまう。なんで?良い考えだと思ったのにな?ガブリエルは不思議そうな声をしてエリザベスに視線を向けて言う。その問いには反射的に答えてくれた。実を言うとエリザベスは、国に戻ってきてから魔法が使えないことがすぐにわかった。

国に一歩足を踏み入れると奇妙きみょうな違和感を覚えたのだ。よく見ると国をおおっていた結界けっかい魔法が消えていた。さらに何よりも大切な国民を守るために、エリザベスが苦労して作った非常に頑丈がんじょうな造りの防御壁ぼうぎょへきも無くなっていたのだ。

これはであると直感したエリザベスは神に祈った。今も願い続けているが、現在にいたるまで神からの連絡はないと悲しそうに言った。

「ですが、今まで何度か神の声を聞いていたわけですよね?」
「そうですね……」
「神は何と言っていたのですか?」

今だに母は神とつながらないらしい。先ほどと違ってガブリエルの声には、少し寂しくて切ない思いが感じられる。彼は心が折れてはいのような顔色になっていた。しかし次の瞬間、再び完全復活をげる。

「……一番最初の神の言葉は、使者ししゃとして送ったから大切にしろと……」
「え?……この国に神の子供がいるのですか……!?それを早く言ってください!!お母様もお人が悪い。娘だから女性ですね!!!それなら早くその神のお嬢様に助けていただきましょうっ!!!!!」
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