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第25話

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「どうやら僕たちが眠っている間にイリスは帰ったみたいだ」

寝てる間にイリスは置き手紙を残し、ホテルを去り家へ帰ってしまった。

ハリーから言われてその手紙を見せられたエレナは、自分がおかれている状況を正確に把握し、無表情な横顔で黙りこんでいたが体が震えて止まらない。

「エレナ?」

エレナの様子がおかしい?そう感じたハリーは心配そうな表情で、隣にいるエレナの顔を覗き込んで見た。

「エレナしっかりしろ!」

ほとんど白目をむいて口を開けたままのエレナは、意識もないような状態だった。そんな可哀想な姿にハリーは無残なほど痛ましい思いで大いに同情し、悲痛な叫びを発して両腕に引き寄せると強く抱きしめる。

ただ純粋にエレナを元気付けたかったのもあるが、守るべき対象の存在を確認するかのように包み込んだ。そしてエレナの安全を脅かす者に対しては、全力で立ち向かうとハリーは戦う決意を固めた。


「もうお前は息子ではない。縁を切るからエレナ嬢と好きにしなさい」
「え?」

家へ帰りつくと直ぐに父である国王と面会して話した。ハリーは大まかに事情を説明し、隣に座っているエレナは不安げな表情を浮かべている。

だが父からは無慈悲な決断を下された。ハリーは絶縁宣言を叩きつけられてしまう。

「イリス嬢には出来る限りのことはするが、お前には協力はしない」

先にイリスから詳しく事情を聞かされた国王は、いくら息子でも妥協を許さぬ厳しい態度で接したのです。

「お父様、待ってください!」
「その者を叩き出せ!もはや息子ではないから遠慮することはないぞ!」
「どうかお許しを……」

少し前にイリスが直接訪問してきた時はとても驚いた。何故ならば息子のハリーと新婚旅行の真っ最中だということを思い出したのだ。

その不自然さに疑問を持った国王は、迷うことなくイリスと顔を合わせ会話を交わす。新婚旅行に息子の幼馴染が一緒についてきた?にわかに信じがたい言葉を告白されて頭が混乱した。

「それは本当なのか?」
「はい、真実でございます」

まさか自分の息子に限ってそんなことはあり得ないだろう?だがイリスが嘘をつく理由もない。誰からも好かれる誠実な人柄のイリスを知っていて信頼している。

「イリス嬢が善良な性格の持ち主であると分かっているが、息子の話も聞かねばならない」
「まことに当然のことだと思います」

常に冷静な判断力を持つ国王は、片方だけの主張を無条件に受け入れることはできないとイリスに伝えた。そしてハリーが帰ってきてから両方の話を聞いて、正しい判断を下すことが必要であると述べた。
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