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第31話

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「許しません!当たり前の事ですよ。カトリーヌさんは私の家に侵入しんにゅうしてきたぞくなんです」
「……ど、どうか命だけは……お、お願いします……」

アリーナの目はるぎのない厳しさがある。カトリーヌは押しこみ強盗ごうとうの類で火魔法を発射しようとした。これは極めて悪質で同情すべき点はなかった。

カトリーヌは半泣きの状態で必死に訴えている。助けを求めて悲しい声で、自分の人生にピリオドを打たないでください、お願いいたしますと頼んでいた。

「それにレオナルドの病気を回復することは、もう二度と出来ないんですよ?」
「え……?それはどういうことですか……?」

次の瞬間、衝撃しょうげきの発言がアリーナの口から飛び出した。レオナルドの病気は絶対に治せないと言うのだ。そして真剣な顔で黙ってカトリーヌを見つめるのです。

その言葉にカトリーヌは、戸惑とまどうような複雑な表情を見せた。自分の耳が信じられなかったのである。アリーナの言葉がならカトリーヌは何のために来たのか?ということにもなる。

「私は世の中をめぐりながら、今までに何万人の病気を回復してきました」

アリーナはこれまでに、国内のみならず世界各地を回って病気で苦しんでいる人を治療ちりょうしてきた。それが人々から神の女性と信仰しんこうされる理由で、彼女は対価を要求することもなく純粋じゅんすい善意ぜんいおこなっていた。

「……よく存じております。この世界の救世主きゅうせいしゅアリーナ様は神で素晴らしい女性です!!」

ここぞとばかりにアリーナを持ち上げてたたえている。白々しいお世辞を言ったりするなど、最上クラスの魔法師であるカトリーヌはすごく苦手で、びを売るような人に嫌悪けんお感さえ持っていた。

今は自分の命が助かるかギリギリのラインですから、そうも言ってられません。お世辞と言うものは、相手を喜ばせることよりも自分の身を守るために、必要なことなんだなあと何となく理解したのであった。

とは言ってもカトリーヌの本心は、アリーナのことを偽善ぎぜん者として非難ひなんしていた。熱心に世界を飛び回って無償むしょうで赤の他人の病気を治してばかみたい!とんだ猫かぶりだわ!と様々な労働に取り組んでいる彼女のことを浅ましいと思っていたのです。

「私が病気を治した人の中には、レオナルドのような人も残念ながら少しはいるんですよね……」
「……ひどい!……アリーナ様にただで体を回復してもらっておきながら、感謝を忘れる人がいるんですね。本当に信じられません!!あきれてしまいますわ……そんな最低な人は死んでも仕方ないですっ!!!」
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