リュウのケイトウ

きでひら弓

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リュウのケイトウ レガシィ 33 激突

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サレヒュトはもう一度
カップへ一口。
思考を刺激する
深い苦味を味わうと
テーブルへカップを戻し
話しを続けた。

『国王、アグレイトからの
直々の命令なんだ。
断る選択肢は無かった…。』

慧人は大して間も置かずに
表情一つ変えずに応える。

『自分もお供しますよ。』

慧人の表情とは反対に
サレヒュトの顔は険しい物に
なっていた。

『どうして……。

慧人、お前はこの任務の
危険性を分かって無いようだな。』

サレヒュトの目元が更に
鋭さを増した。
しかし、慧人はそれでも
態度を崩す事は無かった。

『いえ、
分かっていて尚、
追て行くと言ってるんです。

それともサレフは一人で
行くつもりなのですか?。』

今度は慧人の視線にも
力が入る。
サレヒュトを見つめる目には
真摯な答えを促す迫力が
こもっていた。

『ああ、それ以外に無い。
この作戦は無謀過ぎる。
作戦ですら無い。
自殺しに行くようなもんだ。

兄貴の言い分も解る。
今回これだけの竜の被害が有って
巣の場所が特定出来れば攻略しない訳にも
行かないって事も。

だが、俺たちはハガイドスを見ている。
あんな物が幾つも存在するかも知れない
場所へのこのこ乗り込もうってんだ、
そりゃもう攻略の手立てなんて
考えつく筈もねぇ。』

サレヒュトの力こもる意見にも
動じる事なく
慧人は自分の意見を曲げようとは
しなかった。

『それこそ単騎だったら自殺です。
だから自分も行くんです。
貴方を一人で簡単に死なす訳には
行かないから。
貴方は村、いえ
この時代のこの世界に必要な人間です。
喪う訳には行かないんだ。』

サレヒュトも慧人の提案を
受け入れようとはしない。
それはお互いを慮って(おもんばかって)の
事だったからだ。

『ダメだっ!。
お前には生き残って村の者の事を
頼みたい。
お前にしかこんな事は頼めねぇ。
慧人こそ世界には必要な人間なんだよ。』

二人がお互いの感情を
ぶつけ合うように熱のこもった
話しをしていると
ふと、シャツの裾を引かれる感覚。
いつの間にかレヴィアが
二人を見上げるように
ニコニコと微笑んでいる。

『大丈夫がぅ。
その為にレヴィアが来たがぅ。

みんなを死なせない為に
これから案内する場所に
その答えが待ってるがぅ。
だから今はお互いを責めないで。

今しか味わえない時間を
満喫して。

明日、答えの解る場所に
皆んなを連れて行くから。

二人共大好きだから。
お願い。    がぅ。』

レヴィアは二人の腰に
腕を回すと子供とは思えない力で
二人を引き寄せその間へ
顔を埋める。

慧人とサレヒュトは
間近でお見合い状態になり
冷静さを取り戻すと
お互い照れ笑いを浮かべて
レヴィアを撫で始めた。

『分かった。
レヴィア、明日になれば
答えが見つかるんだね。』

慧人から話し出す。
レヴィアはしっかりと頷いた。

『そうか。
しかし皆にはこの事を
知らせて置かないとな。
夜、食事の席で話す事にするよ。

今度は感情的にならないから
レヴィアも安心してくれ。』

サレヒュトの言葉に
レヴィアはもう一度頷いた。

『レヴィア、ありがとう。』

慧人はレヴィアの頭を
もう一度優しく撫でた。

『がぅぅぅ…。』

レヴィアが顔を二人の腹の間へ
もぐる様に擦り付けた。

『ところで、レヴィア。
川で泳いでたんだろう。

シャツとズボンがビシャビシャに
なっちまったな。』

もう、慧人とサレヒュトの
表情には暗い影は落ちていなかった。

『このまま
自分等も川で遊びましょう。
行こうレヴィア。』

『そーすっか。
ほれ、行こうレヴィア。』

慧人とサレヒュトは
レヴィアの手を引いて
川の方へ歩き出した。

『がう~うぅぅぅぅぅ~。』

二人に手を引かれるたレヴィアは
はしゃぐ様に
何時ものがぅーの咆哮とともに
駆け出して満面の笑みを作るのだった。
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