リュウのケイトウ

きでひら弓

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リュウのケイトウ レガシィ 34 永久の想い

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慧人は滝の脇にある森全体が
見渡せるような
大きな岩へ腰掛け
子供達の喧騒を耳に
水の流れ、風のそよぎ、木々の香りを
五感で堪能する。

ひとしきり全身でその感覚を味わうと
静かに瞼を閉じ
無心になる。

しばらく瞼を閉じていると
直ぐ隣に気配を感じる。

慧人は思う
その気配の主の事を。

こんなに近寄られるまで
気配を隠せる者は
知る限り一人しか居ない。

『レヴィア、遊び疲れたか?。』

慧人は空を仰いだまま
優しい声をその主へ掛けた。

『けーと、見て。』

慧人は言われた通りに
視線をレヴィアの瞳に
向ける。

『これ。』

慧人の視線を誘導するように
掌で大事に包むように持つ物を
レヴィアが差し出す。

慧人が掌の中の物へ
視線を移す。

そこには
濃い透き通った紫色の輝きを放つ石が
乗せられていた。
(あの石に似ている。
いや、間違いない
この石は大界紫(たいかいし)。)

『これは…。
綺麗な石だね、レヴィア。』

石からレヴィアの瞳へ
視線を移し優しく声を掛ける。

『うん。
これ、けーとにあげるがぅ。』

『くれるの?。』

『がうっ!。
さっきあげた鈴に一緒にくっ付けて。』

慧人は首から下げられる
お洒落なデザインのペンダント状の鈴を
外し裏を向けると
丁度、その石がはめ込める程の
窪みがある事を見つける。

『ここにはめ込むのか、ぴったりだな。
うん、コレは良い。』

慧人がペンダントを掲げ
レヴィアへ石をはめ込んだ
部分を見せた。

『今度はこっちが表だからね。
ほら、とっても綺麗がぅ。』

慧人の手からペンダントを取ると
レヴィアは背伸びをするように
慧人の首へペンダントを掛けた。

『とってもカッコいいがぅ。』

レヴィアがニッコリと慧人へ
微笑む。
慧人は一言笑顔で返す。

『そうかい。』

『がうっ!。』

レヴィアはしっかり頷くと
何やら自身のショートのズボンの
ポケットを漁り出した。

『これ、
同んなじの。見て。』

レヴィアの手には
お揃いのペンダント。
紫の石もはめ込まれている。

『けーとがレヴィアに掛けて。』

慧人はレヴィアから
ペンダントを受け取り
レヴィアの首へ手を回す。

レヴィアは慧人の顔が自身へ
近づくと慧人の首へ手を回し
顔を引き寄せ瞼を閉じた。

『っ、ちゅっ!。』

レヴィアが自身の唇を慧人の唇へ
静かに触れさせる。
慧人は身じろぎ一つせずに
レヴィアのキスを受け入れた。

其れは一瞬だっただろうか。
或いは…。
しかし二人にとってその瞬間は
永遠に思えるもの。
永久に(とこしえに)刻まれた
想い。
レヴィアにとっては待ち焦がれた時。
慧人にとっては引き寄せ
訪れた刹那。

言葉を発せず
見つめるままの慧人に
レヴィアは伝える。

『おまじない。フフ  がぅ。

ずーっと見てたから。
慧人の事ずーっと見てた。

それがレヴィアの仕事だった。
でも、慧人の事を見てるうちに
目の前で会ってみたくなったがぅ。

サレヒュトの運命を変えて欲しいと
願われてそれを叶えられるのは
慧人しか居なかった。

だから慧人をこっちに
呼ぶ事にしたんだがぅ。

そして、その時は訪れた。

トレイトに慧人がマナを奪われ
スキル、ジャンプ オーバー ザ ワールドを
発動した時レヴィアも同時に
スキルを発動した。

レヴィアのスキルパワーが無かったら
あの子達だけのスキルでは
此処へ辿り着けなかったがぅ。

ほんと良かった。
レヴィアの想いが通じて。

そして慧人はもう
居なくならないよ。

レヴィアずーっと一緒。
ずーっと一緒に居るの。』

レヴィアは微笑みながら
自身の想いのありったけを伝えた。
慧人はレヴィアの瞳を捉えたまま
一言。

『ありがとう。』

そう答えると
レヴィアの想いに返すように
柔らかく微笑むのだった。
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