リュウのケイトウ

きでひら弓

文字の大きさ
7 / 188

7団らん5温もり

しおりを挟む
風呂場での一悶着の後、慧人は自室に戻り就寝の段階で悟りの境地に赴く事になる。
壁格納式のベッドがホテルさながらにベッドメイクされていたのだが、ベッドのサイズがクイーンサイズだったのだ。
つまりは、ドアのノックと共に
『来てしまいました。
おじゃまします。』
『迩椰も慧人と一緒に寝る。』
レースをふんだんに使ったナイトウェア。見えてはいけない部分だけ辛うじて隠れているネグリジェのティタを右手に、
可愛いらしいパジャマ姿の
迩椰を左手に。
済し崩しの事態は慧人の意向などお構い無しにすんなりと自分達の有り得る場所を此処ぞとばかりに主張するようにすっぽり収まる左右の二人。
慧人は両手に花の川の字状態を受け入れ、しかしながら歓喜するでもなく天井より遥か上空を眺めるかのごとく想いを馳せる顔持ちを作っている。
慧人にはこんなにも気を許している二人に対して色欲に溺れるような感情が湧いて来る事は無い。
それは全てあの日の出来事に
集約している。
慧人の腕の中、目を潤ませ上目遣いのティタは少し震える掌の熱を伝えている。
『今日だけで良いんです。
あの日みたいに三人で…。』
『ああ、そうだな』
ティタの懇願に慧人はただ一言、返事を返したのみだった。
今この微睡みの間だけは、
三人の忘れる事の出来ない
あの夜の光景が蘇える。
恐怖を払い退け護った家族と
同等の掛け替え無い命。
三人、身を寄せ互いの温もりで
やっと心を保つ事が出来た
眠れぬ長い暗闇の時間。 
朝の光が射し、ようやく悪夢を
断ち切ってこの世界に帰してくれるまでのあらましを。

慧人は瞼を閉じ二人の息使いと
体温を感じている。
迩椰は無垢な寝顔で慧人の
腕の中、夢の世界を
堪能している。
ティタは二人の息使いと
慧人の温もりを首の裏から
全身にまで感じ、
今ここに一緒にいられる
喜びと感謝を生涯忘れる
事が無いと自分に誓い、
この幸せなる時間が
望むべくならば永久(とこしえ)に有って欲しいと神に祈るのだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

弁えすぎた令嬢

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
 元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。彼女が父親を亡くしてからの爵位は、叔父(父親の弟)が管理してくれていた。  彼女には亡き父親の決めた婚約者がいたのだが、叔父の娘が彼を好きだと言う。  彼女は思った。 (今の公爵は叔父なのだから、その娘がこの家を継ぐ方が良いのではないか)と。  今後は彼らの世話にならず、一人で生きていくことにしよう。そんな気持ちで家を出たコロネだった。  小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

処理中です...