リュウのケイトウ

きでひら弓

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15色付く日常8スーツ

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慧人はθuを操作し自分のシミュレーション過程の見直しを
モニターしていると、
程なくして自分に近付く気配を
感じ顔を上げた。
(何時もなら、相手にこれ程 
接近される前に気づく所、
久しぶりの操縦と
θuのモニターで、
周囲への警戒が疎か(おろそか)
になっていたのだ。
(この場所のセキュリティの高さと
ミゥへの信頼で安心感も
有ったかもしれないが)
『す、済まない。待たせたか?』
ミゥの幾分の羞じらいと仕草で、
予期せぬデートの待ち合わせ風景
にも似た画面(え)が出来上がって
しまっていた。
ミゥの立ち姿を視界に捉え
その艶(あで)やかさに
数秒フリーズしたのち
『いえ、その様な事は。』
この一節を紡ぎ出す事しか
慧人の口には出来なかった。
白を基調としてアイボリーの
カッティングラインをあしらった
身体に密着するデザインの
スーツは
ミゥの主張し過ぎる
ボディーラインを
ハッキリと浮き彫りに
させてしまっている。
『その、出来たら視線を逸らしてくれると助かる。』
堅物の物言いが目立つ 
ミゥだがこんな
仕草は彼女の実年齢を考えると
当たり前で、普段の言動とも
相まっていわゆる 
"ギャップ萌え"が
成立してしまっていた。
しかし慧人以外にはこんな
態度は見せるはずも無い。
隊役に着いていた時も
男性隊員の前でも凛(りん)
としたものだった。
『いえ、自分はそんな…』
またも言い淀んでしまう慧人に
『君でも、その何と言うか、
女性に対して関心を置く事も
有るんだな』
まんざらでも無い仕草で少しだけ
上目遣いでほんのり頬を染めた
ミゥが尋ねる。
『それは、そうですよ…』
慧人にしては珍しい事だが、
ティタや迩椰の事は家族と
割り切っているからであって、
年頃のそれも魅力的な2つしか
年の離れていないお姉さんを
意識してしまうのも
当然の事と言えるだろう。
『この格好
おかしくはないだろうか。
その、君から見て、どう    
か    な?。』
ミゥはどもりながら
少しはにかんで
いる様で慧人に尋ねる。
しかし慧人は対した感慨も
乗せずサックり答えてしまう。
『お嬢様、良くお似合いです。』
この一連の事態に慣れ、次第に
空々しく感じ始めた慧人は、
傍目から見ればミゥが
意識している程では無く
慧人の動揺は
もはや菜種粒程しか
無かったのだ。
『しかし、慌てているようで
顔色には全く出さんのだな  
君は。それに、お嬢様か。』
ふと気付いてしまった動揺の
少ない慧人に対して遂には
やつ当たりとも思える
プチ逆ギレを言い出したの
だった。
おそらく自意識過剰かと思った
思考を照れ隠しする為
だったのだろうが。
『そろそろ茶番は終わりにして、
シミュレーションを
始めませんか?』
乙女心など微塵も伺い知らぬ
慧人は
素早く居直りを決め込み"茶番"
などと舌を滑らせてしまう。
それを聞かされたミゥは頬を膨らませる勢いで(実際には膨らませたりしないが)
『そうだなっ!飛んだ茶番に
付き合わせ済まなかった!
お望み通りシミュレーションでも
(なんでも)
始めようじゃないかっ!』
茶番などと付け加えられて
とうとう
へそを曲げてしまった
難しいお年頃の
ミゥだった。
さて仕切り直しが大変だ。
溜め息を吐きたい衝動を抑えとりあえずシミュレーターに乗り込む慧人の後ろ姿は心無しか、
少々肩が下がり気味に
見えたのだった。
やれやれである。
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