リュウのケイトウ

きでひら弓

文字の大きさ
上 下
52 / 188

52大会へ向け11休日の予定は?

しおりを挟む
『慧人さん
明日、皆んなで
お出かけの約束を
してるんです。

慧人さんにも是非
ご一緒して欲しいなぁ~って
思っているんですけど…
如何ですか?。』

『けーとー
迩椰と一緒に
   遊びにいこ。
夏も一緒に行くって。

ねーねー
一緒に行こ~よ~。』

ティタからの言葉に
乗る様に
慧人の右腕を取って
潤ませた視線で
遊びに行く約束を
せっつく迩椰。

こんな仕草を
されてしまっては
慧人で無くとも
断る事は出来ない
だろう。

『ああ、
    構わ無いが
      しかし …………。』

慧人からの返事に
被せるように
迩椰は慧人の
腕をブンブン振り、
満面の笑みを浮かべ
ながら、

『やっったぁーー!
 遊びに行こーね~
 約束、
や~くーそーくーね~。』

ティタは慧人が
何か口ごもる表情を
読み取り質問する。

『何か
  問題でもあるんですの?。
     慧人さん。』

『それなんだが…
14時迄で良ければ
    俺も付き合える。』

『14時から
  用事がお有りなんですね。
…………。

それでしたら
14時迄私達と
ご一緒して下さい。

その後は
私達三人で何処か
お買い物にでも
行きますので。』

『ああ
すまない
そうしてくれるか。』

ティタは
慧人の14時からの
用事に突っ込まない。

その代わり
慧人にも読み取られない
様にほくそ笑むと
キッチンに
片付け物を下げながら
顔全体まで滲ませ(にじませ)る
小悪魔的思考で
とある想像を
画策するのだった。

◇          ◇          ◇          ◇ 
   
日曜当日
慧人は此方(こちら)での生活を
始めてから毎日神社に
出向き朝の鍛練を重ねている。

起きると布団に
迩椰が潜り込んでいるのも
日課になっており
二日に一度くらいは
ティタまで潜り込んでいる
始末だ。

慧人が一人鍛練に
出かけた後、
ティタは何時もの様に
朝早くからお弁当の用意に
精を出す。

今日は夏も一緒の為
多目に作る算段だ。

もちろん迩椰も
寝坊する事無く
一所懸命お手伝い
している。

鼻歌交じりに
お手伝いする様は
なんとも楽し気な
雰囲気だ。

しかしお手伝いの
スキルは
小学生レベル。
主に具材を
詰める事に
終始しているのだった。

それでも今日は
珍しい事に
大きなおにぎりを一つ
ティタの作る大きさの
三倍は
有ろうかというサイズの
物をぎゅうぎゅう
ぺたぺた
楽し気に
握っている。

『迩椰、
     大きなおにぎりね。
   誰の為に
作っているのかしら?。』

ティタはニコニコしながら
誰の為だか分かって
いながらも
迩椰に質問して
あげる。

それはとても
楽しそうだったから
ティタも問い掛けずには
いられなかったのだろう。

『けーとのだよ。
毎日稽古してるから
大きなおにぎりじゃないと
きっと足りないと思うから。

中身はしゃけ。
しゃけは世界で
一番美味しいお魚だから。
けーとも喜んでくれるはず。』

迩椰曰く(いわく)
この世界に来て
良かった事は
皆んなで一緒に暮らせる事と
しゃけに出会えた
事らしい。

『そうね。
とても、
美味しそうだもの
きっと喜んでくれるわね。』

『うん。』

迩椰の
一所懸命な姿を
見ていると
慧人で無くても
頭を撫でてあげたく
なるほどの愛らしさ。

それは愛玩動物をも
凌駕してしまう程なのだ。

ティタの母性を
くすぐる迩椰の
仕草に
彼女も堪らず
頭を撫でたり
褒めたりしてしまう。

それはまるで
愛娘を慈しむかの様に。

ティタの
家事の時間の
もう一つの楽しみと
言っても良いだろう。

こうして毎朝
二人の愛すべき
幸福の時間は
ゆっくりと
夢物語のように
流れて行くのだった。
しおりを挟む

処理中です...