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53休日1晴れたら
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慧人が朝の鍛練から
帰りシャワーで汗を
流すと、
遊びに行く準備も万端。
ガレージから
慧人からの注文で
ティタがオークションにより
落札した軽自動車のバンを
玄関、門の前まで
持って来てお弁当やら
レジャーシートその他を
積み込む。
『慧人さん
このお車でよろしかったん
ですか?。』
ティタは軽自動車で
あっても、
もっとお洒落で
可愛い車も有ったのに
と言う気持ちを
視線に少し滲ませ(にじませ)
ながら
慧人に尋ねる。
『ああ。
ウバル ランバーの
トランスポーター。
インジェクションのみで
スーパーチャージャーも
付いていない。
しかもマニュアルで
AWD。色は銀。
これが良いんだ。
このコストパフォーマンスが
俺の効率中を刺激するんだ。
エンジンはこのサイズでは
珍しい四気筒。
軽の四気筒エンジンは
トルクを稼ぐのに
大変なのに
インジェクションとの
マッチングの
おかげか、
出足のトルクも
問題無い。
燃費との兼ね合いも
抜群なんだ。
しかし残念な事が
一つ有る
それは、
エアコンが今ひとつな点
なんだ。
ガス抜けが
多かったり
コンプレッサーの
不良が出たり
ランバーでは
この事態は
あるあるネタと
されている。
これさえ無ければ
最高なのになぁ~。』
ティタと迩椰、
今、丁度到着した夏までも
慧人のマシーンオタクぶりの
超絶講釈に
ポカーンと口を開き
眼を見開いて
少し、
いや、かなり
引いていた。
『このお車の事、
随分とお詳しいんですのね。』
ティタは
引きつりながらの
愛想笑いで
また慧人の
開かずの
引き出しを
開いてしまう。
『ネットで少しな。
この車も
類に漏れなく
エアコンのガス漏れを
起こしている。
さっき少し点検してみた。
エンジンは
キチンとメンテナンスして
やれば、
30万㎞も使える
耐久性がある。
ネット画像では
50万㎞を達成した
個体の情報まで有った。
設計者、メーカーの
物を大事にする
理念が伺えて
頼もしい限りだった。』
慧人は語り切った
清々しい顔つきで
ニッコリ
白い歯を輝かせていた。
『そ、それでは
そろそろ
出発しましょう
ね。慧人さん。』
ティタはこれ以上
地雷を踏まない様
気を付けつつ
お出かけへの
出発を促すのだった。
『慧人君
おはよう。
今日は私のオススメの
公園に案内するからね。』
夏は朝の挨拶すら
なかなか割って入れず
ようやく口に出来て
一安心。
『迩椰
この車好き。
小っちゃいのに
中 ひろーい。
後ろで寝れる。』
迩椰は
特に空気を読む事も無く
無邪気に後ろの席で
はしゃいでいる。
じつは
まだ車のグリルの
改造点など
ボソボソもらす
慧人だったのだが
流石に空気を読み
話しを途中で
切り上げていたのだった。
『それで
今日は何処へ
案内してくれるんだ。』
慧人が夏に尋ねる。
『瓶沼自然公園と
古民家公園に
案内しようかと思います。
緑も多くて
とても良い所なんですよ。』
『先程
携帯端末のマップで
調べてみたんですけど、
森を抜ける遊歩道や
見晴らしの良い
ウッドデッキ、
展望デッキもあって
お散歩にもってこいです。』
『それは良いな。
のんびり出来そうだ。』
こんな会話をしているうち
15分程で瓶沼自然公園に
到着する。
緑が眩しい芝の野原に
遊歩道、木製のベンチが
とても絵になる
家族連れもにも
人気の公園である。
『けーとー
くわがた居るかな。
あっちに木がいっぱい。
はーやーく~こっちー。』
迩椰が慧人の腕を取って
森の方に引っ張て行こうと
する。
すかさず、
慧人の空いている方の
腕に自分の腕を絡ませる
ティタ。
(わ、私も負けないん
だから、二人とも~っ。)
夏は慧人の斜め後ろを
シャツの裾を少しだけ
摘み、負けじと付いて行く。
慧人を取り囲む
おかしな塊と化した
四人が遊歩道を
ゆっくり歩いて行く。
迩椰は途中、
気になる物を見つけると
とりあえず一人で
ダッシュして確認
また集団に戻るを
繰り返している。
迩椰が慧人の腕を
放すと
今度はすかさず
夏がそのスペースへ
滑り込む。
慧人は特に文句も言わず
三人の好きにさせている。
芝の広場に到着すると
ティタ、迩椰、夏の
三人は所々に島状に
群生するシロツメクサの
四つ葉を探そうと
しゃがみ込み
三つ葉を掻き分けながら
小さな葉を見落とすまいと
眼を凝らして調べ
始める。
仲良し三姉妹が
和やかに戯れるが
如く
楽し気な様子を
慧人は
芝に寝転びながら
穏やかな気持ちで
眺めている。
(そう言えば
こんな光景を
小さい頃に見た様な
気がするな。)
慧人の薄れた幼い頃の
記憶が少しだけ
古い映画を
再生するように
ぼんやりと
蘇る。
◇17年前
王都遺伝子 龍真瑰
研究施設
前庭園◇
『にや、
なにさがしてるんだ?。』
『にやは
お花をさがしてる
みたい。
でも、なかなか
みつからないんだって。』
『てぃたも
いっしょに
さがしてるのか?。』
『うん
わたしもてつだって
あげようかなって
おもうの。』
『そうか
じゃあ おれも
いっしょにさがすの
てつだうよ。』
『けいとくんも
さがすのてつだってくれるの
にや よろこぶよ
あっちに いるから
いっしょにきて。』
『あの大っきい石の
むこうか?
わかった。
てぃた いっしょにいこう。』
『うん
手つないで
けいとくん。』
『うん。』
慧人の幼い小さな手が
ティタの更に小さな手を
握る。
三人は幼い頃
遊びと言えば
施設の中での
能力開発のプログラムで
遊び要素のある謎解きや
パズル、絵や文字の組み合わせで
意味のある場面を作る等の他は
この庭園ではしゃぎ回るのが
日課になっていたのだ。
『にーや~
みつかったか~?。』
『けーとー
こっちきてー
お花まだ みつからないよ~。』
慧人は
ティタの手を引き
迩椰の居る場所まで
走り出す。
『にや
ここらへんに
さいてるのか?。』
迩椰も慧人が駆け寄る
近くまで走り
寄って行く。
『うん。
このへんに
さいてると思う。
ちっちゃいから
なかなかみつからない。
白いお花なの。』
『にや
あたしもさがすよ。
白いお花ね。』
慧人が
花を探そうと
一歩上げた足の下を
迩椰が指さす。
『これ!。
このお花
……………。
けーとが
ふんじゃった……。
ぅわぁーーーーんっ!
けーーとがふんじゃったぁーーっ!
おーはーな~っ
あぁーーーん……。』
『にやぁ
ごめん
なかないで
おんなじの あっちに
さいてたから。
おれ、とってやるよ。』
慧人が迩椰の頭を
撫でながら
一所懸命に
慰める。
『けいとくん
あっちって
がけになってる
ところじゃない?。
あぶないから
やめよ、ね?。』
『へいきだよ。てぃた。
にや、
いまとってあげるからな。
まってろよ。』
『ほんと。
あっちにおんなじの
さいてるの?。
けーとが
とってくれるの?。』
『うん。
ぜったい
とってやるよ。
やくそくする。』
『やくそくだよ。』
三人は崖になっている
庭園の端まで行き
目的の白い花を
見つけ出す。
『あそこにさいてる。』
『ほんとだ
さいてた。
けーと お花 とれそう?。』
『とれるよ。
手をのばせば
ぎりぎりとどくよ。』
『けいとくん。
きをつけて
おっこちないでね。』
『だいじょうぶだ。
ここから、ねそべって
手をのばせば……。
もうちょっと。
うーーーっ!。』
『てぃた。
おれのあし
ちょっとおさえてて。
そしたらとどくよ。』
『うん。
これでいい?。』
『うん。
もうちょっと…
うーっ!
もう……ちょっ………っ!!』
『ぅわぁっっ!。』
ズザザザザッッ……
ザザザザザザーーッッ
5m程ある崖の下へ
ティタと慧人が
落ちてしまう。
慧人はこの頃より
類い稀な運動神経で
咄嗟にティタの頭を
抱える様にかばいながら
落下、下木のクッションで
大怪我には至らなかった。
慧人の身体の上で
先にティタが眼を覚ます。
『うう……ん?。
あれ? ここ……。
けいとくん
けいとくん
おきて、おきてよ
ねぇ おきて……
いやだ、しんじゃ いや
やだ、けいとくん
目をあけてよ。』
ティタが今にも
大泣きしそうな
涙を溜めた瞳で
必死に慧人に声をかける。
『ん?。 っつ!
いててて…
ティタだいじょうぶか?。』
『あたしは
だいじょうぶ。
それより
けいとくんが……
血が出てる
こことここと
ここも
いっぱい血が出てる。』
『だいじょうぶだよ。
おれ、こんなの
ぜんぜんへいきだよ。
それよりティタが
けがしてないか?。
どこもいたくないか。
足とか、だいじょうぶか?。』
『あたしは
なんともないよ。
………。』
『ごめん、
こわかったか?。』
『けいとくんが
しんじゃったかと
おもって
そっちのほうが
こわかったよ。 もぅ。』
『おれは
だいじょうぶだよ
しなないよ。
ティタがぶじで
ほんとによかった。
ほら
花もちゃんと
とれたから。
かえったら
にやに
みせてやらなきゃ。』
『もぅ。
けいとくんの
ばか。』
こんな時でも
迩椰の事まで考えて
花まで大事に持って
離さなかった慧人に
少し嫉妬を覚えたが
最後は
消え入る様な声で呟き
泣き笑いのまま
慧人のシャツの裾を
掴むと
一緒に崖から廻り込み
坂になって庭園まで続く
道を二人は
お互いの優しさと
思いを知り
少し気恥ずかしい空気のまま
連れ立って
帰るのだった。
◇現在
瓶沼自然公園
シロツメクサの
生る芝の上◇
(ウフフ…
あの頃から
私、慧人さんの事を…。
あの後
迩椰は私達が落ちた
ショックと慧人さんの
怪我を見て大泣きしてたっけ。
迩椰はあの頃の
ままだな。
慧人さんは
更にカッコ良く
なっちゃって 。
周りに女の子は
どんどん増えるし。
それでも
慧人さんは
私の事…
ううん、私達の事
何時までも大事に
思ってくれますよね。)
少し離れた場所からは
慧人がティタの
草原にたたずむ
白いワンピース姿を
見つめ
あの頃の
思い出に浸って
微笑する
風景が。
ティタの方からも
慧人の
Tシャツ姿を
瞳に映し
更に愛しさを
募らせるのだった。
帰りシャワーで汗を
流すと、
遊びに行く準備も万端。
ガレージから
慧人からの注文で
ティタがオークションにより
落札した軽自動車のバンを
玄関、門の前まで
持って来てお弁当やら
レジャーシートその他を
積み込む。
『慧人さん
このお車でよろしかったん
ですか?。』
ティタは軽自動車で
あっても、
もっとお洒落で
可愛い車も有ったのに
と言う気持ちを
視線に少し滲ませ(にじませ)
ながら
慧人に尋ねる。
『ああ。
ウバル ランバーの
トランスポーター。
インジェクションのみで
スーパーチャージャーも
付いていない。
しかもマニュアルで
AWD。色は銀。
これが良いんだ。
このコストパフォーマンスが
俺の効率中を刺激するんだ。
エンジンはこのサイズでは
珍しい四気筒。
軽の四気筒エンジンは
トルクを稼ぐのに
大変なのに
インジェクションとの
マッチングの
おかげか、
出足のトルクも
問題無い。
燃費との兼ね合いも
抜群なんだ。
しかし残念な事が
一つ有る
それは、
エアコンが今ひとつな点
なんだ。
ガス抜けが
多かったり
コンプレッサーの
不良が出たり
ランバーでは
この事態は
あるあるネタと
されている。
これさえ無ければ
最高なのになぁ~。』
ティタと迩椰、
今、丁度到着した夏までも
慧人のマシーンオタクぶりの
超絶講釈に
ポカーンと口を開き
眼を見開いて
少し、
いや、かなり
引いていた。
『このお車の事、
随分とお詳しいんですのね。』
ティタは
引きつりながらの
愛想笑いで
また慧人の
開かずの
引き出しを
開いてしまう。
『ネットで少しな。
この車も
類に漏れなく
エアコンのガス漏れを
起こしている。
さっき少し点検してみた。
エンジンは
キチンとメンテナンスして
やれば、
30万㎞も使える
耐久性がある。
ネット画像では
50万㎞を達成した
個体の情報まで有った。
設計者、メーカーの
物を大事にする
理念が伺えて
頼もしい限りだった。』
慧人は語り切った
清々しい顔つきで
ニッコリ
白い歯を輝かせていた。
『そ、それでは
そろそろ
出発しましょう
ね。慧人さん。』
ティタはこれ以上
地雷を踏まない様
気を付けつつ
お出かけへの
出発を促すのだった。
『慧人君
おはよう。
今日は私のオススメの
公園に案内するからね。』
夏は朝の挨拶すら
なかなか割って入れず
ようやく口に出来て
一安心。
『迩椰
この車好き。
小っちゃいのに
中 ひろーい。
後ろで寝れる。』
迩椰は
特に空気を読む事も無く
無邪気に後ろの席で
はしゃいでいる。
じつは
まだ車のグリルの
改造点など
ボソボソもらす
慧人だったのだが
流石に空気を読み
話しを途中で
切り上げていたのだった。
『それで
今日は何処へ
案内してくれるんだ。』
慧人が夏に尋ねる。
『瓶沼自然公園と
古民家公園に
案内しようかと思います。
緑も多くて
とても良い所なんですよ。』
『先程
携帯端末のマップで
調べてみたんですけど、
森を抜ける遊歩道や
見晴らしの良い
ウッドデッキ、
展望デッキもあって
お散歩にもってこいです。』
『それは良いな。
のんびり出来そうだ。』
こんな会話をしているうち
15分程で瓶沼自然公園に
到着する。
緑が眩しい芝の野原に
遊歩道、木製のベンチが
とても絵になる
家族連れもにも
人気の公園である。
『けーとー
くわがた居るかな。
あっちに木がいっぱい。
はーやーく~こっちー。』
迩椰が慧人の腕を取って
森の方に引っ張て行こうと
する。
すかさず、
慧人の空いている方の
腕に自分の腕を絡ませる
ティタ。
(わ、私も負けないん
だから、二人とも~っ。)
夏は慧人の斜め後ろを
シャツの裾を少しだけ
摘み、負けじと付いて行く。
慧人を取り囲む
おかしな塊と化した
四人が遊歩道を
ゆっくり歩いて行く。
迩椰は途中、
気になる物を見つけると
とりあえず一人で
ダッシュして確認
また集団に戻るを
繰り返している。
迩椰が慧人の腕を
放すと
今度はすかさず
夏がそのスペースへ
滑り込む。
慧人は特に文句も言わず
三人の好きにさせている。
芝の広場に到着すると
ティタ、迩椰、夏の
三人は所々に島状に
群生するシロツメクサの
四つ葉を探そうと
しゃがみ込み
三つ葉を掻き分けながら
小さな葉を見落とすまいと
眼を凝らして調べ
始める。
仲良し三姉妹が
和やかに戯れるが
如く
楽し気な様子を
慧人は
芝に寝転びながら
穏やかな気持ちで
眺めている。
(そう言えば
こんな光景を
小さい頃に見た様な
気がするな。)
慧人の薄れた幼い頃の
記憶が少しだけ
古い映画を
再生するように
ぼんやりと
蘇る。
◇17年前
王都遺伝子 龍真瑰
研究施設
前庭園◇
『にや、
なにさがしてるんだ?。』
『にやは
お花をさがしてる
みたい。
でも、なかなか
みつからないんだって。』
『てぃたも
いっしょに
さがしてるのか?。』
『うん
わたしもてつだって
あげようかなって
おもうの。』
『そうか
じゃあ おれも
いっしょにさがすの
てつだうよ。』
『けいとくんも
さがすのてつだってくれるの
にや よろこぶよ
あっちに いるから
いっしょにきて。』
『あの大っきい石の
むこうか?
わかった。
てぃた いっしょにいこう。』
『うん
手つないで
けいとくん。』
『うん。』
慧人の幼い小さな手が
ティタの更に小さな手を
握る。
三人は幼い頃
遊びと言えば
施設の中での
能力開発のプログラムで
遊び要素のある謎解きや
パズル、絵や文字の組み合わせで
意味のある場面を作る等の他は
この庭園ではしゃぎ回るのが
日課になっていたのだ。
『にーや~
みつかったか~?。』
『けーとー
こっちきてー
お花まだ みつからないよ~。』
慧人は
ティタの手を引き
迩椰の居る場所まで
走り出す。
『にや
ここらへんに
さいてるのか?。』
迩椰も慧人が駆け寄る
近くまで走り
寄って行く。
『うん。
このへんに
さいてると思う。
ちっちゃいから
なかなかみつからない。
白いお花なの。』
『にや
あたしもさがすよ。
白いお花ね。』
慧人が
花を探そうと
一歩上げた足の下を
迩椰が指さす。
『これ!。
このお花
……………。
けーとが
ふんじゃった……。
ぅわぁーーーーんっ!
けーーとがふんじゃったぁーーっ!
おーはーな~っ
あぁーーーん……。』
『にやぁ
ごめん
なかないで
おんなじの あっちに
さいてたから。
おれ、とってやるよ。』
慧人が迩椰の頭を
撫でながら
一所懸命に
慰める。
『けいとくん
あっちって
がけになってる
ところじゃない?。
あぶないから
やめよ、ね?。』
『へいきだよ。てぃた。
にや、
いまとってあげるからな。
まってろよ。』
『ほんと。
あっちにおんなじの
さいてるの?。
けーとが
とってくれるの?。』
『うん。
ぜったい
とってやるよ。
やくそくする。』
『やくそくだよ。』
三人は崖になっている
庭園の端まで行き
目的の白い花を
見つけ出す。
『あそこにさいてる。』
『ほんとだ
さいてた。
けーと お花 とれそう?。』
『とれるよ。
手をのばせば
ぎりぎりとどくよ。』
『けいとくん。
きをつけて
おっこちないでね。』
『だいじょうぶだ。
ここから、ねそべって
手をのばせば……。
もうちょっと。
うーーーっ!。』
『てぃた。
おれのあし
ちょっとおさえてて。
そしたらとどくよ。』
『うん。
これでいい?。』
『うん。
もうちょっと…
うーっ!
もう……ちょっ………っ!!』
『ぅわぁっっ!。』
ズザザザザッッ……
ザザザザザザーーッッ
5m程ある崖の下へ
ティタと慧人が
落ちてしまう。
慧人はこの頃より
類い稀な運動神経で
咄嗟にティタの頭を
抱える様にかばいながら
落下、下木のクッションで
大怪我には至らなかった。
慧人の身体の上で
先にティタが眼を覚ます。
『うう……ん?。
あれ? ここ……。
けいとくん
けいとくん
おきて、おきてよ
ねぇ おきて……
いやだ、しんじゃ いや
やだ、けいとくん
目をあけてよ。』
ティタが今にも
大泣きしそうな
涙を溜めた瞳で
必死に慧人に声をかける。
『ん?。 っつ!
いててて…
ティタだいじょうぶか?。』
『あたしは
だいじょうぶ。
それより
けいとくんが……
血が出てる
こことここと
ここも
いっぱい血が出てる。』
『だいじょうぶだよ。
おれ、こんなの
ぜんぜんへいきだよ。
それよりティタが
けがしてないか?。
どこもいたくないか。
足とか、だいじょうぶか?。』
『あたしは
なんともないよ。
………。』
『ごめん、
こわかったか?。』
『けいとくんが
しんじゃったかと
おもって
そっちのほうが
こわかったよ。 もぅ。』
『おれは
だいじょうぶだよ
しなないよ。
ティタがぶじで
ほんとによかった。
ほら
花もちゃんと
とれたから。
かえったら
にやに
みせてやらなきゃ。』
『もぅ。
けいとくんの
ばか。』
こんな時でも
迩椰の事まで考えて
花まで大事に持って
離さなかった慧人に
少し嫉妬を覚えたが
最後は
消え入る様な声で呟き
泣き笑いのまま
慧人のシャツの裾を
掴むと
一緒に崖から廻り込み
坂になって庭園まで続く
道を二人は
お互いの優しさと
思いを知り
少し気恥ずかしい空気のまま
連れ立って
帰るのだった。
◇現在
瓶沼自然公園
シロツメクサの
生る芝の上◇
(ウフフ…
あの頃から
私、慧人さんの事を…。
あの後
迩椰は私達が落ちた
ショックと慧人さんの
怪我を見て大泣きしてたっけ。
迩椰はあの頃の
ままだな。
慧人さんは
更にカッコ良く
なっちゃって 。
周りに女の子は
どんどん増えるし。
それでも
慧人さんは
私の事…
ううん、私達の事
何時までも大事に
思ってくれますよね。)
少し離れた場所からは
慧人がティタの
草原にたたずむ
白いワンピース姿を
見つめ
あの頃の
思い出に浸って
微笑する
風景が。
ティタの方からも
慧人の
Tシャツ姿を
瞳に映し
更に愛しさを
募らせるのだった。
2
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