リュウのケイトウ

きでひら弓

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54休日2晴れたら2

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一頻り(ひとしきり)
公園の野原で遊んだ後、
四人は次の古民家公園へと
向かうべく
車へ乗り込み
わいわいと四つ葉の話しで
盛り上がっている。

『ねぇ
幾つ見つかった?。』
迩椰が二人に尋ねる。

『私、
結構 見つけたわよ。
ほら。』

ティタの掌には九つの
四つ葉が可愛らしいく
乗せられている。

何か
想いを大事にする様に
大切に包み込む仕草で。

『私、
四つしか
見つけられなかった。』

夏も自分の掌を
開いて、
まだ青々とした
四つ葉を二人に見せる。

『迩椰、
いっぱい採れた。
見て、
ほらこんなに沢山だよ。』

迩椰の
掌には数え切れない程の
四つ葉が
ショートのズボンの
ポケットにまで
詰め込まれている。

『迩椰、
四つ葉じゃないのも
少し混じっているわね。

     ウフフ…。』

ティタが
満面の笑みを浮かべ
四つ葉じゃない物を
摘み
面白そうに
迩椰に指し示している。

『いいのっ!。

けーと にもあげるんだから。

ね。けーと
迩椰とお揃いの四つ葉。
一緒に持ってて。』

迩椰の想いは
四つ葉と言う
決まった形に捉われない。
そこには、
沢山の者に分け与えたい
その為には形、枚数に
こだわりなく
同じ意味の想いを持つ物が
集められ
中には五つ葉、六つ葉
なんていう物まで
探し集められていた。
 
中でも
慧人には
お揃いの四つ葉を
持っていて欲しいかった。

それは迩椰にとっての
ささやかな
そして
懇親の特別だったのだ。

そうこうしているうち
古民家公園に到着する。

園内には錦鯉の泳ぐ池や
古代蓮の咲く湿地、
菖蒲の植わる花壇
などがあり
中でも
室内まで入って
見学、休憩出来る
古民家が
1番の人気の
風情ある公園なのだ。

『少し早いけど
ここでお昼御飯に
    しましょう。』

磨きあげられた
冷んやりとした
軒先きに腰掛け
ティタと迩椰が
一所懸命に作った
お弁当を広げて
早目のお昼御飯に
ありつく四人。

『けーと これ。』

迩椰が一つの大きな
アルミホイルの包みを
慧人に差し出す。

『大きいな。
     おにぎりか。

迩椰が作ったのか?。』

慧人の掌でも
ずっしり重量感のある
激しく存在を主張する
御飯の大きな塊。

『うん。
 けーと専用。
    美味しいよ。

迩椰も同じの食べる。』

迩椰の手には
明らかに普通サイズの
おにぎりが
比較対象物で
あるかの如く
握られている。

『ありがとう。

   いただきます。』

慧人は迩椰の眼を
見つめ、その後
ティタ、夏に向かい
一言挨拶する。

『ティタ、迩椰ちゃん
     ありがとう。

     いただきます。』

それに続き夏も
手を合わせて
ティタの作ったおにぎりに
手を伸ばした。

風通しの良い軒先きは
こんな日差しの強い
昼間でも、
涼風が吹き抜け
とても心地よい空間を
提供してくれる。

慧人が食べ進める
おにぎりの中から
しゃけの切り身が
3㎝角程のサイズで
ごろごろ出て来る。

『ほら、
     迩椰のと一緒。
   見て、けーと。』

迩椰のおにぎりの中身も
しゃけだったのだが
もちろん、指先で
摘める程の
小さいほぐし身だ。

『迩椰は
  しゃけ、大好きだもんな。』

慧人がニッコリ
迩椰に微笑みかける。

『うん。
    けーとの次に
       しゃけが好き。』

その言葉に
三人共吹き出してしまう。

キョロキョロする
迩椰に、

『慧人さんも 
   食べられない様
  気を付けないと
    いけませんね。』

『迩椰ちゃん、
   慧人君としゃけ
  両方抱っこして
   寝てそうだね。』

ティタと夏が
笑顔で答えを紡ぐ。

和やかなお昼御飯が
終わると
満腹と涼しさからか
迩椰が眠たそうに
大あくび
その場にゴロンと
横になると
仔猫のように丸くなり
すやすや寝息を
立て始めた。

慧人は
気持ち良さそうに
眠る迩椰の頭を
ゆっくり
柔らかく
撫でる。

迩椰と初めて出会った
頃を思い出す様に。

◇17年前
    王都遺伝子 龍真瑰研究施設
       被験体収容研究室◇

その日
慧人は五つ目の
龍真瑰の施術を終え
まだ朦朧とした意識の中
検査着と肌身離さず持つ
御守りを首から下げ
いつもは入る事の無い
実験体を収容する
カプセル室前を
うろうろ
歩き廻っていた。

そのうち
ドアの開いていた
部屋を見つけると
何かに引き寄せ
られる様に
ふらふらと
中へ入って行ったのだ。

その部屋には
みかん箱程度の
大きさのカプセルが
一つだけ
丁度、慧人の
目線の高さの台に
乗せられていた。

中に
白く丸くなっている
物を遠目に見つけた
慧人は
それをしっかり
確認しようと
覗き込んだ。

透明のドームの様な
カプセルの中には
白いふわふわの毛に
美しい長い尻尾の
仔猫が
丸くなって
眠っているように
見えた。

慧人は
そのふわふわの毛に
引き寄せられる様に
カプセルのドームの部分を
開けると
そーっと
その身体を撫でてみた。

しかし、
その仔猫の
身体はピクリとも
反応しない。
慧人は不思議な
感覚に誘われ
その仔猫を
抱き上げてみた。

抱き上げた
仔猫はグッタリしている
耳をそば立てても
息が有るのか
解らない程だ。

慧人が
仔猫の頭を
優しく撫でて
いると
研究員が
近付いて来て
慧人に尋ねた。

『その子の事
気に入ったのかい?。』

『うん。
  なんだか気になったんだ。』

『そうか。
君の為の使い魔って
言うかお友達にしようと
思ってここに
連れて来たんたけど
あまり元気が無くてね。

ここで少し休ませて
いたんだよ。』

実際には
慧人の従者として
獣人の娘に
龍真瑰を
施術したのだが
龍石の持つパワーに
追ていけず
徐々に弱り
このままだと
数日中に死んでしまう
かもしれないと言う
状況だったのだ。
しかし、
龍真瑰を
施術後も生きて
いられるケースは稀で
この状況においても
成功の事例として
管理されていたのだった。

『ねえ
この子、ぼくにくれない?。
  ぼくがなんとか
してみるよ。

このままにしたら
この子、たぶん死んじゃうよ。』

慧人は虚ろな感覚から
覚める様に
研究員の目をしっかりと
見据え、
力強く懇願する。

『そうだね。
元々、君のお友達に
しようと思って連れて来たんだ。

だったら君に面倒見て
貰おうかな。
もし、何かあったら
私の所に連れて来なさい。』

『ありがとう。』

慧人は仔猫を
抱いたまま
自分の部屋まで
帰って行った。

部屋へ帰ると
自分のベッドに
仔猫を寝かせ
傍らで撫でながら
少しウトウトと
微睡んでしまう。

『『慧人、慧人、
  もし救いたい命があったら
    迷わず、この御守りを
   使いなさい。

きっと貴方の願いを
    叶えてくれますよ。
    忘れないでくださいね。』』

『おかあさん…?。』

慧人は
微睡みの中で
ある人物の声を
思い出す。

慧人は首から下げた
御守りを外すと
掌にのせ
ゆっくりと
仔猫に近づけて
行った。

御守りは
深い紫色の
アーモンド大の結晶体で
神秘的な輝きを放っていた。
それは
邪な者が見れば
強欲に奪われて
しまいそうな程の
不思議な力を
宿していたのだ。

仔猫に御守りを
近づけると
御守りが次第に
輝きを増し
仔猫と慧人の体内から
緋色の光が溢れ
その輝きが一本の線に
まとまると
御守りの結晶体と
更に慧人の胸
仔猫の腹部を
指す様に
集中した光が
深い紫色を
更に増幅させ
今度は御守りが
溶けるように
緋色の光に
引き寄せられ
仔猫と慧人の体内へ
収束して消えて行ったのだ。

仔猫がゆっくりと
瞼を開く。

仔猫は
耳をピクピクさせ
気配に気が付くと
慧人の顔に
向き直った。

慧人は
仔猫と視線を
合わせると

『よかった。
うごけるようになったんだね。

ぼくがわかる?。

きみのおともだちだよ。

そうだ、
なまえどうしよう。

なまえなんていうのかな?。』

『にゃぁ~ん。』

『………
  
  にや。
      にやだね。

わかった。にやってよぶよ。

にや
ぼく、けいとだよ

よろしくね。』

慧人は
嬉しくて
仔猫を撫でたり
頰ずりしたり。

心を温かい物が
満たしていくのを
感じていた。

すると仔猫にも
変化が訪れた。

徐々に尻尾が消え
ピンと立った耳が
形を消すと
人の女の子の
姿に変わって行ったのだ。

『…………んっ…

    けーと

    けーと
  こえ きこえたよ。

  ありがと。

 にやと いっしょにいて。

ずーっといっしょにいて。
   やくそく    だよ。』 

仔猫は
龍真瑰に
奪われていた
力を取り戻し
人の姿に戻る事が
可能になったのだ。

『うん。
 ずーっといっしょにいよう。

    やくそくする。
       ね、にや。』

この思い出は
ティタとまだ出逢う前の物。

この事は
ティタも知らない
迩椰と慧人だけの
懐かしい幼き頃の
記憶なのだった。
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