リュウのケイトウ

きでひら弓

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60休憩1誘惑

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A組対B組の
次の試合が始まるまでの
休憩時間に
自販機に飲み物を
買いに来た慧人の
後ろから肩を叩き
声を掛けて来た
人物がいた。

『慧人。』

耳元で囁くように
慧人の背後から
肩越しに
熱い吐息で
語り掛ける
艶のある声音。

慧人が
振り返る。

『先生。』

慧人は
何時もなら特に
動揺する事も無い
しかし
ミゥの瞳を自身の
瞳に映した瞬間、
しまったと
思った一瞬に
何か術の様な
暗示の類いに
捕らわれて
しまったのだ。

『慧人。
   みんなに
   慧人パワーなんていう物を
   授けたそうじゃないか?。

   私にもその
   如何わしい
   パワーを
   授けて……
…………くれない   か?。』

既にとろんとした
瞳で慧人に
懇願する
ミゥの吐き出す
言葉は
余りにも熱く
煽情的だった。

『如何わしい物では
   ありませんよ。

ちょっとした暗示の
様な物です。』

(マズイな
 俺の方が先に
術中にハマって
しまいそうだ
……………っ。)

『そうなのか?。

だったらその
暗示とやらを
私にも掛けて
………………
…欲しい……な。』

ミゥの瞳は
完全に
何かに浮かされている。

『先生。
まさか今日も
試薬を服用して
いるのですか?。』

『ああ。

だって美味しいん
だから
………………
…仕方ない…
だろう………。』

やはりと言うべきか
試薬を服用していた
ミゥ。
効果の程は……。
慧人の予想通り。か。

『どちらにしても
ここでする訳にも
行きません。』

『だったら、
丁度良い
空き教室を
見つけてある。

其処へ行こう。』

ミゥが案内する
教室へ
何かに捕らわれるかのように
言いなりに
追て行ってしまう。

その様子を
ティタの鋭い眼光は
逃さなかった。

二人の後を
気付かれ無いよう
音もなく
少し距離を取り
追って行く。

『ここだ。

ここなら大丈夫だろ。

誰も見ていない。』

ミゥの服装が
何時もと違い
ノースリーブの
ブラウスに
ミニのタイトな
スカート。

今になって
そんな事を
急に意識してしまう
慧人。

『さあ    早く。』

『掌を。』

『ああ。
 ……………
   すご……い。
なんだか熱い。』

中の様子に
聞き耳を立てる
ティタ。

とりあえずは
黙って伺う事にした。

『こっちへ

そう………。

そこへ……
お願い………。』

机の上へ
ミゥは
…………
広げるように
…………。

『もうこんなに
熱くなって
しまっている。』

『お願い……

ミゥって
………………。』
  
『ミゥ………。

これでいい?。』

『慧人。……

いい…………
それで……。
そこに……。』

中の会話が
聞き取りにくい
ティタは
更に息を潜めて
次第に自身の
鼓動が早くなって
行くのを感じる。

『開いて。
そう
それでいい。』

『こう?。

ダメっ………
摘んだら……

ぷにぷに…
しないで。

噛んだら……
ダメっ……。』

慧人は
感触を楽しむように。

しかし
ミゥはそれを
少しだけ拒む。

『こっちは
どうだい?。』

『そっちは…
………………まだ
…………ダメっ
…………………なのにっ。』

『大丈夫………
…………ほら。』

『そんなに
かき混ぜないで
……………
………ダメっ。』

ゴクリっ……!。

ティタも
言葉の内容に
生唾を飲む。

『もうこんなに…
……………
トロトロになってる。
…………
糸を引いて……
いる…じゃないか。』

『そんなに
したらダメなのにっ
…………ばかっ。
………そう、そこ
…………。』

『入れるよ
……………
………いいかい?。』

『少し強引……
でも…………
いいわ…
………
………入れて…み…て。』

最早、
黙って見過ごす
訳には行かなく
なっているティタ。

そこへ
ひょっこり
迩椰が
現れる。

『ティタ
何やってんの?。』

『しぃーーーっ!。
        しずかにっ!』

『ふぅーん。
中にけーと
    居るんでしょ?。

    入らないの?。』

『今
それを検討中なのよ。

どきどきどきどきどきどき……

どうしょう…どうしょう
………………
……………。』

ガラガラガラっ……。

迩椰がドアを
開け放ち
空気も読まず
強行突入を果たす!。

『けーーとーー!。』

それに
仕方く
ティタも続く。

『えぇーーいっ!
慧人さん、
先生 其処までですっ!。

って、あれ?。
        …………。?』

『ん?。

二人共どーした?。』

ティタが
教室の中の
惨状を目撃するっ!。

『えぇーーと~……ん?。
ノートパソコンと

果汁グミに………

トルコ風アイスクリーム?!。』

『ああ、
先生がクロスワードが
どうしても解けないって
いうからな。』

『慧人のヤツが、
強引なんだ。

見てくれここの回答を。

4マスだって言ってるのに
これは無いだろう。』

『いや、
ちょっと面白いかと
思って……
流石に無理が有ったか。』

『クロスワード………
…………ですか。

………ですよねぇ~~~。』

ティタが力尽きて
その場へ、へたり込んで
しまった。

迩椰は迷う事無く
慧人にまっしぐらに
突進し、腰に抱き付いている。

ティタはその後
何かブツブツ呟きながら
心、此処に非ず状態に陥り、
しばらく
現世に帰って来なかったと
言う…………。
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