リュウのケイトウ

きでひら弓

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84ディソナンス5蠢く影

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『こちらレイブン

シャッテン タンゼン…だな。』 

嗄れた声の主はレイブンと
名乗った。
夜分遅くに届く通信は
専用の端末でのみ受け取る事が出来る
シャッテンを使い走りにする
何時もの命令だ。

『こちら

シャッテン タンゼン。』 

シャッテンこと千陽は気が乗ろうが
乗るまいが、この通信を無視する様な事は
絶対に許されるはずも無い。

『あたらしい仕事です。』

『何でしょう?。』

『カムイ6号機を
         奪取せよ。』

レイブンは簡単に用向きを伝える。
ミッションの難易度など
お構い無しに。

『難しいですね。

       しかし、了解です。』

出来ません等と言う反抗的な
返事は当然選択肢には入っていない。

『難易度の低い仕事など
貴方には依頼しませんよ。

そんな事は貴官に対して
失礼に値します。

もちろん、NOと言う選択肢は
存在しない訳ですがね。
ホッホッホ。』

不敵に笑い声を漏らすレイブン。
命令は絶対。
それは曲げる事の出来ない
不文律。

『実行は何時(いつ)です?。』

『7月○日
フタマル マルマルに実行せよ。
有余は一時間。
一時間以内に貴方から
連絡、もしくはカムイが此方に
到着しない場合、
二号作戦が発動します。

しかしながら、
二号作戦の発動と同時に
残念ですが貴方と妹様は
私供や世界からさよならを
して頂きますので、
どうか一号作戦をしくじりません様
よろしくお願い致しますよ。
ホッホッホッ。』

作戦を失敗した後、
この組織から逃げ仰せる確率は
ゼロに近いだろう。
ましてや妹を人質に取られていては
叶うはずもありはしない。

『必ずや
成功させてご覧にいれます。』
 
この言葉以外に告げる文言は
最早皆無と言って良い。

『そうですね。それが良い。

其れと、この一号作戦が成功した暁には
貴方はしばらくの休暇と妹様は
更なる好待遇で治療させて頂きます。

貴方がたのお父上には
多少の恩義も御座います故
何とぞ成功させて頂きたいのですよ。

こちらとしても最悪の事態だけは
回避したい所存ですので。

夢夢お忘れめされませぬ様。
ホッホッホッ。』 

レイブンは念押しするが
忘れる事が出来ようはずも無い。
千陽は早速下準備へと取り掛かる。
万が一にもミスの許されぬ
ミッションだけに。

そしてミッションが成功すれば
千陽はC組には居られなくなる。 
おそらく適性値の高さから
C組への潜入を言い渡され
過ごしては来たが
多かれ少なかれ気心の知れた仲間達との
別れはシャッテンと成りはしても
寂しく感じるものだろう。
ましてや裏切りでクラスを去るとなれば
尚更、後味の悪さだけを残し
行方を眩ますのであれば
二度と顔を合わせる事も出来なくなる。
 
その事を圧して尚、
任務に抜かりが有ってはならない事を
肝に命じ己を戒めるのであった。



◇同刻、慧人の住む家◇

『ティタ、通心の魏まで
プラーナの安定は保てそうか?。』

通心の魏
これは、ティタがまだ幼い頃
慧人の従者、巫女として覚醒するにあたり
慧人の持つマナ、プラーナを
ティタへ分け与え慧人の内へ潜む
力を引き出し使う事を可能とする
儀式なのだった。

巫女と成った者は定期的に通心の魏により
慧人のマナ、プラーナを自身に取り込み
体内のプラーナの安定を図らねば
ならないのだ。

もしも、通心の魏の期を逃し
プラーナを不安定なまま放置すれば
最悪、死に至る可能性も有り得るのだった。

『はい、
大丈夫ですよ。

次の日曜日を楽しみにしています。
ウフフ…。』

通心の魏を取り行う日取りには
巫女は主人と二人きりの時を過ごせる
特権が設けられている。

巫女であるティタは
慧人との二人きりでの所謂(いわゆる)デートを
物凄く楽しみにしているのだ。

『しかし土曜日は
夜間巡回の実習が有ったはずだな。

其れは問題ないか?。』

『不安定期に入るのは
火曜日辺りです。

土曜日でしたら問題有りませんよ。

慧人さんは心配性ですね。』

『主人(あるじ)としては
心配事は少しでも潰して置きたい物
なのだ。』

『も~~ぅ 慧人さんたらぁ~
主人だなんてぇ~~。

旦那様って お呼びした方が良い
ですわね。
ウフフフフフ…………。』

ついに、ティタのスイッチが
オンになってしまった。
こうなったティタを止めることは
最早不可能だろう。

それは天地をも創造する神ですら
成し得ない事だと 
慧人は溜め息混じりに考えていた。

『…………………。

通心の魏的、主人と言っているのだが…。

ティタ?。ティタ?。

ダメだ全く耳に入っていない…。』  

ティタは自分自身を抱くよう
腕を背中まで廻すと
クネクネ身動ぎ(みじろぎ)ながら
何やら不気味に笑い声をもらし
一人芝居の様な呟きを始め
この世の春を満喫するのであった。
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