リュウのケイトウ

きでひら弓

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87ディソナンス8カムイ強奪作戦3

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病院の屋上へ物音、気配を消し
人知れず降り立つ慧人。

7月の暑く湿った空気が
全身にまとわりつく嫌な感覚さえ
完全に遮断する黒より深い
闇を思わせる緋色のスーツを
纏い、怪しい雲行きを感じる。

空は今にも泣き出しそうだが
それだけではない
この場所の暗雲も感じさせる物だ。

屋上の扉のロックは
ゲート フリーのスキルを持って
簡単に解除する。
以前訪れた千輝の病室の
セキュリティと違い
さほど、上級なシステムは
組まれていなかった。

ドアノブを無音のスキル下で
音も無く開け放ち
辺りを警戒しつつ
後ろ手で閉める。
もう一度ロックを掛け直し
階段を下りて行く。

龍真装(りゅうまそう)と
名付けられたこのスーツには
龍真瑰を宿す者が纏う事によって
多種、多様なスキルを
実現する事が可能なのだった。

8階にはまだ人の気配が無い
屋上のドアロックをスキルによって
解除した事により館内の警報も
響く事は無かった。

近くに有った赤外線警報機を発見すると
慧人はセンサーの下部、
赤外線を発信させる場所より下の
コントロール部分へ掌を翳し
セキュリティをも掌握する。

この場所で更に
自身へ スキルを発動する。
クリア ビジョンとACS。

暗闇、隠れている者を
見通すスキル クリア ビジョン。

自身の気配を偽り
姿が見えていても気付かせる事の無い
ACS。

何方も余計な戦闘を避けるのに
打ってつけのスキルである。

7階に下りる。
この先はこの病院でも最高の
セキュリティの区画。

最初の扉はゲート フリーで
解除する。

中には歩哨が何人も居る。

入って直ぐ2人。
慧人が横を通り過ぎても
気付く事も無い。
1人は完全に目が合っている。
それでも、偽れた気配は
進入者として捉える事が出来ない。

恐らく鉢合わせしても
向こうから避けて通り過ぎる
だろう。

その奥に3人。
その更に奥には2人。
病院とは思えない物々しい警備だ。
警備に着く歩哨は何れも
武装しており、もし戦闘が起これば
死傷する者が出る事は免れないだろう。

しかし、此れだけの警備、
この先には確実に千輝が監禁されて
いる事は明白だろう。

千輝の部屋へ通ずる最後の扉の前に
黒のタキシードにシルクハット、
ピエロのような大きく裂けた口が
ふざけた笑いを浮かべる仮面の
不気味な男が佇んでいる。

『ホッホッホッ!。
どうやって此処まで辿り着いたのやら。
おかしな術を使うようですねぇ~。

しかし、他のボンクラ供と一緒に
しないで下さいねぇ~。

我が名は亜堕賦(あだふ)
立ち塞がり異端を排除する者。

私には最早貴方の怪しい術も
役に立ちません。

御覚悟を。

はいっ!。はいっ!。』

亜堕賦と名乗った仮面の男は
ダガーを投擲する。

そのダガーを大したアクションも無く
一つ二つと腕で弾き飛ばし
三つ目のダガーは素早く掴み取る慧人。

(この男と対峙している無駄な時間は無い。
月読とディメンション エラーを使うか。)

月読で亜堕賦の記憶を5分巻き戻し
空間を捻じ曲げこの男の立ち塞がる
先へ一瞬で移動する。

亜堕賦が誰も居ない通路の先を
眺めている。

『………………………………。

ダガーが二本。

私のダガーですねぇ~。

…………………。』

慧人は亜堕賦の後ろの扉を 
音も無くロックし直し、
千輝の部屋の前の最後の 
セキュリティをどう外すか
考えようとするが
その前にどう言う訳か
扉のロックが外れ
スーッと扉が開いたのだった。

慧人が龍真装を解く事も無く
病室に進入したにも関わらず
千輝は笑顔で怪しげな格好の男を
迎え入れると

『慧人さん、お待ちして居りました。
約束、覚えていて下すったのですね。』

と、待ち侘びていた様に
黒髪の美しい美少女は明るい笑顔をたたえ
出迎えてくれるのだった。
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