リュウのケイトウ

きでひら弓

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97微睡みの追憶5掛け替えの無い二つの命

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『『慧人、慧人、
ティタと迩椰を喪ってはなりません。

一刻の猶予も無い状態です。

直ぐに通心の魏を執り行い
貴方の命を分け与えるのです。

以前、迩椰に施した時に貴方に
託したお護りの結晶が自身の身体に
宿っています。

貴方の持つ王龍真瑰と
大界紫(たいかいし)の
結晶の力があれば
通心の魏を行う事が可能です。

二人の事をお願いしましたよ。』』

慧人の精神に直接語りかける言葉。
それは、顔さえも朧な(おぼろな)記憶の
母の声。

『母上、分かりました。

私も二人を亡くしたくは
ありません。

早速、執り行います。』

慧人は左手の親指の腹を
少し噛み切り出血させると
その血を一旦口に含み
まず、ティタから
口移しで自らの血液とマナを
分け与えるのだった。

其れを終えると直ぐに
迩椰にも同じ様に
口移しにて血液とマナを
分け与えた。

二人の顔に耳を近づけると
か細いかった息は
次第にしっかりした物になり
迩椰には以前お護りの結晶で
一度慧人のマナを
分け与えたいる事もあり
あれだけ酷い怪我だったにも
関わらず見る間に回復して
行くのだった。

迩椰程の回復速度はなかったが
ティタの怪我も徐々に
回復の兆しを見せ
傷口から溢れる血は止まり
顔色も土気色から
次第に血色を取り戻しつつあった。

慧人は二人の血塗られた
衣服を着替えさせてやりたかったが
その前に片付けねば成らぬ
重要な懸念が有った為
心苦しさを覚えながらも
まずはそちらを終わらせる
べく施設内全体へと
感覚を研ぎ澄ませるのだった。

慧人は二人に自らのマナを
分け与えたのだが
慧人の内にも二人より
流れ込む想いや思考、知識等があり
通心の魏により二人を巫女にした
事により一層二人と分かり合い
更にそのスキルの一部を
強化する事にも繋がっていたのだった。

通心の魏を終えたばかりの
慧人の意識は今まで以上に
冴え渡り施設内の様子を
手に取るように把握出来た。

そしてまだ多くの敵性が
存在する事を感知すると
その敵性へ向け
スキル 爆縮フェリアを
一斉に発動するのだった。

次の瞬間
あれだけ鳴り響いていた
銃声は止み
施設内には無音の静寂が
訪れたのだった。

慧人は全てが終わった事を覚ると
ティタと迩椰の衣服を
着替えさせてやる事にした。

迩椰の部屋の片隅に
子供部屋に良く似合う
パステル調のタンスがあり
その中には迩椰お気に入りの
夏服の白の可愛らしい
ワンピースが何着か用意されており
それを二枚取り出し
二人を着せ替えてやるのだった。

着替えさせた二人を
隔壁を壊してしまった
自室へと運ぶと
自分のベッドへと寝かせ
二人の頭を撫でながら
看病する様に見守る慧人。

すると頭を撫でられた迩椰が
目を覚ました。

『ん………っんうん……

けー………と

けーと…………。』

迩椰の顔をじっと見つめる慧人に
迩椰は手を伸ばしその頬に
触れる。 

慧人の体温を掌で感じ取ると
安心した様子で迩椰は
話し始めた。

『けーと 助けに来てくれたの。

ティタは?。大丈夫?。

おっかない、大人の人は?。』

まだ覚束ない意識の中
か細い小さな声で
慧人に尋ねる迩椰。

『もう、大丈夫だ迩椰。

危ない奴等は俺が全て
片付けた。

ティタの事も、もう心配ない。

安心して眠れ。』

慧人は微笑を湛えた
優しい面持ちで
迩椰に言い聞かせる。

『けーと ありがと。

ティタも大丈夫なんだね。

ねぇ、迩椰達の声 聞こえた?。』

『ああ。

聞こえたよ。

俺を呼んでくれて良かった。

おかげで、お前達二人を
救う事が出来た。

ありがとう。

まだ辛いだろう。
側に居てあげるから
ゆっくりおやすみ。』

『けーとも一緒に寝よう。

こっち。迩椰とティタの
真ん中で寝て。』

『分かった。』

二人の間に入り
横になると
直ぐに迩椰が抱きつくように
慧人に寄り添い
すやすやと気持ち良さげな
寝息を立て始めた。

迩椰の頭を優しく撫でながら
未だ意識の戻らぬティタの顔を
しばらく眺め
慧人は静かに瞼を閉じる。

大きな力を授かりながらも
二人を危険な目に遭わせて
しまった事を悔いたが
この力のおかげで
辛うじて救う事が出来たのも
事実であり
時の巡り合わせを呪いながらも
神には感謝せざるを得なかった。

慧人はしばらくそんな事を
灯も燈らなくなった
この真っ暗な施設のベッドの上で
考えていたのだった。
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