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Ⅲ
告白
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「何だ、聞いて欲しいことというのは」
店の奥の部屋に、私と殿下は二人きりになります。一応護衛の方はいますが、私の話は聞こえていないように振る舞っているので私もいないものと思っておくことにします。
このことを話すのは少し怖いですが、私は勇気を振り絞って口を開きます。
「実は、私は平民の薬屋ではないのです」
「やはりか」
一大決心の末に告げた割にはあっさりした反応で、私は拍子抜けしてしまいました。
「え、ご存知だったのですか?」
「いや、そうではないがこの年頃の娘が一人でお店を開いているのは普通ではない。しかも薬学の知識をすでに持っているということはそれなりの教育を受けているか、独学する時間的経済的余裕があったということだ。もちろん薬屋の生まれで、両親が何かの事故に遭ってしまった、という可能性はなきにしもあらずだが、そういうイレギュラーを除けば高貴な生まれだと考えるのが普通だろうな」
「なるほど」
エドモンド殿下の推察の鋭さに私は感心してしまいました。
「それで、一体どこの生まれなんだ?」
「実は私はバナード子爵家の生まれで、本名をセシリアといいます」
「バナード子爵家か……。それなら僕も聞いたことがある家だ! そうか、実は没落した名家の生まれかなどと思っていたが、現役の貴族の生まれだったのか!」
子爵家の名前を出すと、さすがの殿下もようやく驚いてくれます。別に驚いて欲しかった訳でもないのですが。
「それで一体なぜ?」
「実は……」
そして私は婚約者と幼馴染に裏切られ、無実の罪を着せられ追放されたこと、元々薬師の勉強をしていたこと、そのためこの街にやってきて薬の勉強をしていたことなどを話します。
私が話していくと、殿下の表情は少しずつ変わっていきました。
そして話し終えると、憤慨しながら言います。
「なぜそなたのような者が毒殺の罪を着せられたのだ! どう考えてもおかしいだろう!」
「はい、ですが我が家よりもグランド家とカンタール家の方が力が強かったためやむをえなかったのです。それにエリエが偽造したとはいえ、証拠があったのは事実なので」
私の部屋から毒が出た以上、第三者から見ると私の方が怪しく見えるのは仕方ないことなのでしょう。
「そうか……しかしそなたは今後ずっと冤罪を明らかにせずに薬屋として生きていくつもりだったのか?」
「はい、殿下もおっしゃっていた通り元々貴族社会はいかに出世するかばかりを考えて互いの足を引っ張り合うギスギスしたところです。だから幼馴染との関係だけ保てればいいと思っていたのですが、それも私だけでした。ならば一介の薬屋として生きていった方がましです」
もちろん商人は商人で色々あるのでしょうが、大体の目的は金や儲けであるためまだ分かりやすいです。
私の言葉に思い当たるところはあるのでしょう、殿下はしばしの間うんうんと頷いていましたが、やがて申し訳なさそうに口を開きます。
「そうか……ならば、このたびの僕の頼みは酷なことだったということだな」
「いえ、そんなことはありません! 私も薬屋としてたくさんの人を助けたいと思っていたのでそれは自分の意志で決めたことであり、殿下に申し訳なく思っていただくいわれはありません!」
「そうか」
私の言葉に殿下は少しほっとしたように頷きます。
薬師として名乗り出ることで多くの方を救えるのであれば、私が一度追い出された貴族社会と再び関わってしまうこともやむをえないことです。
「ですが、もしまた貴族社会に出るのであれば当然その時のことが話題に上がるのでしょう。そのため、殿下の耳には先にお入れしておきたかったのです」
「……なるほど、よく分かった。話してくれてありがとう。とはいえ、そなたが紅熱病の解決に尽力したことを話せば周りの者たちも絶対に冤罪については弁解の機会を与えてくれるはずだし、僕もそれに尽力しよう」
殿下の力強い言葉に私は安心しました。
殿下が私を守ってくださるのであれば病気に苦しむ人々を助けるために再び貴族社会に戻るのも仕方のないことでしょう。
私はそう決めたのです。
店の奥の部屋に、私と殿下は二人きりになります。一応護衛の方はいますが、私の話は聞こえていないように振る舞っているので私もいないものと思っておくことにします。
このことを話すのは少し怖いですが、私は勇気を振り絞って口を開きます。
「実は、私は平民の薬屋ではないのです」
「やはりか」
一大決心の末に告げた割にはあっさりした反応で、私は拍子抜けしてしまいました。
「え、ご存知だったのですか?」
「いや、そうではないがこの年頃の娘が一人でお店を開いているのは普通ではない。しかも薬学の知識をすでに持っているということはそれなりの教育を受けているか、独学する時間的経済的余裕があったということだ。もちろん薬屋の生まれで、両親が何かの事故に遭ってしまった、という可能性はなきにしもあらずだが、そういうイレギュラーを除けば高貴な生まれだと考えるのが普通だろうな」
「なるほど」
エドモンド殿下の推察の鋭さに私は感心してしまいました。
「それで、一体どこの生まれなんだ?」
「実は私はバナード子爵家の生まれで、本名をセシリアといいます」
「バナード子爵家か……。それなら僕も聞いたことがある家だ! そうか、実は没落した名家の生まれかなどと思っていたが、現役の貴族の生まれだったのか!」
子爵家の名前を出すと、さすがの殿下もようやく驚いてくれます。別に驚いて欲しかった訳でもないのですが。
「それで一体なぜ?」
「実は……」
そして私は婚約者と幼馴染に裏切られ、無実の罪を着せられ追放されたこと、元々薬師の勉強をしていたこと、そのためこの街にやってきて薬の勉強をしていたことなどを話します。
私が話していくと、殿下の表情は少しずつ変わっていきました。
そして話し終えると、憤慨しながら言います。
「なぜそなたのような者が毒殺の罪を着せられたのだ! どう考えてもおかしいだろう!」
「はい、ですが我が家よりもグランド家とカンタール家の方が力が強かったためやむをえなかったのです。それにエリエが偽造したとはいえ、証拠があったのは事実なので」
私の部屋から毒が出た以上、第三者から見ると私の方が怪しく見えるのは仕方ないことなのでしょう。
「そうか……しかしそなたは今後ずっと冤罪を明らかにせずに薬屋として生きていくつもりだったのか?」
「はい、殿下もおっしゃっていた通り元々貴族社会はいかに出世するかばかりを考えて互いの足を引っ張り合うギスギスしたところです。だから幼馴染との関係だけ保てればいいと思っていたのですが、それも私だけでした。ならば一介の薬屋として生きていった方がましです」
もちろん商人は商人で色々あるのでしょうが、大体の目的は金や儲けであるためまだ分かりやすいです。
私の言葉に思い当たるところはあるのでしょう、殿下はしばしの間うんうんと頷いていましたが、やがて申し訳なさそうに口を開きます。
「そうか……ならば、このたびの僕の頼みは酷なことだったということだな」
「いえ、そんなことはありません! 私も薬屋としてたくさんの人を助けたいと思っていたのでそれは自分の意志で決めたことであり、殿下に申し訳なく思っていただくいわれはありません!」
「そうか」
私の言葉に殿下は少しほっとしたように頷きます。
薬師として名乗り出ることで多くの方を救えるのであれば、私が一度追い出された貴族社会と再び関わってしまうこともやむをえないことです。
「ですが、もしまた貴族社会に出るのであれば当然その時のことが話題に上がるのでしょう。そのため、殿下の耳には先にお入れしておきたかったのです」
「……なるほど、よく分かった。話してくれてありがとう。とはいえ、そなたが紅熱病の解決に尽力したことを話せば周りの者たちも絶対に冤罪については弁解の機会を与えてくれるはずだし、僕もそれに尽力しよう」
殿下の力強い言葉に私は安心しました。
殿下が私を守ってくださるのであれば病気に苦しむ人々を助けるために再び貴族社会に戻るのも仕方のないことでしょう。
私はそう決めたのです。
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