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エトワール公爵家後日譚 怒られるマリー
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「一体どういうことだ!」
パーティーが終わった(というよりは滅茶苦茶になって解散しただけだが)後、屋敷に帰るなり父である公爵でもあるウルスはマリーに怒りをぶつけた。
彼からすれば、自分が預かり知らぬ婚約破棄の計画をマリーが勝手に練り上げてそれが失敗し、後に残ったのは醜態の記憶と悪評だけだった。
「すみませんお父様……」
「すみませんじゃない、どういうことかと聞いてるんだ!」
「あなた、マリーはもう十分反省しているわ。それぐらいにしておいてあげて」
いつも通りマリーに甘いオードリーがとりなそうとするが、今日ばかりはウルスもおれなかった。そんなオードリーをぎろりと睨みつける。
「反省している? こいつは本当に分かっているのか? いいか、今日の件で我が家はクローム公爵家との繋がりは失われ、しかも他の家からは娘の教育もしっかり出来ない無能と思われるようになったんだ!」
「娘の教育もしっかり出来ない無能」というのは当たっていたが、それは棚に上げられた。要は彼もマリーのしたことが悪かったから怒っているのではなく、単に自分の面子が潰れたことに怒っているだけであった。
「ごめんなさいお父様、まさかこうなるとは思わなくて、でもオリバーが無理にって言うから断れなくて……」
そしてそんなウルスに対してマリーはなおもいつものように泣き落としで解決しようとする。ウルスはマリーの泣き落としに興味はなかったが、オリバーが無理に誘ってきたというところにくいつく。
うまくいけば全てオリバーのせいに出来るかもしれない。ウルスはそれを唯一の希望とした。
娘が娘なら父も父であった。
「本当にオリバーが悪いのか?」
「は、はい!」
「そうか、なら証拠を見せてくれ。エレナが手紙がどうとか言っていた以上、オリバーからそういう風に言われた証拠はあるんだろうな?」
「えぇ……」
その瞬間、マリーの顔が絶望に染まる。手紙はあるが、その中にはマリーからオリバーにささやいた愛の言葉もたくさん書かれている。それを見られればマリーにも非があることが明らかになってしまう。
そんなマリーの反応を見てウルスはブチ切れた。
「全く、今までお前の我がままを全部聞いてやったのに、恩をあだで返しやがって!」
「そ、そんなこと言うのは酷いわ」
オードリーがとりなそうとするも、もはやウルスの耳には届かない。
ウルスもマリーもどちらも事ここにいたっても自分のことしか考えていなかった。
「うるさい! もう何もかもが滅茶苦茶だ」
が、そこへマリーの兄であるケリンが騒ぎを聞きつけてやってくる。
「まあまあ父上、うちの娘が王家に嫁いだのです。評判は悪くなりましたが、王家とのパイプが出来たと考えるとむしろプラスでは?」
「何だと?」
それを聞いてウルスは絶句した。今回の件で王家から蔑まれることはあっても、パイプなど何も出来ていないだろう。それなのになぜこいつはこんな呑気なことを言っているのだろうか。
それと同時に自分がこんな人物に家督を継がせようとしていたことが急激に不安に思えてくる。
とはいえウルス自身もこんなことになった以上もはやどうしていいのか分からなかった。
「……もうお前たちには愛想が尽きた」
そう言ってウルスは部屋に引きこもるのだった。
後には泣きわめくマリーと彼女をあやそうとするオードリー、そして未だに今回の件の何が問題だったのかをいまいち理解していないケリンが取り残されたのだった。
パーティーが終わった(というよりは滅茶苦茶になって解散しただけだが)後、屋敷に帰るなり父である公爵でもあるウルスはマリーに怒りをぶつけた。
彼からすれば、自分が預かり知らぬ婚約破棄の計画をマリーが勝手に練り上げてそれが失敗し、後に残ったのは醜態の記憶と悪評だけだった。
「すみませんお父様……」
「すみませんじゃない、どういうことかと聞いてるんだ!」
「あなた、マリーはもう十分反省しているわ。それぐらいにしておいてあげて」
いつも通りマリーに甘いオードリーがとりなそうとするが、今日ばかりはウルスもおれなかった。そんなオードリーをぎろりと睨みつける。
「反省している? こいつは本当に分かっているのか? いいか、今日の件で我が家はクローム公爵家との繋がりは失われ、しかも他の家からは娘の教育もしっかり出来ない無能と思われるようになったんだ!」
「娘の教育もしっかり出来ない無能」というのは当たっていたが、それは棚に上げられた。要は彼もマリーのしたことが悪かったから怒っているのではなく、単に自分の面子が潰れたことに怒っているだけであった。
「ごめんなさいお父様、まさかこうなるとは思わなくて、でもオリバーが無理にって言うから断れなくて……」
そしてそんなウルスに対してマリーはなおもいつものように泣き落としで解決しようとする。ウルスはマリーの泣き落としに興味はなかったが、オリバーが無理に誘ってきたというところにくいつく。
うまくいけば全てオリバーのせいに出来るかもしれない。ウルスはそれを唯一の希望とした。
娘が娘なら父も父であった。
「本当にオリバーが悪いのか?」
「は、はい!」
「そうか、なら証拠を見せてくれ。エレナが手紙がどうとか言っていた以上、オリバーからそういう風に言われた証拠はあるんだろうな?」
「えぇ……」
その瞬間、マリーの顔が絶望に染まる。手紙はあるが、その中にはマリーからオリバーにささやいた愛の言葉もたくさん書かれている。それを見られればマリーにも非があることが明らかになってしまう。
そんなマリーの反応を見てウルスはブチ切れた。
「全く、今までお前の我がままを全部聞いてやったのに、恩をあだで返しやがって!」
「そ、そんなこと言うのは酷いわ」
オードリーがとりなそうとするも、もはやウルスの耳には届かない。
ウルスもマリーもどちらも事ここにいたっても自分のことしか考えていなかった。
「うるさい! もう何もかもが滅茶苦茶だ」
が、そこへマリーの兄であるケリンが騒ぎを聞きつけてやってくる。
「まあまあ父上、うちの娘が王家に嫁いだのです。評判は悪くなりましたが、王家とのパイプが出来たと考えるとむしろプラスでは?」
「何だと?」
それを聞いてウルスは絶句した。今回の件で王家から蔑まれることはあっても、パイプなど何も出来ていないだろう。それなのになぜこいつはこんな呑気なことを言っているのだろうか。
それと同時に自分がこんな人物に家督を継がせようとしていたことが急激に不安に思えてくる。
とはいえウルス自身もこんなことになった以上もはやどうしていいのか分からなかった。
「……もうお前たちには愛想が尽きた」
そう言ってウルスは部屋に引きこもるのだった。
後には泣きわめくマリーと彼女をあやそうとするオードリー、そして未だに今回の件の何が問題だったのかをいまいち理解していないケリンが取り残されたのだった。
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