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アレクの醜態
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それから私たちは屋敷に戻ると、バーンズ家と、バーンズ家が肩入れしているルイーズ家に不利な証拠を探す作業を始めた。
ダンフォード家の手先のようなことをするのは私にとっても嫌なものがあるが、私の予想ではうちが復興する際には領地が必要だが、ダンフォード家が昔うちから巻き上げていった領地を返してくれるとは思えない。ということは、バーンズ家から取り上げた領地か、もしくはバーンズ家から取り上げた領地を交換する形でダンフォード家から土地を返してもらうかだろう。
そのためにはやはりダンフォード家に協力しなければならない。
私は表立って動くのは憚られる立場でもあるので兄から預かった資料を読んでバーンズ家の帳簿の誤りや偽装を探していたが、ぽつぽつと見つかっていった。
そんなある日のことである。
「お嬢様、ちょっといいでしょうか?」
メイドのシンディが眉をひそめながら私に話しかけてくる。
「何かしら?」
「それが、突然アレク様がやってきて、お嬢様に会いたいと」
「アレクが?」
前回私はアレクが婚約の提案を持ってきた時、一度返事を保留にして返してから手紙で断ったため、あれ以来彼と会っていない。
「はい、事前の連絡もないのに来るのは無礼だと遠回しにお伝えしたのですが、引き下がる様子もなく……どうしましょう?」
前回来た時も必死そうだったので、それくらいでは引き下がらないだろう。最終手段として屋敷の警備兵に頼むという手もあるが、仮にも公爵家の跡取りである彼を武力で排除すればうちにも良くない評判が立ってしまうかもしれない。
というか、本来であればこんなことをしているアレクに悪評が立つのであるが、向こうはどの道ダンフォード家に睨まれている以上そんなことはもはやどうでもいいのだろう。
「……分かりました。ですが会うのは庭先で」
せめて彼に歓迎していないという意志を伝えるため、私は屋敷の建物の外で会うことにする。
シンディがそのことをアレクに伝えに戻った後、私は一応身なりを整えて庭に出る。
するとそこにはこの前会った時とは別人のように焦燥したアレクが待っていた。この前は見苦しいところはあったが一応貴族の嫡男としての身なりを維持していたアレクだったが、今日は服のあちこちがやつれたり汚れたりしており、髪もぼさぼさ、肌も少し汚れていてどちらかというと風来坊に近い。
もっとも、その割に服装は元は上等な服だったため違和感はあるが。
「ベティ、会いたかった!」
そんな彼が私の姿を見るなり目を輝かせたので私は彼の勢いに少し怖くなる。
「い、一体何があったの!?」
「聞いてくれ、あれから僕は屋敷を追い出されてしまったんだ!」
「なぜ?」
「父上は僕がベティの協力をとりつけられなかったことを大層怒っていて、家から追い出されてしまったんだ!」
「それは……」
この時はアレクが自分に都合の悪いことを深く語らなかったので、さすがに屋敷を追い出されたのは可哀想、と思ってしまった。
後で理由を知った時はなるほどと思ったし、この時のアレクは追い出されたというよりは自分から飛び出したという方が正確なようだったが。
「今は僕は知り合いの家を渡り歩いているが、あまり一か所に長くいると迷惑がかかるかもしれないと思って長居も出来ないんだ!」
そう言ってアレクは自分の不幸な境遇を強調する。
彼は心の底から自分を悲劇の主人公と思い込んでいるようで、彼の言葉には何とも言えない迫力があった。
そのため、つい私も彼に同情を引かれそうになってしまう。
「そ、それで一体何? 婚約なら無理だけど」
「婚約はもういい。せめて僕だけは助けてくれ!」
「はあ?」
それを聞いて私は一層困惑するのだった。
ダンフォード家の手先のようなことをするのは私にとっても嫌なものがあるが、私の予想ではうちが復興する際には領地が必要だが、ダンフォード家が昔うちから巻き上げていった領地を返してくれるとは思えない。ということは、バーンズ家から取り上げた領地か、もしくはバーンズ家から取り上げた領地を交換する形でダンフォード家から土地を返してもらうかだろう。
そのためにはやはりダンフォード家に協力しなければならない。
私は表立って動くのは憚られる立場でもあるので兄から預かった資料を読んでバーンズ家の帳簿の誤りや偽装を探していたが、ぽつぽつと見つかっていった。
そんなある日のことである。
「お嬢様、ちょっといいでしょうか?」
メイドのシンディが眉をひそめながら私に話しかけてくる。
「何かしら?」
「それが、突然アレク様がやってきて、お嬢様に会いたいと」
「アレクが?」
前回私はアレクが婚約の提案を持ってきた時、一度返事を保留にして返してから手紙で断ったため、あれ以来彼と会っていない。
「はい、事前の連絡もないのに来るのは無礼だと遠回しにお伝えしたのですが、引き下がる様子もなく……どうしましょう?」
前回来た時も必死そうだったので、それくらいでは引き下がらないだろう。最終手段として屋敷の警備兵に頼むという手もあるが、仮にも公爵家の跡取りである彼を武力で排除すればうちにも良くない評判が立ってしまうかもしれない。
というか、本来であればこんなことをしているアレクに悪評が立つのであるが、向こうはどの道ダンフォード家に睨まれている以上そんなことはもはやどうでもいいのだろう。
「……分かりました。ですが会うのは庭先で」
せめて彼に歓迎していないという意志を伝えるため、私は屋敷の建物の外で会うことにする。
シンディがそのことをアレクに伝えに戻った後、私は一応身なりを整えて庭に出る。
するとそこにはこの前会った時とは別人のように焦燥したアレクが待っていた。この前は見苦しいところはあったが一応貴族の嫡男としての身なりを維持していたアレクだったが、今日は服のあちこちがやつれたり汚れたりしており、髪もぼさぼさ、肌も少し汚れていてどちらかというと風来坊に近い。
もっとも、その割に服装は元は上等な服だったため違和感はあるが。
「ベティ、会いたかった!」
そんな彼が私の姿を見るなり目を輝かせたので私は彼の勢いに少し怖くなる。
「い、一体何があったの!?」
「聞いてくれ、あれから僕は屋敷を追い出されてしまったんだ!」
「なぜ?」
「父上は僕がベティの協力をとりつけられなかったことを大層怒っていて、家から追い出されてしまったんだ!」
「それは……」
この時はアレクが自分に都合の悪いことを深く語らなかったので、さすがに屋敷を追い出されたのは可哀想、と思ってしまった。
後で理由を知った時はなるほどと思ったし、この時のアレクは追い出されたというよりは自分から飛び出したという方が正確なようだったが。
「今は僕は知り合いの家を渡り歩いているが、あまり一か所に長くいると迷惑がかかるかもしれないと思って長居も出来ないんだ!」
そう言ってアレクは自分の不幸な境遇を強調する。
彼は心の底から自分を悲劇の主人公と思い込んでいるようで、彼の言葉には何とも言えない迫力があった。
そのため、つい私も彼に同情を引かれそうになってしまう。
「そ、それで一体何? 婚約なら無理だけど」
「婚約はもういい。せめて僕だけは助けてくれ!」
「はあ?」
それを聞いて私は一層困惑するのだった。
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