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事件の真相

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 それから数日後のことである。
 私の元にメイドのシンディが分厚い包みを持ってくる。

「ベティ様、アレク様からの手紙が届いています」
「ありがとう」

 私はシンディから分厚い紙が入っていると思われる包みを受け取る。
 よほどたくさんの紙が入っているのか、手に持つとずっしりとした重みが手にのしかかる。

 アレクは私の頼みを律儀に聞き、ちゃんと資料を見つけてくれたらしい。本当に屋敷から追い出されたんだとすればよく頑張ったとは思うが。

 包みを開けると、中には乱雑に様々な書類が入れられていた。
 おそらくではあるが、アレクは屋敷の中から片っ端から関係ありそうな書類をあさってそれを適当に私に送りつけたのではないか。

 その中に私が頼んだとは別に重要な書類が紛れ込んでしまったらどうするのだろう、と思ったが冷静に考えたがもはや彼にとってはそんなことはどうでもいいのだろう。

 そんなことを考えつつ書類をめくっていくと、興味深い内容が見つかる。
 それによるとどうやらバーンズ家はダンフォード家とは元々は仲が良かったらしい。元々うちが潰された時にバーンズ家がダンフォード家に味方したのだから当たり前と言えば当たり前だが。

 そして書類の中にはバーンズ公がダンフォード公に送った手紙の下書きと思われる紙が混ざっていた。下書きとはいえそんな大事なものが混ざっているとは。アレクも私に送りつける前に中身を確認すれば良かったのに、と思うが
私の歓心を買うために少しでも情報量が多いと思って全部送って来たのに。

 そんな手紙の下書きを見ていくと、私は気になる記述を見つけた。

『ターナー家取り潰しの折には我が家があれほど協力したのにこのたび我が家に対して矛を向けるのは非道ではありませんか? そのようなことをしていてはいくら現在権勢をふるっていても長くはありません。逆にもしここで我らに寛大な処遇をしてくだされば我らは末永くダンフォード家にお味方するでしょう……』

「あれほど協力した?」

 その一文を見て私は凍り付く。
 私の知る限りではバーンズ家はダンフォード家がうちを潰そうとした時に、やむなくそれに同調しただけだった。
 しかし手紙にははっきりと「協力した」と書かれている。この手紙はダンフォード公に媚びを売るものだし、下書きだから信憑性が高いとは言えない。だからといって、公爵がそのように考えていると分かると、私は怒りが湧いてきた。

 アレクはうちを陥れたことを仕方なかった、と言っていたが全然仕方なくはないではないか。
 そっちがその気だったのなら私も容赦はしない。

 それから他の手紙もめくっていくと、うち以外にも他の家がダンフォード家に睨まれている時にダンフォード家の手助けをしてきたことが書かれており、「共闘した間柄」「ダンフォード公を信じていた」などのきれいごとがつらつらと書かれている。 

 一通りの手紙を読み終えると、私は改めて決意した。
 ダンフォード公は領地争いの件でバーンズ家に圧力を潰すようだが、それだけでは済まさない。過去の悪事も調べてその分の罪も背負ってもらう。

 私はそう決めたのだった。

 アレクから資料をもらった私は早速兄のクレフトと話すことに決めた。
 ダンフォード家の別邸にいた兄の元に向かう。
 兄は最近は復興のために色々頑張っているのだろう、いきいきして見えた。

「随分早いな」
「はい、ですが今回私が手に入れた資料はどちらかというと今回の件についてというよりは、バーンズ家の過去の悪事です」
「過去の悪事?」

 それを聞いて兄上は首をかしげる。
 そして私は自分が知った事実を話すことに決めた。

「それが、バーンズ公爵はどうもダンフォード公爵に取り入るために、ダンフォード公爵家が他家を潰すのに加担していたようなのです」

 それを聞くと兄上は表情を変えた。

「ということはもしかして……」
「……ターナー家の時も、バーンズ家はダンフォード公爵家にも加担していたようです」
「何だと!?」
「これがその、アレクからもらった資料です」

 私がダンフォード公爵の手紙の下書きを兄に見せる。
 最初は疑わし気に紙をめくっていた兄上だったが、どんどん表情が変わっていく。

「もしバーンズ家が他の家を潰すのにも加担していたということが広まれば、他の貴族家もバーンズ家に対して敵意を持つでしょう」
「なるほど。しかしまさかこの資料をアレクが自分で差し出すとは」
「おそらく、屋敷で見つけたものを適当に送って来ただけで、どのようなものを送ったかすら見ていないのでは?」

 それを聞いた兄は苦笑する。

「なるほど……分かった、ならばこの手紙を見せて他の家にも協力をあおごう。……ありがとう、これで恐らくクラウス殿も我らの手柄を認めてくれるだろう」
「はい、それなら良かったです」
「ああ、後は僕に任せてくれ」

 そう言ってクレフトは胸をたたくのだった。
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