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神巫
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その後さらに数か月の時が過ぎていきました。今年は神様の力が強まってきたためか、与えられる加護の力も強まっていた。また、各地で災害や魔物の出現が収まり、さらに作物も豊かに実るようになるなど、ネクスタ王国・エルドラン王国の両国でいい変化が現れました。
また、副産物としてそれを見たデュアノス帝国からも神への信仰を取り戻す者がぽつぽつ現れました。デュアノス帝国は人々の技術力で発展してきましたが、やはり隣国の加護がうらやましくなたtのでしょう。
大昔はデュアノス帝国の地に住む者も神を信仰していましたが、そこでは神の力が失われると信仰を失い、人々は技術や道具を発展させていったようです。そのため、今後はこちらが信仰や神の加護を分け与える代わりに技術をもらうという交流も進むのかもしれません。
他にはハリス殿下の妹とネクスタ王国新王陛下の婚約も決まりました。政略結婚ではありますが、両国の人々に祝福されての婚約ですので幸せになってくれるでしょう。
というような様々なことが済んだ後のことです。そろそろ殿下は竜国へ戻らなければならない時が迫っていました。そんなとき私はハリス殿下に呼び出されます。
「何でしょう?」
私は殿下が執務室として使っている王宮の一室に入ります。
すると殿下はいつになく緊張の面持ちをしていました。帝国の脅威が去り、神様が力を取り戻してからこのような表情を見せるのは珍しいことです。
一体何かあったのだろうか、と不安になってしまいます。
「ずっと言おうと思っていたが、色々と忙しくて、いや忙しさを理由に言えなかった。しかし僕はもう国に戻らないといけない。だからその前にぜひとも言っておかねばならなかったことがある」
殿下の真剣な表情から私は何となく用件を察しました。
そして私が感じていた不安は一気に緊張へと変わっていきます。
「はい、私も殿下がこのまま帰ってしまうのかと寂しく思っていました」
「そうか。そう言ってもらえると嬉しいと言うべきか、心配させてしまって申し訳ないと言うべきか。改めて言おう。僕はそなたと結婚したい」
殿下は強い決意とともにその言葉を私にかけてくださりました。
彼の表情は竜の巫女を選んだ時や帝国と戦った時よりも真剣でした。そんな彼の真剣さが私にも伝播し、私の鼓動は速くなっていきます。
「最初は竜の巫女の素質があるからと思って我が国に連れてきたが、シンシアは知らない土地でも懸命に僕たちのために努力してくれた。巫女に選ばれても奢ることなくどうすればいいのかを常に考えてくれた。僕はそんなシンシアの優しさとひたむきに次第に心を動かされていったんだ」
殿下の言葉に私は体の奥底からじんわりと幸福感が湧き上がってくるのを感じます。私もここしばらく、常に殿下と過ごすうちに同じ気持ちになっていましたし、殿下が私に好意を抱いてくれているのを感じていました。
とはいえ、一国の王子である殿下と他国の民に過ぎない私が結ばれる、ということはなかなか具体的に想像出来ずにいました。そのため、殿下の言葉は私にとってとても嬉しいものです。
「はい、私もです。殿下は強くて決断力に富み、いつも国のために動いていました。考えなければならないことがたくさんあるはずなのに、いつも私のことを第一に考えてくださってとても嬉しかったです。竜に会いに行くときはいつも一緒に来て下さいましたし、帝国から手紙が来たときは私の身を第一に考えてくださって嬉しかったです」
「そう言ってくれて嬉しいよ。僕も帝国と戦う時、反対はしたけどシンシアがついてきてくれて嬉しかった。それに、シンシアが隣にいたからこそより一層本気で戦うことが出来たというのもあるしね」
そう言って殿下は真剣な表情を緩ませ、少し照れたように顔を赤くします。
「本当はもっと早く思いを告げたかったんだが、もしシンシアがネクスタ王国の聖女に復帰するのであれば僕らは結ばれることが出来ない。そう思って伝えられなかったんだ」
「そうだったのですね」
ちなみに神巫は特にどこにいなければならないという決まりもないため、私が竜国に嫁いでも特に問題はなさそうです。
こうして、お互いを隔てる障壁がなくなり、気持ちも通じ合っていることを確認した上で殿下は告げます。
「と言う訳で僕と一緒にエルドラン王国に戻ってきてくれないか?」
「はい、喜んで」
そう言って私は殿下が差し出した手を取ったのでした。
それから、私たちがエルドラン王国に帰った二か月ほど後に盛大な結婚式が開かれました。
各国の有力者はもちろんのこと、一時はライバルだったけど最近は国のために私に協力してくれていたアリサ、竜国いる間ずっとお世話をしてくれたエリエといった人々。また、ルイードやエメラルダといったネクスタ王国方々。そして帝国からも友好のために使者が訪れ、三国の人が集まる華やかな式となりました。
また、人々だけではありません。御使様やガルドら竜たちも式場から少し離れたところで私たちの晴れ姿を見守ってくれています。
式は王宮の広い庭で行われましたが、広大な庭もたくさんの参列者によって今日だけは狭く感じるほどです。
そんなたくさんの人々が見守る中、私とハリス殿下は式場の中央に現れます。私たちの姿に広い会場に集まった人々から一斉に歓声が上がりました。
「シンシアは自分が辛い時でもいつも僕やたくさんの人々のために頑張ってくれた。だから私ハリスはこれからどんなことがあってもシンシアの味方であり続け、彼女を守り、いつも傍にいることを誓おう」
「ハリス殿下は一国の王太子という重責を担う身分でありながら常に国民だけなく、私の身を案じ、助けてくれました。そのため私シンシアは今後末永くハリス殿下の隣にいて、彼の支えになりたいと思います」
そう言って私たちは互いに歩み寄り、殿下が少し顔を下げて私の唇に口づけをしたのでした。
こうして、私の追放から始まった一連の事件は途中で様々なことが起こったものの、国は豊かになり、私はハリス殿下という素晴らしい方とめぐり合うことができ、結果として事件開始前よりも遥かに幸せな形で結末を迎えることが出来たのでした。
最初は聖女として呼ばれたのになぜ追放されたのか、と自分の運命を恨むこともありましたが、今では周囲の人々を救い、殿下と結ばれることが出来て本当に良かったと思っています。
===
最後までお付き合いいただきありがとうございます。
無事完結させることが出来て本当に良かったです。
よろしければ他作品もご覧ください。
また、副産物としてそれを見たデュアノス帝国からも神への信仰を取り戻す者がぽつぽつ現れました。デュアノス帝国は人々の技術力で発展してきましたが、やはり隣国の加護がうらやましくなたtのでしょう。
大昔はデュアノス帝国の地に住む者も神を信仰していましたが、そこでは神の力が失われると信仰を失い、人々は技術や道具を発展させていったようです。そのため、今後はこちらが信仰や神の加護を分け与える代わりに技術をもらうという交流も進むのかもしれません。
他にはハリス殿下の妹とネクスタ王国新王陛下の婚約も決まりました。政略結婚ではありますが、両国の人々に祝福されての婚約ですので幸せになってくれるでしょう。
というような様々なことが済んだ後のことです。そろそろ殿下は竜国へ戻らなければならない時が迫っていました。そんなとき私はハリス殿下に呼び出されます。
「何でしょう?」
私は殿下が執務室として使っている王宮の一室に入ります。
すると殿下はいつになく緊張の面持ちをしていました。帝国の脅威が去り、神様が力を取り戻してからこのような表情を見せるのは珍しいことです。
一体何かあったのだろうか、と不安になってしまいます。
「ずっと言おうと思っていたが、色々と忙しくて、いや忙しさを理由に言えなかった。しかし僕はもう国に戻らないといけない。だからその前にぜひとも言っておかねばならなかったことがある」
殿下の真剣な表情から私は何となく用件を察しました。
そして私が感じていた不安は一気に緊張へと変わっていきます。
「はい、私も殿下がこのまま帰ってしまうのかと寂しく思っていました」
「そうか。そう言ってもらえると嬉しいと言うべきか、心配させてしまって申し訳ないと言うべきか。改めて言おう。僕はそなたと結婚したい」
殿下は強い決意とともにその言葉を私にかけてくださりました。
彼の表情は竜の巫女を選んだ時や帝国と戦った時よりも真剣でした。そんな彼の真剣さが私にも伝播し、私の鼓動は速くなっていきます。
「最初は竜の巫女の素質があるからと思って我が国に連れてきたが、シンシアは知らない土地でも懸命に僕たちのために努力してくれた。巫女に選ばれても奢ることなくどうすればいいのかを常に考えてくれた。僕はそんなシンシアの優しさとひたむきに次第に心を動かされていったんだ」
殿下の言葉に私は体の奥底からじんわりと幸福感が湧き上がってくるのを感じます。私もここしばらく、常に殿下と過ごすうちに同じ気持ちになっていましたし、殿下が私に好意を抱いてくれているのを感じていました。
とはいえ、一国の王子である殿下と他国の民に過ぎない私が結ばれる、ということはなかなか具体的に想像出来ずにいました。そのため、殿下の言葉は私にとってとても嬉しいものです。
「はい、私もです。殿下は強くて決断力に富み、いつも国のために動いていました。考えなければならないことがたくさんあるはずなのに、いつも私のことを第一に考えてくださってとても嬉しかったです。竜に会いに行くときはいつも一緒に来て下さいましたし、帝国から手紙が来たときは私の身を第一に考えてくださって嬉しかったです」
「そう言ってくれて嬉しいよ。僕も帝国と戦う時、反対はしたけどシンシアがついてきてくれて嬉しかった。それに、シンシアが隣にいたからこそより一層本気で戦うことが出来たというのもあるしね」
そう言って殿下は真剣な表情を緩ませ、少し照れたように顔を赤くします。
「本当はもっと早く思いを告げたかったんだが、もしシンシアがネクスタ王国の聖女に復帰するのであれば僕らは結ばれることが出来ない。そう思って伝えられなかったんだ」
「そうだったのですね」
ちなみに神巫は特にどこにいなければならないという決まりもないため、私が竜国に嫁いでも特に問題はなさそうです。
こうして、お互いを隔てる障壁がなくなり、気持ちも通じ合っていることを確認した上で殿下は告げます。
「と言う訳で僕と一緒にエルドラン王国に戻ってきてくれないか?」
「はい、喜んで」
そう言って私は殿下が差し出した手を取ったのでした。
それから、私たちがエルドラン王国に帰った二か月ほど後に盛大な結婚式が開かれました。
各国の有力者はもちろんのこと、一時はライバルだったけど最近は国のために私に協力してくれていたアリサ、竜国いる間ずっとお世話をしてくれたエリエといった人々。また、ルイードやエメラルダといったネクスタ王国方々。そして帝国からも友好のために使者が訪れ、三国の人が集まる華やかな式となりました。
また、人々だけではありません。御使様やガルドら竜たちも式場から少し離れたところで私たちの晴れ姿を見守ってくれています。
式は王宮の広い庭で行われましたが、広大な庭もたくさんの参列者によって今日だけは狭く感じるほどです。
そんなたくさんの人々が見守る中、私とハリス殿下は式場の中央に現れます。私たちの姿に広い会場に集まった人々から一斉に歓声が上がりました。
「シンシアは自分が辛い時でもいつも僕やたくさんの人々のために頑張ってくれた。だから私ハリスはこれからどんなことがあってもシンシアの味方であり続け、彼女を守り、いつも傍にいることを誓おう」
「ハリス殿下は一国の王太子という重責を担う身分でありながら常に国民だけなく、私の身を案じ、助けてくれました。そのため私シンシアは今後末永くハリス殿下の隣にいて、彼の支えになりたいと思います」
そう言って私たちは互いに歩み寄り、殿下が少し顔を下げて私の唇に口づけをしたのでした。
こうして、私の追放から始まった一連の事件は途中で様々なことが起こったものの、国は豊かになり、私はハリス殿下という素晴らしい方とめぐり合うことができ、結果として事件開始前よりも遥かに幸せな形で結末を迎えることが出来たのでした。
最初は聖女として呼ばれたのになぜ追放されたのか、と自分の運命を恨むこともありましたが、今では周囲の人々を救い、殿下と結ばれることが出来て本当に良かったと思っています。
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最後までお付き合いいただきありがとうございます。
無事完結させることが出来て本当に良かったです。
よろしければ他作品もご覧ください。
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