婚約者が選んだのは私から魔力を盗んだ妹でした

今川幸乃

文字の大きさ
24 / 38

暴露

「ちょっと、一体どういうこと!?」

 その翌日、私の元に血相を変えた母上がやってきます。
 あれから特に何もしていなかった私は困惑しました。

「一体何の話でしょうか?」
「とぼけないで! リリーが使っている精霊はあなたから奪ったものだっていう噂が流れているの! これはあなたがやったんでしょう!?」
「え」

 それを聞いて私はさらに困惑します。
 確かにそういう噂を流そうと考えたことはありました。何せこの秘密が知れ渡ればもはや私がリリーに精霊を返す必要はなくなるでしょう。

 自分の利益だけを考えればすぐにでもそうすべきだったのかもしれませんが、これまでずっと秘密にしてきたということもあってあと一歩ふんきりがつきませんでした。

 それなのに私以外にそれをした人物がいるなんて。一体何でそんなことをしたのでしょうか。
 それともテイラー伯爵家でそのことを知った使用人から自然に漏れてしまったのでしょうか。

「ちょっと、何黙っているの!? 何とか言いなさいよ!」

 私が考えていると、母上は畳みかけるように言ってきます。

「いや、そう言われても私は何もしていませんが……」
「じゃあ一体誰がやったって言うの!? あなたがリリーのことが疎ましくなってやったんでしょう!?」

 そう言って母上は私の胸倉を掴んできます。
 疎ましくなかったと言えば嘘になりますが、やってないものはやってません。

「テイラー伯爵家の使用人から漏れた可能性はあると思いますが……」
「そ、そんな……それは本当なの!?」
「いや、だから私は何も知りませんって」
「何よ、そんな無責任な! やっぱりあなたには血も涙もないんだわ!」

 もはやこうなっては理屈も何もあったものではありません。私が何を言っても、もしくは何も言わなくても母上はひたすらに私を罵倒してきます。
 これはもう気が済むまで待つしかないか、と諦めかけた時でした。

「お待ちください」

 不意に第三者の声が聞こえます。

「だ、誰よ」

 母上がそう言って振り返ると、ドアの外から入ってきたのはアルフでした。

「リリーが帰ってきてない上に変な噂が流れて来て不安なのは分かりますが、ミアさんを責めても何も解決しません」
「何、まさかリリーの婚約者なのにミアの肩を持つって言うの!?」

 母上の怒りが今度はアルフに向きかけます。
 が、彼は落ち着いて答えました。

「まあまあ落ち着いてください、気持ちは分かりますがそもそも諸悪の根源はパーシーです。彼がリリーを攫ったのが全て悪いのです。それを忘れてはいけません」
「た、確かに言われてみれば……」

 母上もパーシーを恨んでいるという点では変わらなかったのでしょう、彼の言葉に頷きます。
 それを見て私はひとまずほっとしました。

「でもパーシーはあなたの婚約者でしょう? 全く、ちゃんとして欲しいものだわ」
「それはごめんなさい」

 パーシーのことで責められてしまうと何も反論できません。せめてもっと早くあそこまで頭がおかしい人物だと気づいていれば良かったのですが。

 そして母上は私を怒鳴りつけて少し気が晴れたのか疲れたのか、今の言葉を捨て台詞のようにして部屋を出ていくのでした。

あなたにおすすめの小説

【完結】姉は全てを持っていくから、私は生贄を選びます

かずきりり
恋愛
もう、うんざりだ。 そこに私の意思なんてなくて。 発狂して叫ぶ姉に見向きもしないで、私は家を出る。 貴女に悪意がないのは十分理解しているが、受け取る私は不愉快で仕方なかった。 善意で施していると思っているから、いくら止めて欲しいと言っても聞き入れてもらえない。 聞き入れてもらえないなら、私の存在なんて無いも同然のようにしか思えなかった。 ————貴方たちに私の声は聞こえていますか? ------------------------------  ※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています

王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。 これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。 しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。 それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。 事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。 妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。 故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。

〈完結〉ここは私のお家です。出て行くのはそちらでしょう。

江戸川ばた散歩
恋愛
「私」マニュレット・マゴベイド男爵令嬢は、男爵家の婿である父から追い出される。 そもそも男爵の娘であった母の婿であった父は結婚後ほとんど寄りつかず、愛人のもとに行っており、マニュレットと同じ歳のアリシアという娘を儲けていた。 母の死後、屋根裏部屋に住まわされ、使用人の暮らしを余儀なくされていたマニュレット。 アリシアの社交界デビューのためのドレスの仕上げで起こった事故をきっかけに、責任を押しつけられ、ついに父親から家を追い出される。 だがそれが、この「館」を母親から受け継いだマニュレットの反逆のはじまりだった。

熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください。私は、堅実に生きさせてもらいますので。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアルネアには、婚約者がいた。 しかし、ある日その彼から婚約破棄を告げられてしまう。なんでも、アルネアの妹と婚約したいらしいのだ。 「熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください」 身勝手な恋愛をする二人に対して、アルネアは呆れていた。 堅実に生きたい彼女にとって、二人の行いは信じられないものだったのである。 数日後、アルネアの元にある知らせが届いた。 妹と元婚約者の間で、何か事件が起こったらしいのだ。

愛せないですか。それなら別れましょう

黒木 楓
恋愛
「俺はお前を愛せないが、王妃にはしてやろう」  婚約者バラド王子の発言に、 侯爵令嬢フロンは唖然としてしまう。  バラド王子は、フロンよりも平民のラミカを愛している。  そしてフロンはこれから王妃となり、側妃となるラミカに従わなければならない。  王子の命令を聞き、フロンは我慢の限界がきた。 「愛せないですか。それなら別れましょう」  この時バラド王子は、ラミカの本性を知らなかった。

妹が私の婚約者を奪った癖に、返したいと言ってきたので断った

ルイス
恋愛
伯爵令嬢のファラ・イグリオは19歳の誕生日に侯爵との婚約が決定した。 昔からひたむきに続けていた貴族令嬢としての努力が報われた感じだ。 しかし突然、妹のシェリーによって奪われてしまう。 両親もシェリーを優先する始末で、ファラの婚約は解消されてしまった。 「お前はお姉さんなのだから、我慢できるだろう? お前なら他にも良い相手がきっと見つかるさ」 父親からの無常な一言にファラは愕然としてしまう。彼女は幼少の頃から自分の願いが聞き届けられた ことなど1つもなかった。努力はきっと報われる……そう信じて頑張って来たが、今回の件で心が折れそうになっていた。 だが、ファラの努力を知っていた幼馴染の公爵令息に助けられることになる。妹のシェリーは侯爵との婚約が思っていたのと違うということで、返したいと言って来るが……はあ? もう遅いわよ。

必要ないと言われたので、元の日常に戻ります

黒木 楓
恋愛
 私エレナは、3年間城で新たな聖女として暮らすも、突如「聖女は必要ない」と言われてしまう。  前の聖女の人は必死にルドロス国に加護を与えていたようで、私は魔力があるから問題なく加護を与えていた。  その違いから、「もう加護がなくても大丈夫だ」と思われたようで、私を追い出したいらしい。  森の中にある家で暮らしていた私は元の日常に戻り、国の異変を確認しながら過ごすことにする。  数日後――私の忠告通り、加護を失ったルドロス国は凶暴なモンスターによる被害を受け始める。  そして「助けてくれ」と城に居た人が何度も頼みに来るけど、私は動く気がなかった。

堅実に働いてきた私を無能と切り捨てたのはあなた達ではありませんか。

木山楽斗
恋愛
聖女であるクレメリアは、謙虚な性格をしていた。 彼女は、自らの成果を誇示することもなく、淡々と仕事をこなしていたのだ。 そんな彼女を新たに国王となったアズガルトは軽んじていた。 彼女の能力は大したことはなく、何も成し遂げられない。そう判断して、彼はクレメリアをクビにした。 しかし、彼はすぐに実感することになる。クレメリアがどれ程重要だったのかを。彼女がいたからこそ、王国は成り立っていたのだ。 だが、気付いた時には既に遅かった。クレメリアは既に隣国に移っており、アズガルトからの要請など届かなかったのだ。