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狂気の母上
その後私たちが屋敷に戻ってくると、中からはよろよろとした足取りで母上が出てきます。そして俯き気味のリリーを見ると、ほっとした表情を浮かべました。
「リリー、リリー! 無事だったのね!?」
「お母さま……」
しかしリリーは母上を見ても虚ろな表情を浮かべるのみです。
リリーからすれば、今までは母親を利用すれば好き勝手出来たものの、もはや全てが手遅れになったのでどうでもいいというところではないでしょうか。
が、そんなリリーの反応を見て母上は打ちのめされたように顔をしかめます。
「そ、そんな……あんなに孝行者だったリリーが、こんなことになるなんて。許せない、何でリリーを守ってやらなかったの!?」
そして母上は怒りを私と父上に向けてきます。
そんなことを言われてもどうにもならないというのに。
「ま、まあそこはわしも頑張ろうとしたが、テイラー伯爵家には逆らえなかったのだ」
父上はこの期に及んで母上の怒りをかうのが嫌なのか、伯爵家のせいにしようとしています。が、母上の怒りはそれで収まる訳もありません。
「そんなこと言っても、本当にリリーが可愛いと思ったらこうはならないように出来たはずよ!」
「そ、それは……」
母上に詰め寄られて、父上は顔を背けます。
ここでガツンと言ってくれない父上には辟易しますが、こんな父上だったからこそ十年以上ずっとああだったということでもあるのでしょう。
母上には領地で静養してもらうと決めたのだから今こそそれを言えばいいというのに。父上が言わなかったらそれを言う人間はいません。
父上が真面目に答える気がないと判断したのか、母上の怒りは次にこちらに向かいます。
「ミア、あなたも本当はリリーがこういう目に遭えばいいと心の中で思っていたのでしょう!」
「そんな、私はずっとリリーに精霊を貸していたではないですか!」
「でも、心の奥ではリリーを疎ましく思っていたに違いないわ! この人でなし!」
「あの、お母様、それ以上は……」
「リリーは今は黙ってて!」
もはや全てを無駄と悟ったリリーは止めにかかりましたが、母上はその手を払いのけます。
「待っててね、今悪いやつらをお母さんがどうにかしてあげるからね」
「……」
よほどリリーのことがショックだったのか、母上の目は明らかに尋常ではありません。台詞からもうかがえる通り、正気ではないのでしょう。
母上の病的な笑顔を見てさすがのリリーも困惑します。この状況で母上が何かしたところで、今更世間でのリリーの評判が回復する訳ではありません。むしろ余計に悪化するばかりでしょう。
が、母上の怒りは私に向いているので他人事ではいられません。
「いくら世間ではリリーが悪いってなっても、この屋敷ではあなたは私の子なの! こうなったら精霊を取り上げて追い出して……」
いくら母上でもそんな無茶な、と思いますがその横で目をそらして関わらないようにしている父上を見る限りそうならないとは言い切れません。
私がどうしよう、と思った時でした。
「もういい加減にしてください!」
そう言って割って入ってきたのはまたしてもアルフでした。
「リリー、リリー! 無事だったのね!?」
「お母さま……」
しかしリリーは母上を見ても虚ろな表情を浮かべるのみです。
リリーからすれば、今までは母親を利用すれば好き勝手出来たものの、もはや全てが手遅れになったのでどうでもいいというところではないでしょうか。
が、そんなリリーの反応を見て母上は打ちのめされたように顔をしかめます。
「そ、そんな……あんなに孝行者だったリリーが、こんなことになるなんて。許せない、何でリリーを守ってやらなかったの!?」
そして母上は怒りを私と父上に向けてきます。
そんなことを言われてもどうにもならないというのに。
「ま、まあそこはわしも頑張ろうとしたが、テイラー伯爵家には逆らえなかったのだ」
父上はこの期に及んで母上の怒りをかうのが嫌なのか、伯爵家のせいにしようとしています。が、母上の怒りはそれで収まる訳もありません。
「そんなこと言っても、本当にリリーが可愛いと思ったらこうはならないように出来たはずよ!」
「そ、それは……」
母上に詰め寄られて、父上は顔を背けます。
ここでガツンと言ってくれない父上には辟易しますが、こんな父上だったからこそ十年以上ずっとああだったということでもあるのでしょう。
母上には領地で静養してもらうと決めたのだから今こそそれを言えばいいというのに。父上が言わなかったらそれを言う人間はいません。
父上が真面目に答える気がないと判断したのか、母上の怒りは次にこちらに向かいます。
「ミア、あなたも本当はリリーがこういう目に遭えばいいと心の中で思っていたのでしょう!」
「そんな、私はずっとリリーに精霊を貸していたではないですか!」
「でも、心の奥ではリリーを疎ましく思っていたに違いないわ! この人でなし!」
「あの、お母様、それ以上は……」
「リリーは今は黙ってて!」
もはや全てを無駄と悟ったリリーは止めにかかりましたが、母上はその手を払いのけます。
「待っててね、今悪いやつらをお母さんがどうにかしてあげるからね」
「……」
よほどリリーのことがショックだったのか、母上の目は明らかに尋常ではありません。台詞からもうかがえる通り、正気ではないのでしょう。
母上の病的な笑顔を見てさすがのリリーも困惑します。この状況で母上が何かしたところで、今更世間でのリリーの評判が回復する訳ではありません。むしろ余計に悪化するばかりでしょう。
が、母上の怒りは私に向いているので他人事ではいられません。
「いくら世間ではリリーが悪いってなっても、この屋敷ではあなたは私の子なの! こうなったら精霊を取り上げて追い出して……」
いくら母上でもそんな無茶な、と思いますがその横で目をそらして関わらないようにしている父上を見る限りそうならないとは言い切れません。
私がどうしよう、と思った時でした。
「もういい加減にしてください!」
そう言って割って入ってきたのはまたしてもアルフでした。
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