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アシュリー視点 婚約破棄
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「え、一体どういうことでしょうか!?」
理解出来なかった私は目の前のカール殿下に訊き返してしまう。
すると殿下は淡々とした声で答えた。
「どうもこうもない、今告げた通りだ、僕はお前との婚約を破棄する。それともこんな簡単なことの意味が分からないのか?」
「そういう話ではありません! 一体なぜ突然婚約破棄という話に至ったのでしょうか!?」
正直なところ心当たりは全然なかった。
殿下とは仲がいい訳ではなかったが、そこまで悪かったとは思えない。自分で言うことでもないが、それなりに手助けやサポートなどもしてきたつもりだ。
陛下や殿下の家臣たちとも良好な関係は築いてきたつもりだ。
それに最近は殿下も私や周りの人に対する感謝を口にしていた……というところまで考えて私は気づく。
そう言えば殿下が王宮を抜け出して以来やけに大人になったと思ったが、もしやその時から婚約破棄の計画を練っていたというのだろうか。
嫌な可能性だが、そう考えれば辻褄が合う。
それまで私や周囲に不満を感じていた殿下だったが、不満を爆発させた日に婚約破棄することを決意し、それ以降は自分の企みがばれないように優等生的な振る舞いをすることを決意した。
そして私はまんまとそれに騙されて彼が改心したものと思ってしまった。
黙ってしまった私を見て殿下は仕方ない、とでも言いたげに告げる。
「一体なぜ? まあいい、心当たりがないと言うのであれば教えてやろう」
そう言って殿下が指を鳴らすと、武装した兵士たちによって縛られたアルベルトたちが連れて来られる。パーティー会場には不似合いな光景に周囲も騒然とした。
アルベルトたちは猿轡をかまされて喋れなくされていたが、その周りに殿下の家臣たちのさらに家臣たちがついてくる。
「こいつらの企みを話してやれ」
「はい、恐れながら我が主のアルベルトはアシュリー様と手を結び、殿下を意のままに操って自分たちの意向を国政に反映させようと企んでおりました」
アルベルトが抗議するように何かを言おうとするが、声にならない。
それを聞いて私は背筋に震えが走った。アルベルトは殿下の家臣だからその家臣に手を回すのも容易だったのだろう。おそらく、脅すか金を積むかしてこのような証言をさせたに違いない。
一方私の周りにいるのは公爵家から連れてきた家臣たちだからさすがにそこまで堂々と手を出すことは出来なかったに違いない。
そうでなければ私も今頃同じ目に遭っていただろう。
「殿下、それは何かの間違いです! アルベルトにそのような気持ちがあるとは思えません! 彼らの話も聞いてあげてください!」
そもそも「殿下を意のままに操る」というのは罪状としては抽象的すぎてそれだけでは罪にするのは無理があると思うのだが。
が、殿下は抗議する私をぞっとするような目で睨みつけた。
その目から私は彼が本気で自分を憎んでいることを思い知り、体が震える。
これまで一緒にいた人物にここまでの憎しみを抱かれていたとは。
そう考えるとそれに気づかなかった自分にも非はあったのではないか、と思えてしまう。
「うるさい! きちんとこの者たちの証言はある。今は証拠がないから婚約破棄だけに留めてやっているのをありがたく思え!」
「そ、そんな……」
殿下から向けられた憎しみの強さに私はうまく反論することは出来なかった。
もっとも、事ここに至ってしまった以上どれだけすばらしい弁舌を振るって反論したとしてもすでに手遅れだろうが。
理解出来なかった私は目の前のカール殿下に訊き返してしまう。
すると殿下は淡々とした声で答えた。
「どうもこうもない、今告げた通りだ、僕はお前との婚約を破棄する。それともこんな簡単なことの意味が分からないのか?」
「そういう話ではありません! 一体なぜ突然婚約破棄という話に至ったのでしょうか!?」
正直なところ心当たりは全然なかった。
殿下とは仲がいい訳ではなかったが、そこまで悪かったとは思えない。自分で言うことでもないが、それなりに手助けやサポートなどもしてきたつもりだ。
陛下や殿下の家臣たちとも良好な関係は築いてきたつもりだ。
それに最近は殿下も私や周りの人に対する感謝を口にしていた……というところまで考えて私は気づく。
そう言えば殿下が王宮を抜け出して以来やけに大人になったと思ったが、もしやその時から婚約破棄の計画を練っていたというのだろうか。
嫌な可能性だが、そう考えれば辻褄が合う。
それまで私や周囲に不満を感じていた殿下だったが、不満を爆発させた日に婚約破棄することを決意し、それ以降は自分の企みがばれないように優等生的な振る舞いをすることを決意した。
そして私はまんまとそれに騙されて彼が改心したものと思ってしまった。
黙ってしまった私を見て殿下は仕方ない、とでも言いたげに告げる。
「一体なぜ? まあいい、心当たりがないと言うのであれば教えてやろう」
そう言って殿下が指を鳴らすと、武装した兵士たちによって縛られたアルベルトたちが連れて来られる。パーティー会場には不似合いな光景に周囲も騒然とした。
アルベルトたちは猿轡をかまされて喋れなくされていたが、その周りに殿下の家臣たちのさらに家臣たちがついてくる。
「こいつらの企みを話してやれ」
「はい、恐れながら我が主のアルベルトはアシュリー様と手を結び、殿下を意のままに操って自分たちの意向を国政に反映させようと企んでおりました」
アルベルトが抗議するように何かを言おうとするが、声にならない。
それを聞いて私は背筋に震えが走った。アルベルトは殿下の家臣だからその家臣に手を回すのも容易だったのだろう。おそらく、脅すか金を積むかしてこのような証言をさせたに違いない。
一方私の周りにいるのは公爵家から連れてきた家臣たちだからさすがにそこまで堂々と手を出すことは出来なかったに違いない。
そうでなければ私も今頃同じ目に遭っていただろう。
「殿下、それは何かの間違いです! アルベルトにそのような気持ちがあるとは思えません! 彼らの話も聞いてあげてください!」
そもそも「殿下を意のままに操る」というのは罪状としては抽象的すぎてそれだけでは罪にするのは無理があると思うのだが。
が、殿下は抗議する私をぞっとするような目で睨みつけた。
その目から私は彼が本気で自分を憎んでいることを思い知り、体が震える。
これまで一緒にいた人物にここまでの憎しみを抱かれていたとは。
そう考えるとそれに気づかなかった自分にも非はあったのではないか、と思えてしまう。
「うるさい! きちんとこの者たちの証言はある。今は証拠がないから婚約破棄だけに留めてやっているのをありがたく思え!」
「そ、そんな……」
殿下から向けられた憎しみの強さに私はうまく反論することは出来なかった。
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