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カール視点 婚約破棄
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婚約破棄を宣言した僕の目の前でアシュリーが呆然としたような表情をしている。
それを見て僕は少し調子が狂うような、意外なような気持ちになった。彼女はもっと僕にマウントをとりたがる性格だと思っていたので、こんなことになれば当然あの手この手を駆使して食ってかかってくるかと思ったのだ。
しかし今の彼女は本当にショックを受けたように落ち込んでいる。
もしかして彼女は本当に僕のためを思ってこれまで色々言ってきたのだろうか?
そんな風に思えてしまい、僕は少しだけ躊躇してしまう。
本当にこれで良かったのだろうか。
確かにヒューム伯が連れてきたアルベルトの家臣たちはアルベルトらが僕よりもアシュリーを優先していて、僕に言うことを聞かせようとしているとは言っていたが、アシュリーがどう思っているのかまでは分からなかった。
アルベルトたちを排除すれば、アシュリーと婚約破棄までする必要はなかったのではないか。
「殿下、ここに集まった者たちに改めて殿下の口から決意を示してください」
少しだけ動揺している僕にすかさずヒューム伯が助言してくれる。
確かにそうだ、仮にアシュリーが僕のことを思って色々発言したからといっても、だからといって王子である僕をないがしろにしてきたことが許される訳ではない。
そして僕はこれまでアシュリーが自分に言った数々の言葉を思い出す。
そうだ、彼女はいつも僕に上から目線で色々言ってきた。本心がどうであっても許す訳にはいかない。
それよりもこの場にはヒューム伯が集めた貴族たちが集まっている。
元々僕と親しい貴族、ヒューム伯と親しい貴族、さらには単にアシュリーの実家であるヘイウッド家と仲が悪い貴族など様々な者たちが集まっている。
彼らの支持を盤石にするためにはここで僕が毅然とした態度を見せなければ。
そう思って僕は自分を奮い立たせる。
「皆の者、よく聞け! 改めて皆に僕の口から今回の事情について説明しようと思う! この者たちは僕をないがしろにし、アシュリーに取り入り、彼女を使って僕に好きなように言うことを聞かせようとした。だが、皆は僕に真の忠義を尽くすために集まってくれた! 僕が王位を継いだ暁には皆のような真の忠臣を取り立てていこうと思う! だから皆もこれからは国のために、そして僕のために尽くしてくれ!」
僕が演説を終えると会場からは割れんばかりの拍手が響き渡る。
アシュリーに婚約破棄を宣言した時は不安そうな目でこちらを見ている者たちもいたが、演説を終えるころには感動したような表情で手を叩いている。
ふとその脇を見るとこの場にいづらくなったのだろうアシュリーが逃げるように部屋を出ていくのが見えた。
「殿下、素晴らしい演説でした」
そんな僕にヒューム伯がしみじみとした表情で告げる。
さらに僕の演説が終わるのを待っていたようにカミラが出てきて貴族たちに告げる。
「僭越ながらパーティーの用意を整えさせていただきました。これより殿下のために尽くす者同士、親睦を深める宴を開きましょう」
そして用意させていた豪華な料理が次々と会場に運ばれてくる。これもほとんどヒューム伯が用意してくれたものだ。やはりこれが真の忠臣の役目ではないか。
こうしてその場はすぐに和やかなパーティー会場へと変わっていったのだった。
それを見て僕は少し調子が狂うような、意外なような気持ちになった。彼女はもっと僕にマウントをとりたがる性格だと思っていたので、こんなことになれば当然あの手この手を駆使して食ってかかってくるかと思ったのだ。
しかし今の彼女は本当にショックを受けたように落ち込んでいる。
もしかして彼女は本当に僕のためを思ってこれまで色々言ってきたのだろうか?
そんな風に思えてしまい、僕は少しだけ躊躇してしまう。
本当にこれで良かったのだろうか。
確かにヒューム伯が連れてきたアルベルトの家臣たちはアルベルトらが僕よりもアシュリーを優先していて、僕に言うことを聞かせようとしているとは言っていたが、アシュリーがどう思っているのかまでは分からなかった。
アルベルトたちを排除すれば、アシュリーと婚約破棄までする必要はなかったのではないか。
「殿下、ここに集まった者たちに改めて殿下の口から決意を示してください」
少しだけ動揺している僕にすかさずヒューム伯が助言してくれる。
確かにそうだ、仮にアシュリーが僕のことを思って色々発言したからといっても、だからといって王子である僕をないがしろにしてきたことが許される訳ではない。
そして僕はこれまでアシュリーが自分に言った数々の言葉を思い出す。
そうだ、彼女はいつも僕に上から目線で色々言ってきた。本心がどうであっても許す訳にはいかない。
それよりもこの場にはヒューム伯が集めた貴族たちが集まっている。
元々僕と親しい貴族、ヒューム伯と親しい貴族、さらには単にアシュリーの実家であるヘイウッド家と仲が悪い貴族など様々な者たちが集まっている。
彼らの支持を盤石にするためにはここで僕が毅然とした態度を見せなければ。
そう思って僕は自分を奮い立たせる。
「皆の者、よく聞け! 改めて皆に僕の口から今回の事情について説明しようと思う! この者たちは僕をないがしろにし、アシュリーに取り入り、彼女を使って僕に好きなように言うことを聞かせようとした。だが、皆は僕に真の忠義を尽くすために集まってくれた! 僕が王位を継いだ暁には皆のような真の忠臣を取り立てていこうと思う! だから皆もこれからは国のために、そして僕のために尽くしてくれ!」
僕が演説を終えると会場からは割れんばかりの拍手が響き渡る。
アシュリーに婚約破棄を宣言した時は不安そうな目でこちらを見ている者たちもいたが、演説を終えるころには感動したような表情で手を叩いている。
ふとその脇を見るとこの場にいづらくなったのだろうアシュリーが逃げるように部屋を出ていくのが見えた。
「殿下、素晴らしい演説でした」
そんな僕にヒューム伯がしみじみとした表情で告げる。
さらに僕の演説が終わるのを待っていたようにカミラが出てきて貴族たちに告げる。
「僭越ながらパーティーの用意を整えさせていただきました。これより殿下のために尽くす者同士、親睦を深める宴を開きましょう」
そして用意させていた豪華な料理が次々と会場に運ばれてくる。これもほとんどヒューム伯が用意してくれたものだ。やはりこれが真の忠臣の役目ではないか。
こうしてその場はすぐに和やかなパーティー会場へと変わっていったのだった。
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