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カールの天下
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「殿下、昨日は大変でしたでしょう。今日は殿下のために私が色々とお世話させていただきます」
翌日、僕が起きると、枕元にはカミラが控えていた。
やはりカミラは僕に対してぞっこんなのだろう。その気遣いは単なる家臣の娘にしてはいい意味で度を超えている。
僕としてもそんなカミラが傍にいてくれるのであればそれに勝ることはないが、一応それをこらえて尋ねてみる。
「それは嬉しいが……そんなことは使用人にでもやらせておけばいいのではないか?」
「いえ、私が確かめたところによると皆殿下がアシュリーと婚約破棄をしたことを怪訝に思っているようでした。きっと彼ら彼女らも殿下よりもアシュリーに心を寄せているのでしょう。そのため、殿下のために追放しておきました」
「おお、気が利くな」
確かに彼らも僕に見せる笑顔はいつも愛想笑いなのに、時々アシュリーと会うと本心からにこにこしているように見えた。
きっと奴らもアルベルトらの一味だったのだろう。
そう思うと、彼らの企みがそんな身近にまで及んでいたことが恐ろしくなる。あと少し婚約破棄が遅ければ大変なことになっていたらしい。
「ありがとう」
「はい、後任には我がヒューム家の者たちを手配しておりますので、一日二日待てば到着いたしますのでそれまでは私が殿下の御用をお伺いします」
「そういうことなら別に手配しなくてもいいのだがな」
「どういうことでしょうか?」
「いや、何でもない、今のは忘れてくれ」
危ない、つい本音を漏らしてしまった。
確かにカミラは将来の王妃には申し分ないが、アシュリーと婚約破棄したばかりであまり彼女と親しくすると口さがない者たちは「カミラにうつつを抜かして婚約破棄した」などと言い出すだろう。
僕の意を汲んで忠誠心が低い使用人を追放して代わりの手配までしてくれるなんて、王妃にぴったりの素質ではないか。
しかし世の凡人どもはそれに気づかずに僕がアシュリーよりカミラを選んだのは容姿だけが理由だ、などと言うに違いない。
だからカミラと婚約を発表するならほとぼりが冷めてからの方がいい。
「朝食でございます」
そんなことを考えていると、カミラが朝食を運んできてくれる。
いつもと変わらないメニューだったが、今日はなぜかいつもよりおいしく感じた。
「しかし邪魔な者たちが全員いなくなったせいか、すがすがしい気分だ。まさか王宮がこんなに居心地のいいところだったとは」
「殿下の家なのでそれが本来当然なのです。殿下は王になられる方なのですから」
「窮屈なのを我慢するのが当然と思わされてきたが、これが本来の感覚なのだな。それに気づかせてくれて本当にありがとう」
「その言葉を聞けば父上も喜ぶでしょう」
そう言ってカミラは満足そうに笑う。
そして僕が朝食を食べ終えたころだった。
部屋のドアがノックされ、ヒューム伯が入ってくる。
「殿下、殿下のための書類をほとんど処理しておきました。全て後は殿下のはんこだけで大丈夫なようになっております」
「さすが伯爵だ! 気が利くな!」
これまでアルベルトもアシュリーも皆面倒な書類をいちいち僕に自分で読んで決裁するようばかり言ってきた。
いきなりそんな難解な書類をいくつも出されても分かる訳がない。そもそもそういうのは本来全て家臣の仕事ではないのか。
その点ヒューム伯は気が利いている。僕の仕事を最低限に減らしてくれるなんて。
口うるさい者たちと違って黙って仕事をするというのはいいことだ。
「ありがとう」
そう言って僕は彼が用意した書類に判を押す仕事に取り掛かるのだった。
翌日、僕が起きると、枕元にはカミラが控えていた。
やはりカミラは僕に対してぞっこんなのだろう。その気遣いは単なる家臣の娘にしてはいい意味で度を超えている。
僕としてもそんなカミラが傍にいてくれるのであればそれに勝ることはないが、一応それをこらえて尋ねてみる。
「それは嬉しいが……そんなことは使用人にでもやらせておけばいいのではないか?」
「いえ、私が確かめたところによると皆殿下がアシュリーと婚約破棄をしたことを怪訝に思っているようでした。きっと彼ら彼女らも殿下よりもアシュリーに心を寄せているのでしょう。そのため、殿下のために追放しておきました」
「おお、気が利くな」
確かに彼らも僕に見せる笑顔はいつも愛想笑いなのに、時々アシュリーと会うと本心からにこにこしているように見えた。
きっと奴らもアルベルトらの一味だったのだろう。
そう思うと、彼らの企みがそんな身近にまで及んでいたことが恐ろしくなる。あと少し婚約破棄が遅ければ大変なことになっていたらしい。
「ありがとう」
「はい、後任には我がヒューム家の者たちを手配しておりますので、一日二日待てば到着いたしますのでそれまでは私が殿下の御用をお伺いします」
「そういうことなら別に手配しなくてもいいのだがな」
「どういうことでしょうか?」
「いや、何でもない、今のは忘れてくれ」
危ない、つい本音を漏らしてしまった。
確かにカミラは将来の王妃には申し分ないが、アシュリーと婚約破棄したばかりであまり彼女と親しくすると口さがない者たちは「カミラにうつつを抜かして婚約破棄した」などと言い出すだろう。
僕の意を汲んで忠誠心が低い使用人を追放して代わりの手配までしてくれるなんて、王妃にぴったりの素質ではないか。
しかし世の凡人どもはそれに気づかずに僕がアシュリーよりカミラを選んだのは容姿だけが理由だ、などと言うに違いない。
だからカミラと婚約を発表するならほとぼりが冷めてからの方がいい。
「朝食でございます」
そんなことを考えていると、カミラが朝食を運んできてくれる。
いつもと変わらないメニューだったが、今日はなぜかいつもよりおいしく感じた。
「しかし邪魔な者たちが全員いなくなったせいか、すがすがしい気分だ。まさか王宮がこんなに居心地のいいところだったとは」
「殿下の家なのでそれが本来当然なのです。殿下は王になられる方なのですから」
「窮屈なのを我慢するのが当然と思わされてきたが、これが本来の感覚なのだな。それに気づかせてくれて本当にありがとう」
「その言葉を聞けば父上も喜ぶでしょう」
そう言ってカミラは満足そうに笑う。
そして僕が朝食を食べ終えたころだった。
部屋のドアがノックされ、ヒューム伯が入ってくる。
「殿下、殿下のための書類をほとんど処理しておきました。全て後は殿下のはんこだけで大丈夫なようになっております」
「さすが伯爵だ! 気が利くな!」
これまでアルベルトもアシュリーも皆面倒な書類をいちいち僕に自分で読んで決裁するようばかり言ってきた。
いきなりそんな難解な書類をいくつも出されても分かる訳がない。そもそもそういうのは本来全て家臣の仕事ではないのか。
その点ヒューム伯は気が利いている。僕の仕事を最低限に減らしてくれるなんて。
口うるさい者たちと違って黙って仕事をするというのはいいことだ。
「ありがとう」
そう言って僕は彼が用意した書類に判を押す仕事に取り掛かるのだった。
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