夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた

今川幸乃

文字の大きさ
29 / 41

エミリー視点 復讐

しおりを挟む
 少し前のこと。

「もううちは終わりだ……」

 リビングに入ると今まで公爵として精力的に活動してきた父上は呆けたようにソファに腰かけている。
 あれから屋敷にいる使用人はめっきり少なくなり、気のせいか部屋にあった高そうな調度品や絵画などがいくつかなくなっている。

 聞いた話によると、我が家は複数の商人からツケで多額の買い物をしており、今までは支払いには融通を利かせてもらっていたが、今回の件で信用を失ったため「即座に支払わなければ今後はもう取引出来ない」と一斉に脅されたらしい。
 そのためいずれ税収が入ったら支払う予定だったお金をすぐに払わなければならなくなり、生活は一気にわびしくなった。

 少し前までは公爵家にふさわしい優雅な暮らしを送り、頼めば兄上が何でも買ってくれたというのに。一体何でこんなことになってしまったのだろう。

 第一に思いつくのは兄上の妻、レイラだ。あの女は夫である兄上を貶めるために、こっそり自分の領地を関係ない他人に寄贈した。
 確かに彼女の物を勝手に売り払ったのは悪いことだけど、あくまで顔なじみの商人だからそのうちお金を払えばまた返ってくるだろうし、そんなに怒ることだろうか。
 もしかして兄上が自分にばかり優しいのに嫉妬したのだろうか。

 とはいえさらに許せないのはクルス殿下だった。
 王子というのはこういうことが起こった時、レイラを「そんなことを荒立てるようなことをせずに、穏やかに解決すべきだ」と諭すべきではないか。その役割を放棄して寄付された領地を自分の物にするために兄上を罠に嵌めるなんてどう考えても異常だ。

「父上、大丈夫でしょうか?」
「ああ、エミリーか」

 私が声をかけても父上はそう言ってこちらをちらりと見るだけだ。
 すっかり廃人になってしまったようで、ここ数日まともな会話もしていない。その間も、屋敷は使用人が減ったせいで汚れが目立つようになり、日々の食事も貧しくなっていく。庭師がいなくなっていった庭は荒れていくままだった。

 それなら私が父上の分まで復讐もしなければ。
 私はそう決意した。

 幸いクルス殿下には多数の敵がいる。彼のせいで辛い思いをした者は数多くいるはずだ。

 その中でも一番の大物はレイランド家だろう。
 この家はそれまでの貴族が当然のようにやっていたことをそのまま踏襲したら不正だと言われて没落したらしい。

 そんな訳で私は早速レイランド家を訪問した。
 そこに現れたのは私と同じように、質素な服装に身を包んだご令嬢だった。家の中も今の我が家と同じようにどこかくすんで見える。年は私より上に見え、元々はきれいな方だったはずなのに、服装の質がそれについていけておらず、もったいなく思えた。

「初めまして。私はアンジェリカ。何の用でしょうか?」
「私はこの前クルス殿下によって没落させられたエミリー・ローザンです。この家も殿下のせいで酷い目に遭ったと聞いてやってきました」
「まあ、噂には聞いていたけど、あなたも私と同じということね!」

 私の言葉を聞いてアンジェリカは嬉しそうな笑みを浮かべる。

「そうなんです! 実は……」

 そう言って私はクルス殿下がいかに非道な人物であるかを並べ立てた。
 同じことを思っていたのだろう、すぐにアンジェリカも意気投合し、レイランド家が没落した時のことを語り始める。

 その時もクルス殿下の手法も今回に負けず劣らず汚くて執拗なものだった。
 話が盛り上がってきたところで、私は満を持して提案する。

「でしたら手を組んで復讐しませんか?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私の婚約者は妹のおさがりです

葉桜鹿乃
恋愛
「もう要らないわ、お姉様にあげる」 サリバン辺境伯領の領主代行として領地に籠もりがちな私リリーに対し、王都の社交界で華々しく活動……悪く言えば男をとっかえひっかえ……していた妹ローズが、そう言って寄越したのは、それまで送ってきていたドレスでも宝飾品でもなく、私の初恋の方でした。 ローズのせいで広まっていたサリバン辺境伯家の悪評を止めるために、彼は敢えてローズに近付き一切身体を許さず私を待っていてくれていた。 そして彼の初恋も私で、私はクールな彼にいつのまにか溺愛されて……? 妹のおさがりばかりを貰っていた私は、初めて本でも家庭教師でも実権でもないものを、両親にねだる。 「お父様、お母様、私この方と婚約したいです」 リリーの大事なものを守る為に奮闘する侯爵家次男レイノルズと、領地を大事に思うリリー。そしてリリーと自分を比べ、態と奔放に振る舞い続けた妹ローズがハッピーエンドを目指す物語。 小説家になろう様でも別名義にて連載しています。 ※感想の取り扱いについては近況ボードを参照ください。(10/27追記)

皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。

和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。 「次期当主はエリザベスにしようと思う」 父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。 リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。 「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」 破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?  婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。

【完結】妹ばかり愛され追い出された姉ですが、無口な夫と暮らす日々が幸せすぎます

コトミ
恋愛
 セラフィナは、実の親と、妹によって、家から追い出されることとなった。セラフィナがまだ幼い頃、両親は病弱なカタリナのため設備環境が良い王都に移り住んだ。姉のセラフィナは元々両親とともに住んでいた田舎に使用人のマーサの二人きりで暮らすこととなった。お金のない子爵家な上にカタリナのためお金を稼がなくてはならないため、子供二人を王都で暮らすには無理があるとセラフィナだけ残されたのだ。そしてセラフィナが19歳の時、3人が家へ戻ってきた。その理由はカタリナの婚約が上手くいかず王宮にいずらくなったためだ。やっと家族で暮らせると心待ちにしていたセラフィナは帰宅した父に思いがけないことを告げられる。 「お前はジェラール・モンフォール伯爵と結婚することになった。すぐに荷物をまとめるんだ。一週間後には結婚式だ」  困惑するセラフィナに対して、冷酷にも時間は進み続け、結婚生活が始まる。

平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?

和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」  腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。  マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。  婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?    

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

『「あんな化け物と結婚なんて嫌!」と妹が泣くので私が身代わりになりました。……あの、化け物どころか、国一番の美形で紳士な旦那様なんですけど?

ラムネ
恋愛
伯爵家の長女でありながら、妾腹の子として冷遇され、使用人のように扱われてきたエルサ。 ある日、実家に縁談が舞い込む。相手は「北の化け物」と恐れられるジークハルト辺境伯だった。 「あんな化け物のところになんて、死んでも嫁ぎたくないわ!」 愛され美少女の妹マリアに泣きつかれ、両親に命じられるまま、エルサは身代わりの花嫁として北の地へ送られることになる。 死を覚悟して嫁いだエルサだったが、そこで待っていたのは、呪いの仮面の下に絶世の美貌を隠した、不器用で優しい旦那様だった! しかも、ジークハルトを苦しめていた強大すぎる魔力を、エルサだけが「無効化」して触れられることが判明し――? 「エルサ、お前は俺の光だ。一生離さない」 最強の騎士である旦那様からの過保護な溺愛、美味しい領地グルメによる改革、そして規格外の三つ子の誕生。 一方、エルサを捨てた実家と妹は没落の一途を辿り……。 虐げられた地味令嬢が、最高の幸せを手に入れる大逆転シンデレラストーリー!

「可愛げがない」と婚約破棄された公爵令嬢ですが、領地経営をしていたのは私です

希羽
恋愛
「お前のような可愛げのない女との婚約は破棄する!」 卒業パーティの会場で、婚約者である第二王子デリックはそう宣言し、私の義妹ミナを抱き寄せました。 誰もが私が泣き崩れると思いましたが――正直、せいせいしました。 だって、王子の領地経営、借金返済、結界維持、それら全ての激務を一人でこなしていたのは「可愛げのない」私だったのですから。 「承知しました。では、あとはミナと二人で頑張ってください」 私は手切れ金代わりに面倒な仕事を全て置いて国を出ました。 すると、国境で待っていたのは、隣国ガルガディア帝国の冷徹皇太子ことクライド様。なぜか彼は私を溺愛し、帝国で最高の地位と環境を与えてくれて……。

処理中です...