夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた

今川幸乃

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救出

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「さあ、観念して人質になりなさい?」
「やめて! 今ならまだ間に合うからこんなことしないで家の評判を立て直す努力をしなさい!」

 確かにオリバーが不祥事を起こしはしたが、だからこそ他の一族で頑張って評判を立て直していくべきではないのか。
 私は叫んだがエミリーの心に届いた様子はなかった。

「今更そんなことしても遅いですわ。それよりもあなたを人質にして殿下に何をさせようかしら。まずはこれまで陥れた相手全員に謝らせて……あとお兄様にも何か恩返しをしないと」

 そう言ってエミリーは楽しげに想像、いや、妄想を始める。

「そんなことをしても犯人はすぐばれるし、そもそも殿下は私を人質にしても言うことを聞かないと思うけど」

 あまりにエミリーが現実離れしたことを言うものだから、私もついぽろりとこぼしてしまう。
 エミリーは私の言葉など聞いておらずに楽しそうに鼻歌を歌いながら皮算用をしていたが、むしろ私自身が私の言葉にショックを受けた。

 殿下はあのように潔癖なほど正義を重んじることだから、仮にエミリーが私を人質にとって何か不当な要求をしたとしても、きっぱり断るだろう。
 それは当然のことだし、そもそもそうなる前にエミリーが捕まるとも思ってはいたが、その想像をするだけで私は少し傷ついた。

 もちろんそれが正しいのは私もよく分かっている。そんな強引な方法での要求、王族たる者が軽々しく屈してはならない。
 それは重々分かっているつもりなのだが、殿下は仮にエミリーが本当に私の命を盾に何か要求をしたとしてもそれを拒否するのだろうか。

「……おっと、余計なことを考えてしまいましたわ。それよりも早くあなたを捕まえませんと。かかれ!」

 エミリーが叫んだ時だった。

「何をしている!」

 怒声とともに多数の兵士が走る足音と、武器がこすれ合うがちゃがちゃという音が聞こえてきた。私たちを囲んでいた敵はその音を聞いてそれどころではなくなる。

 やってきたのは王宮に滞在している近衛兵であった。
 彼らは到着するなり「武器を捨てろ!」と叫びながら剣を向ける。

 それを見てエミリーの表情が一気に青ざめる。
 私たちを囲んでいるのはおそらくエミリーがなけなしの金をはたいて集めたならず者や傭兵たちだろう。
 そんな寄せ集めの兵士が正規の近衛兵と戦って勝てる訳がない。

 もっとも、近衛兵に向かって武器を向けた時点で重罪になるため、仮に腕に自身がある者でもよほどのことがなければ近衛兵に立ち向かうことは出来ないが。

 周囲を包囲していた敵も近衛兵を見てじりじりと後ずさりしながらエミリーの様子をうかがう。
 ランタンの灯りで照らされたエミリーは悔しさに表情をゆがめた。

 そして歯向かっても無意味だと思ったのだろう、ちっ、と舌打ちするとそのまま何も言わずに逃げていく。
 それを見て周囲に集まっていた傭兵たちも蜘蛛の子を散らすように逃げていった。それを見て私はほっと一息つく。

「大丈夫か!?」

 近衛兵の奥から聞こえてきたのはそんな殿下の声だった。
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