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互いの気持ち
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「すみません、殿下にそこまで思っていただけていることに気づいていませんでした」
クルス殿下が私が思っていたよりも私に対して好意を抱いてくださっているということが分かった嬉しさが一段落すると、私は再び申し訳なくなってくる。
「いいんだ、僕も正直なところ“感情のない冷血な王子“という評判を利用しているところもあるからね」
「それはどういうことでしょう?」
てっきりただの悪口だと思っていたが、利用する余地などあるのだろうか。
「例えば普通の王族や貴族が相手だと、何かを頼む際に情に訴えれば何とかなると、賄賂を贈ったり泣き落としたりする者がいるだろう? だが僕はこういう評判があるおかげでそういうのを断るという面倒なやりとりが省略されるんだ」
「な、なるほど」
普通の貴族は賄賂を贈られたり泣いて頼まれたりすれば嬉しく思うものだが、殿下にとってはただ面倒なだけらしい。
「それにこういう評判のおかげで僕の周りの人物は僕の機嫌をとるよりも仕事をきちんとやった方がいいと思ってくれているから楽でもある」
「なるほど」
確かに、上司が合理性よりも感情を重んじるタイプだと仕事をきちんとするよりも上司と仲良くなる方を優先しようと思う者もいるだろう。
そう考えると、多少悪く思われるとしても周囲がきちんと動いてくれるという意味では合理的なのかもしれない。
「もっとも、そういうやり方に適応出来ない者は今回のように軒並み敵に回してしまうからね」
「あはは……」
殿下の言葉に私は苦笑するしかない。そう考えると確かにそのやり方は劇薬と言えるだろう。
「だから僕はそういう風に言われ始めてから、意識してそういう自分を演じているところもあるんだ」
恐らく殿下は私に気を遣うためにそう言ってくれているのだろうが、それを聞くとなおさら私だけはそれを見抜けなかったことに対して悔しくなってしまう。
「ただ、これだけはお伝えしたいんです。私は殿下にそういう風に思っていただいたことはとても嬉しいんです」
「そうか。それなら僕からも言っておこう。君が勝手に手を回して僕の噂をどうにかしようとしてくれていたことは僕も嬉しかったんだ。あの時はついいつものような態度をとってしまったが」
確かにあの時の殿下は納得させるのに結構な説得を要した。
それでも内心私が勝手に殿下のために動いていたことを喜んでくださっていたのだと分かると嬉しくなる。
「そうだったんですね……やはり殿下のことは分かっているようであまり分かっていませんでした」
「はは、それは当然だ。僕たちが出会ってからせいぜい一か月ちょっとだろう? それで相手のことがよく分かるはずなどない。だから今回のことが解決してもこれからも僕の側にいてくれると嬉しいのだが」
「え?」
殿下の言葉に私は思わず訊き返してしまう。
そんな私の反応を見て殿下ははっとしたようになった。
「い、いや、今のはそういう意味ではなく引き続き一緒に働いて欲しいという意味だ!」
「そ、そうですよね、そうに決まってますよね、あはは……」
もう夜遅くではあったが、珍しく殿下が動揺しているのが暗がりの中でもはっきり確認することが出来て、私は満足するのだった。
ひとしきり笑った後、殿下はこほん、と咳払いする。
「と言う訳だ、もう遅いから今日は寝て明日に備えよう。おそらく今日の犯行はエミリーの暴走だろうから、アンジェリカはアンジェリカで倒さなければならない」
「分かりました。それではいい夜を」
こうして色々あってとても疲れはしたものの、どこか温かい気持ちで私は帰ることが出来たのだった。
クルス殿下が私が思っていたよりも私に対して好意を抱いてくださっているということが分かった嬉しさが一段落すると、私は再び申し訳なくなってくる。
「いいんだ、僕も正直なところ“感情のない冷血な王子“という評判を利用しているところもあるからね」
「それはどういうことでしょう?」
てっきりただの悪口だと思っていたが、利用する余地などあるのだろうか。
「例えば普通の王族や貴族が相手だと、何かを頼む際に情に訴えれば何とかなると、賄賂を贈ったり泣き落としたりする者がいるだろう? だが僕はこういう評判があるおかげでそういうのを断るという面倒なやりとりが省略されるんだ」
「な、なるほど」
普通の貴族は賄賂を贈られたり泣いて頼まれたりすれば嬉しく思うものだが、殿下にとってはただ面倒なだけらしい。
「それにこういう評判のおかげで僕の周りの人物は僕の機嫌をとるよりも仕事をきちんとやった方がいいと思ってくれているから楽でもある」
「なるほど」
確かに、上司が合理性よりも感情を重んじるタイプだと仕事をきちんとするよりも上司と仲良くなる方を優先しようと思う者もいるだろう。
そう考えると、多少悪く思われるとしても周囲がきちんと動いてくれるという意味では合理的なのかもしれない。
「もっとも、そういうやり方に適応出来ない者は今回のように軒並み敵に回してしまうからね」
「あはは……」
殿下の言葉に私は苦笑するしかない。そう考えると確かにそのやり方は劇薬と言えるだろう。
「だから僕はそういう風に言われ始めてから、意識してそういう自分を演じているところもあるんだ」
恐らく殿下は私に気を遣うためにそう言ってくれているのだろうが、それを聞くとなおさら私だけはそれを見抜けなかったことに対して悔しくなってしまう。
「ただ、これだけはお伝えしたいんです。私は殿下にそういう風に思っていただいたことはとても嬉しいんです」
「そうか。それなら僕からも言っておこう。君が勝手に手を回して僕の噂をどうにかしようとしてくれていたことは僕も嬉しかったんだ。あの時はついいつものような態度をとってしまったが」
確かにあの時の殿下は納得させるのに結構な説得を要した。
それでも内心私が勝手に殿下のために動いていたことを喜んでくださっていたのだと分かると嬉しくなる。
「そうだったんですね……やはり殿下のことは分かっているようであまり分かっていませんでした」
「はは、それは当然だ。僕たちが出会ってからせいぜい一か月ちょっとだろう? それで相手のことがよく分かるはずなどない。だから今回のことが解決してもこれからも僕の側にいてくれると嬉しいのだが」
「え?」
殿下の言葉に私は思わず訊き返してしまう。
そんな私の反応を見て殿下ははっとしたようになった。
「い、いや、今のはそういう意味ではなく引き続き一緒に働いて欲しいという意味だ!」
「そ、そうですよね、そうに決まってますよね、あはは……」
もう夜遅くではあったが、珍しく殿下が動揺しているのが暗がりの中でもはっきり確認することが出来て、私は満足するのだった。
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「と言う訳だ、もう遅いから今日は寝て明日に備えよう。おそらく今日の犯行はエミリーの暴走だろうから、アンジェリカはアンジェリカで倒さなければならない」
「分かりました。それではいい夜を」
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