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16. 謝罪

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 後ろからそのように言われたから振り返るとお兄様が私の腕を引いて、そう言った。

「お兄様…。」

 何だか、気持ちムスッとして怒っている様子だわ。どうしたのかしら?

「また邪魔するのか?心が狭い兄貴は嫌がられるぞ。」

「ユリウス殿下。茶化すのはお止めいただきたい。アイネル、行こう。」

 お兄様は、私の腕を引っ張って壁際へと歩き出そうとする。
ユリウス殿下?って、確か第二王子ですわよね?私と同じ年の。

「謝罪も受け取れないのか?」

「その必要はない。」

 謝罪…?

「お兄様、お待ち下さいませ。」

「なんだアイネル。心配いらないよ。」

「いいえ。謝罪とは何ですか?それを受け取らないツェルテッティン家ではないはずです。それに、初めて夜会で話し掛けて下さったのですもの。お兄様がいて心強いのもありますけれど、様々な人とお話ししたい気持ちもありますわ。お願いいたします、お兄様。」

「アイネル…。」

「だそうだぞ、

「ユリウスはいちいちうるさいぞ!…分かった。暗く、人気のない所へは行くなよ。」

 お兄様は第二王子様も呼び捨てに出来てしまうの…?騎士団のそれなりの地位だとは言われておりましたけれど、実はかなりすごいのかしら?


「聞き入れてくれてありがとう、アイネル嬢。…ずっと謝罪をしたいと思っていた。本当に済まなかった。」

大広間から出て、足元に明かりが灯された庭園へと向かい、生け垣の影になったベンチへと座って早々言われた。

「ええと…ユリウス殿下。その謝罪とは何に対してでしょうか。」

 隣に座る、ユリウス第二王子殿下の方を見て恐る恐る聞いてみた。

「殿下か…。もし許されるのならば、ユリウスと呼んでくれないか?」

「えっ!?いいえ、そんな!恐れ多いですわ。お戯れを…。」

「違うよ、本気だよ。こうやって二人の時はそう呼んで欲しいな。兄上も、カイヴィン殿に初対面でそうお願いしたらしいよ。」

 と、クスリと笑って、そう言った。
そうだったの…。
というか、とても整ったお顔をしていらっしゃるのね。
王族特有の銀色の髪、瞳は濃い青色。
目鼻立ちはくっきりとしていて、それでいて意思の強そうな、切れ長の目。

 確か、ガーデンパーティーでもお会いして、ご挨拶したような。あの時はもっと背は引く、顔も丸顔だったような…。あ!私、気に障る事を言ってしまったのかしら?

「ええと…なんだか、五年前のガーデンパーティーで一度ご挨拶させてもらった時とは雰囲気が違って、その…。」

「ん?違って、何?」

そう言って、私の声が聞き取り辛いのか顔を近づけて来た。
…恥ずかしいのよ!なんせ、顔を合わせる人といったら、領民の土まみれになった人達ばかりよ!こんな端正な顔で、近づいて来られたら、緊張してしまうわ!

「も、もう少し離れて下さいませ!緊張してしまいます!わ、私、ガーデンパーティーで何か失礼な事を申し上げたのでしょうか?」

 そう言って、赤く熱を帯びた顔を背ける。
不敬かもしれないけれど、隣に座っていた場所から少し端に座り直して第二王子との距離を開けた。
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