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13. 合宿 【初日】
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研修期間も、何事もなく過ぎ、とうとう研修合宿の日となった。
その間に変化があったとすれば、千鶴は、八戸からさらにメールが入るようになった。とは言っても、今までの会社から帰る時に加えて、朝の挨拶と、夜寝る前の挨拶なのだが。
【おはよー。まだ眠いけど俺は起きたよ。自分に勝ったぜ!あきちゃんは起きれた-?】
【今日も一日疲れたね。俺、あの人事課長のクレーム対応の説明が一番眠気と戦ってたから、いつもより余計疲れたよ-。あきちゃんはしっかりリフレッシュ出来た?ぐっすり寝るんだぞ!また明日ね、おやすみ~!】
千鶴はその度に、ほっこり温かい気持ちになるのだった。
しかし、晃はといえば、連絡は無かった。
元々、あまり向こうから意味もなく連絡をしてくる人ではなかった。だから、これはいつもの事といえばそうなのだが、前回カレー屋で『会えない分、連絡して。』と伝えたつもりだったのに、普段と変わらないのには、千鶴にとってかなり堪えた。
(仕事が大変って言っていたけど、おはようとかおやすみくらい、連絡してくれるといいのになぁ。)
なんだか、千鶴から連絡するのも催促しているようで、だんだん意地になり送らなくなった。
(でも、合宿いってきますくらい、メール送ってもいいよね?)
【晃、体調大丈夫-?ゆっくり休んでる?研修合宿いってくるねー!】
ピロロン
【ありがとう、疲れるけどなんとかやってるよ。そういえば言ってたね、頑張ってこいよ。】
(今日はすぐ返信してくれたのね。なぁんだ!いつもあまりスマホ見てないと言ってたけど、もしかして私からのメール待ってたりしたのかな?じゃあまた合宿中にメール送っても、返信すぐくれるかなぁ。)
そう思いながら、千鶴は合宿に臨んだ。
「千鶴ちゃん、部屋一緒だね!やったね!」
「うん、咲良ちゃんよろしくね!」
「楽しみだなぁ。なんだか、ワクワクしちゃうね!」
保養所に着いたのは昼前で、すぐに荷物を持ったまま二階の研修室に案内され、来た者から順番に前から座った。そして、人事課の人から今回の合宿の内容について軽く連絡事項があり、部屋割りも今配られたのだ。
ここは、周りを木々に囲まれた自然豊かな場所にある、趣のあるホテルだった。温泉もあるという。
保養所という事もあり、普段は、会社の従業員が予約出来るらしい。飲食店をメインに経営している会社であるから、土日は閑散期らしく、だから土日に研修合宿をするのだと説明があった。
ここで働いている人が講師となり、接客とはなんぞやという講義を受けるのだ。今まで本社で学んでいた研修でも礼儀作法をやっていたが、ここでもホテル業務という側から見た接客を学ぶらしい。
そして、朝から夕方まではこの研修室で学び、同じく二階のレストランで夕食をとった後はお風呂の時間と、〝交流タイム〟なのだそう。
交流タイムとは、上の客室階に和室の広い部屋があり、そこで自由に過ごしていいのだとか。
自由に、とは交流するのであるから、話をするもよし、トランプや、ボードゲームが置いてあるから自由に使ってもよし、だ。
そして、その時間は人事課の人達もいるらしく、話を聞いたりも出来るし、一緒にトランプをしてもいいらしい。
もちろん、部屋に籠もっているのも自由である。
「じゃあ、課長トランプ一緒にやりましょう!」
そう八戸が誘っていた。
「じゃあ俺は、詩織ちゃん、話をしよう?今から予約!あ、もしくはボードゲームでもいいからやろう!」
と、まだ恋人になれていないと言っていた小林が言っていた。
「どうする?私達も交流タイム、しに行く?」
「せっかくだものね。面白そう。課長とかとも出来るなんて。実はトランプ弱かったりしないかな?」
いつもは先生のように接客とはなんたるかを厳しく教えてくれる人事課の人達とも遊ぶ事が出来るなんてと楽しそうだと千鶴は思っていたのだ。
「あら、そっち?てっきり…」
と咲良は口ごもると、
「ん?なに?」
と千鶴が聞いてきたので、咲良は、
「ううん、なんでもないわ。そうね、楽しみだね!」
と言うに留めた。
あれから、各自部屋に荷物を置いたらまた下へと下りてくると、レストランで昼食を摂る。
その後には、研修室でホテルの従業員から接客の講義があり、それが終わったらまたレストランで夕食。
「食事は、さすが美味しいよね!これで講義が無かったら、本当にリフレッシュ出来るのにねぇ!」
と咲良が千鶴へと話しかけながら夕食を摂っていた。
「そうだよね。明日は、調理場を見学するっていってたね。なんだか緊張するなぁ。」
千鶴も、隣の咲良へと話しながら食事を摂っていた。
明日は、ホテルの調理場見学がある。
この会社は、和食、洋食、中華と多種類の店を抱えるそれなりに名の知れた大企業である。
今までの研修では、接客のなんたるか、また飲食を提供するとはどういう理念の元行うのかなど座学を学んできた。
また、食中毒にならない為の知識や、人をまとめるとはどういう事かを学んだ。それは、飲食店の社員として、アルバイトやパートの人達をまとめるという意味だ。
それから、千鶴は一番嫌だと思ったのがクレーム対応であった。これも研修で学んできた。
次は実際に料理をする場所を見れるのだ。千鶴は、大学時代のアルバイトの時は接客と簡単なデザート類を作っていたからか、本格的な厨房はワクワクするのだ。家で見るガス台とは違い、大きなコンロや鍋を見ると、それを巧みに操って料理を作っていたキッチンの人達を見て、同じ人間とは思えなかった。手先を器用に動かし、材料が食べ物へと変化するのは見ていて感動さえ覚えた。
それを実際に、自分がやれるのかは別であるけれども。千鶴は、家では簡単な料理しか作った事がない。だから、アルバイト先でキッチンの人が料理を作っているのを見て感動さえ覚えるのだろう。
「私もなんだかワクワクする!いつかこんな料理を作ってみたい!」
咲良はそう呟いていた。
この会社は、開発部門もある。そしてこの保養所のホテルみたいに、ホテル部門もある。
飲食店を主に展開している会社だが、料理を作る以外にも配属先が考えられる為、調理師免許を持っていなくても入社が出来るのだ。千鶴も、調理師免許は持っていない。アルバイトしていたからと安易に入社を希望したのだ。
この研修合宿の最終日、配属希望用紙を提出する。千鶴は、どの配属先がいいか、少しずつ考えていた。
その間に変化があったとすれば、千鶴は、八戸からさらにメールが入るようになった。とは言っても、今までの会社から帰る時に加えて、朝の挨拶と、夜寝る前の挨拶なのだが。
【おはよー。まだ眠いけど俺は起きたよ。自分に勝ったぜ!あきちゃんは起きれた-?】
【今日も一日疲れたね。俺、あの人事課長のクレーム対応の説明が一番眠気と戦ってたから、いつもより余計疲れたよ-。あきちゃんはしっかりリフレッシュ出来た?ぐっすり寝るんだぞ!また明日ね、おやすみ~!】
千鶴はその度に、ほっこり温かい気持ちになるのだった。
しかし、晃はといえば、連絡は無かった。
元々、あまり向こうから意味もなく連絡をしてくる人ではなかった。だから、これはいつもの事といえばそうなのだが、前回カレー屋で『会えない分、連絡して。』と伝えたつもりだったのに、普段と変わらないのには、千鶴にとってかなり堪えた。
(仕事が大変って言っていたけど、おはようとかおやすみくらい、連絡してくれるといいのになぁ。)
なんだか、千鶴から連絡するのも催促しているようで、だんだん意地になり送らなくなった。
(でも、合宿いってきますくらい、メール送ってもいいよね?)
【晃、体調大丈夫-?ゆっくり休んでる?研修合宿いってくるねー!】
ピロロン
【ありがとう、疲れるけどなんとかやってるよ。そういえば言ってたね、頑張ってこいよ。】
(今日はすぐ返信してくれたのね。なぁんだ!いつもあまりスマホ見てないと言ってたけど、もしかして私からのメール待ってたりしたのかな?じゃあまた合宿中にメール送っても、返信すぐくれるかなぁ。)
そう思いながら、千鶴は合宿に臨んだ。
「千鶴ちゃん、部屋一緒だね!やったね!」
「うん、咲良ちゃんよろしくね!」
「楽しみだなぁ。なんだか、ワクワクしちゃうね!」
保養所に着いたのは昼前で、すぐに荷物を持ったまま二階の研修室に案内され、来た者から順番に前から座った。そして、人事課の人から今回の合宿の内容について軽く連絡事項があり、部屋割りも今配られたのだ。
ここは、周りを木々に囲まれた自然豊かな場所にある、趣のあるホテルだった。温泉もあるという。
保養所という事もあり、普段は、会社の従業員が予約出来るらしい。飲食店をメインに経営している会社であるから、土日は閑散期らしく、だから土日に研修合宿をするのだと説明があった。
ここで働いている人が講師となり、接客とはなんぞやという講義を受けるのだ。今まで本社で学んでいた研修でも礼儀作法をやっていたが、ここでもホテル業務という側から見た接客を学ぶらしい。
そして、朝から夕方まではこの研修室で学び、同じく二階のレストランで夕食をとった後はお風呂の時間と、〝交流タイム〟なのだそう。
交流タイムとは、上の客室階に和室の広い部屋があり、そこで自由に過ごしていいのだとか。
自由に、とは交流するのであるから、話をするもよし、トランプや、ボードゲームが置いてあるから自由に使ってもよし、だ。
そして、その時間は人事課の人達もいるらしく、話を聞いたりも出来るし、一緒にトランプをしてもいいらしい。
もちろん、部屋に籠もっているのも自由である。
「じゃあ、課長トランプ一緒にやりましょう!」
そう八戸が誘っていた。
「じゃあ俺は、詩織ちゃん、話をしよう?今から予約!あ、もしくはボードゲームでもいいからやろう!」
と、まだ恋人になれていないと言っていた小林が言っていた。
「どうする?私達も交流タイム、しに行く?」
「せっかくだものね。面白そう。課長とかとも出来るなんて。実はトランプ弱かったりしないかな?」
いつもは先生のように接客とはなんたるかを厳しく教えてくれる人事課の人達とも遊ぶ事が出来るなんてと楽しそうだと千鶴は思っていたのだ。
「あら、そっち?てっきり…」
と咲良は口ごもると、
「ん?なに?」
と千鶴が聞いてきたので、咲良は、
「ううん、なんでもないわ。そうね、楽しみだね!」
と言うに留めた。
あれから、各自部屋に荷物を置いたらまた下へと下りてくると、レストランで昼食を摂る。
その後には、研修室でホテルの従業員から接客の講義があり、それが終わったらまたレストランで夕食。
「食事は、さすが美味しいよね!これで講義が無かったら、本当にリフレッシュ出来るのにねぇ!」
と咲良が千鶴へと話しかけながら夕食を摂っていた。
「そうだよね。明日は、調理場を見学するっていってたね。なんだか緊張するなぁ。」
千鶴も、隣の咲良へと話しながら食事を摂っていた。
明日は、ホテルの調理場見学がある。
この会社は、和食、洋食、中華と多種類の店を抱えるそれなりに名の知れた大企業である。
今までの研修では、接客のなんたるか、また飲食を提供するとはどういう理念の元行うのかなど座学を学んできた。
また、食中毒にならない為の知識や、人をまとめるとはどういう事かを学んだ。それは、飲食店の社員として、アルバイトやパートの人達をまとめるという意味だ。
それから、千鶴は一番嫌だと思ったのがクレーム対応であった。これも研修で学んできた。
次は実際に料理をする場所を見れるのだ。千鶴は、大学時代のアルバイトの時は接客と簡単なデザート類を作っていたからか、本格的な厨房はワクワクするのだ。家で見るガス台とは違い、大きなコンロや鍋を見ると、それを巧みに操って料理を作っていたキッチンの人達を見て、同じ人間とは思えなかった。手先を器用に動かし、材料が食べ物へと変化するのは見ていて感動さえ覚えた。
それを実際に、自分がやれるのかは別であるけれども。千鶴は、家では簡単な料理しか作った事がない。だから、アルバイト先でキッチンの人が料理を作っているのを見て感動さえ覚えるのだろう。
「私もなんだかワクワクする!いつかこんな料理を作ってみたい!」
咲良はそう呟いていた。
この会社は、開発部門もある。そしてこの保養所のホテルみたいに、ホテル部門もある。
飲食店を主に展開している会社だが、料理を作る以外にも配属先が考えられる為、調理師免許を持っていなくても入社が出来るのだ。千鶴も、調理師免許は持っていない。アルバイトしていたからと安易に入社を希望したのだ。
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