【完結】私との結婚は不本意だと結婚式の日に言ってきた夫ですが…人が変わりましたか?

まりぃべる

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11. 俺の想い  アンセルム視点

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 俺、アンセルム=ベンディクス。現在二十三歳。
公爵家の嫡男で、いつかはベンディクス家を継がなくてはならないが、今は国の悪獣討伐軍に所属し、全指揮を執る総司令官をしている。

 発生地は主に国境付近の森である悪獣は、普通の獣とは違い、人間に狙いを定め、食べようとしてくるのだ。
その為、剣や弓、槍なども多少は使うが、魔力を主に使って戦う討伐軍が遥か昔に国が結成させた。


 俺は、昔から魔力が使えた。
 自分で気づいたのは、四歳頃だったか。
使用人が粗相し、紅茶の熱湯が俺の手に少しかかったんだ。その使用人はわざとでは無いと思う。申し訳ございませんと、腰を何度も低くして謝ってきたから。でも俺は、それにイラついてしまって、そいつに向かって『お前なんかどっか行ってしまえ』と思ってしまったんだ。すると、いきなり風が起こってその使用人を巻き込み、そいつは浮き上がって部屋の壁に叩きつけられたんだ。
大きな音に屋敷中が驚いて、俺の部屋に何事かと皆が集まってきたのを今でも覚えている。そして、事態を理解した俺の父は、俺の頬をペチンと優しくではあったが叩き、『いいか。お前には素晴らしい魔力があるのだ。だが、それは適切に使わなければ、単なる愚鈍だ。お前は、利発で賢い。そうだろう?だからどうすればいいか、分かるか?』と言った。
幸いにも、少し意識を失っただけですぐにその使用人は元気に立ち上がり動けたが、その場は騒然となった。

 俺はなぜその使用人がいきなり浮き上がって壁に叩きつけられたのかが分からなかったがどうやら俺が無意識のうちにやってしまったと教えられ、恐ろしくなった。

「必ず制御しろ。分かるか?悪意は人に向けてはいけない。制御出来なければ今のように被害者が出る。その魔力は悪獣を討伐するのに必要だな。師を付けるから、よく学ぶんだ。いいね。」

 そう言われ、俺はその言葉を心に刻んだ。



 少し成長すると、魔力は制御出来るようになった。
王族の森と呼ばれる、王家もしくはその血縁のある王族が使える、広大な森で体力を付ける為に走り回ったりしていた。


 そこで、八歳の時、一人の少女に出会った。俺にとっては運命的な出会いだった。
 何故って、その少女は俺の魔力を素敵だと言ってくれたんだ。


 壁に使用人が吹っ飛んで以来、使用人は皆俺を恐れるようになってしまった。怒らせてしまったら自分も被害を加えられるかもしれないと思ったのだろう。だから俺は、必然的に屋敷では魔力を使わなくなったんだ。
師に教えてもらう時は、公爵家の庭の一番奥で隠れるように学んでいたんだ。
 使用人も、恐れを見せてくる奴は配置変えをしてもらい、俺の周りには数えるほどの信頼出来る使用人しか置かなくなった。


 そのように他人からは忌み嫌われた、対悪獣用だと言われていた魔力を、なぜか俺は泣かせてしまった子に見せようと思ってしまったんだ。

 いつものように森の中を走り回って疲れ切っていて、冷静な判断が出来なかったのかもしれないが、彼女は素晴らしいと言ってくれた。
銀が少し入った、綺麗な肩までの真っ直ぐな金髪は、太陽の光に当たって輝いていた。
『すごい』と目を輝かせてくれたあの弾けんばかりの顔は、こちらまで魔力を見せて良かったと誇らしく思った。

 遠くで人が〝クリスタ〟と呼んでいて、それに反応するように立ち上がったから、彼女はクリスタという名前なのだろう。



 俺は、屋敷に帰り、忘れないうちに父エルランドに伝える事にした。

「父上!俺、結婚するならクリスタがいいです!」

 と言うと、笑いながらどういう事だと時間を割いて聞いてくれた。

 俺は、思い出すように彼女に会った時の事を始めから包み隠さず話すと、いつもは公爵然とした表情を出さない顔付きであるのに、なかなか見ない優しい微笑みを返してくれたんだ。

「なるほど。花の首飾りね…髪は銀が入った真っ直ぐな金髪なんだな?」

 父は、俺の言葉を忘れないように呟くと、

「良かったな。それでこそ、私の跡を継ぐ公爵家の嫡男だ。結婚の事は、まだすぐには進められないが、考慮してやる。」

 とまたも優しく言って目を細め、頭を撫でてくれたんだ。



 それからは、彼女に言ったんだからと今まで以上に鍛錬し、いつか再び会えた時に恥ずかしくないよう努力し、無事に討伐軍に入隊したんだ。


 あの時会った少女は、クリスタと呼ばれていたという記憶もあり、また限られた者しか入れない森だった事もあり、同じ公爵家の娘だと思った。王族か公爵家と一緒に来た招待客かもしれないが、周りに人は見当たなかったから、それはないだろう。



 だんだんと年を重ね、俺も、結婚の事を考え始める年齢となってきた。

 俺は討伐軍に入っているから普段は参加はしないが、父が何度も言ってくるから一度参加した社交界で、と話した。
 ………正確に言えば、残念ながら俺は、分からなかったんだが…傍に居た従兄弟の王太子であるヴァイセル殿下が紹介してくれたんだ。
 は、『初めまして。』と言ったから忘れているのかもしれない。少し残念ではあるが仕方ない。俺も、今目の前にいる彼女が、あの日会った少女だとんだから。

 髪色があの時とは違ったんだ。けれど、幼い頃と髪色が成長と共に変わるのは珍しい事ではないから、それで気付けなかったのは仕方ないと思う。
 それになんだか、纏う雰囲気もあの時とは変わりヴァイセル殿下とかなり親し気に快活に話している気がしたが、根本は変わらないだろうと思った。


 その後、その事を包み隠さず全て父に話した。すると、うんうんと頷いていたから、これできっと父も結婚させてくれるかもしれないと思った。




 なのに、大事な話があると言われ、そろそろかと嬉々として父の部屋に行ったら、なぜか違う伯爵家の娘と結婚しろと言われたんだ。俺の、地獄へと落とされた気持ちが分かるか!?

 父に聞いたら、何の表情も見えない顔で、

「お前の為だ。」

 としか言わないから、俺は一言、『分かりました』とだけ告げ、歯を食いしばってその部屋を出たさ。



 だから、俺は、と結婚させてくれない父と母と一緒に暮らすのは嫌で、『新生活は是非同居で』という両親の申し出を断った。

 とりあえず、十数年前に爵位を返上されて譲り受けた今は常駐領主も置いていない王都からほど近い小さな公爵領に、を住まわせればいいだろう。使用人は信頼できる者しか俺の傍にはいないから少ないが、公爵夫人としてやってもらう事も無いから大丈夫だろう。
 その内、公爵家の嫡男として、本当に彼女を受け入れないとならないだろうが、まだ心の準備が俺は出来ていないから、新婚であるのに書面上の妻の元へは帰らず、王宮で過ごす事にした。
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